王道悪役令嬢に転生、テンプレなれど、破滅フラグを回避せよ
乙女ゲーム「ロマノヴァ」は、ロシア帝国が滅び、ボリシェビキに追われた皇帝一家が、樺太で|無地領主《Landless Lord》と呼ばれて、再興を図ったことで描かれていた。日露戦争に勝利した日本が、世界大戦中に起きた、ボリシェビキ革命の中で、国を追われた皇子皇女達を助けて、樺太道敷香郡に迎えたことが描かれていた。庶民の娘で特待生で入学した主人公は、ロマノヴァの血を引く橘和哉と高等科で出会い、恋をして二人が結ばれるという話である。
この「ロマノヴァ」の中で、あたし上之宮玲華は、金髪碧眼の王道悪役令嬢として登場し、主人公を虐めて暴虐に振る舞い、破滅するという人生を送る。
あれは、小学校にあがる時であった、お母様に連れられて、帝國館学院初等科と書かれた、学校に連れられていった。
「ていこくかんがくいん?」
ていこくかんがくいん、、、どこかで聞いた気が、なんかもやもやし始めていていた。
「そうよ。玲華さん。4月から貴女が通う学校ですよ」
ちょうど、その時、黒のリムジンが止まって、あたしと同じ帝國学院の制服を着た少年が降りてきた。金髪の少年は、褐色の瞳をした、どこからどうみてもイケメン美少年なのだが、とっても我儘そうな俺様にしか見えなかった。
帝國学院の制服は、有名デザイナーがデザインした制服で、生地や縫製にも拘った、ブレザー系の制服となっている。あたしも制服を気に入っていて、帝國学院に通うのを楽しみにしてる。
「ほら、由香里。俺が4月から通う学校だ」
「はいはい。しっているわよ、和哉。あたしも通っている学校なんだから」
少年に引っ張られるように、降りてきたのは、幾つか年上の漆黒のサラサラヘアに清楚で、すっごく綺麗な綺麗な和風美人。こんなふうになりたいなぁって、本当に思えるような、そんな女性だった。
「あら、由香里さん。お久しぶり」
「これは、上之宮様、、、」
陰に隠れていたあたしは、お母様の陰から出て、
「上之宮玲華です。由香里様」
挨拶をすると
「上泉由香里です。よろしくね、玲華さん」
「はい」
「由香里、、、」
機嫌が悪い雰囲気バリバリになった少年が、由香里様を引っ張ろうとする、
「だめよ、和哉。ちゃんと挨拶なさい、上之宮公爵家の玲華御嬢様よ」
「えぇ、、、」
心底嫌そうな顔をして、それでも由香里様に言われて、仕方ない感じで、
「橘和哉だ」
「上之宮玲華です」
「ほら、行くぞ、由香里」
挨拶を聞いたら、そのまま引っ張るようにして、由香里様と構内へ入っていった。由香里様は、仕方ないって感じで、こちらに会釈して、校内へ入っていった。
「あらあら、残念ね、玲華さん」
その時は、由香里様の印象が強くて、傍の我儘少年は、どうでも良かった。夕食を終えて、その夜ベッドに入って、思い出したのだ。
「橘和哉って、オレ様和哉」
その時、流れ込むように、蘇った記憶。それは、前世の記憶だった。企業の中で、女だからって舐められないように、必死で頑張っていた姿、乙女ゲーム「ロマノヴァ」を楽しみにしていた程度、乙女ゲーム「ロマノヴァ」にしても、オレ様和哉を攻略するのに四苦八苦するくらいで、知っているとは言えない世界だった。
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あたしには、前世の記憶がある。歴史が違うので、役に立ちそうにない記憶だけど、記憶があるのは事実である。
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二日市とふろう氏が描く「現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変」(オーバーラップノベルス) を読んで面白かった。
転生モノであっても、現代歴史版でも、悪役令嬢ものというのは、可能であるということなので、自分が構築した、オリジナル歴史世界で描いてみました。