バトル1~ファイナルファンタジーⅣ④
カセットウォークマンは持っていた(元々は英語教育に熱心な叔父がラジオを英会話番組をいつでも聞けるようにと買ってくれたものなのだが、広海にはちょっと早すぎたようだ)。試合会場に来るまでの移動時間に使う際は周囲に細心の注意を払うことを約束して使用許可をもらった、野口コーチと母親から。後は選曲なのだが―
この頃、広海達ぐらいの男子は皆、テレビゲームに夢中だった。広海も然り。先日、友達の家で見たスーパーファミコンソフト『ファイナルファンタジーⅣ』。本体、ソフト、そしてゲーム画面を実際に生で見るのは初めてだったのだが、増々欲しくなってしまった。特にその戦闘時のBGMがもうカッコよくて、テンション上がって、是非ともと。しかし広海はスーパーファミコンを待っていなかった。両親にスーファミが欲しいという話は翔と協力して交渉済みだが・・・
渡りに舟は突然に。光は意識の外から間々やってくる。
ここはとあるCDショップ。お目当てのCDを探索中の広海。先日家族でロボットアニメの映画を観に行った。内容はまぁ、1時間半で分かり易くまとまっていたという所だったが(翔は大喜びで、明日にもプラモデルを買いに行く勢いだった)、本編終了後、席を立とうとした時に衝撃が走った。もう前奏で惹きつけられてしまった。映画のエンディングテーマが広海の知っているようなアニメソングではなかった。森口 博子『ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中』。流れるエンドロールを見ながら明日CDショップに行くことを決めながら、もう1度腰を落ち着けた。
「あ、か、さ、た、な、は、ま・・・み、む、め、も・・・おっ。あった、あった。」
CDの陳列は歌手名があいうえお順で並んでいて、ま行は後方。レジ側から結構奥の方まで歩いた。特にあちこち探しまわるでもなく、広海はあっさりと目的のCDを発見した。手に取りパッケージが映画のそれであることを確認した時に、ふと目に入った文字。『ゲーム音楽』。知らなかった。ゲーム音楽のサウンドトラックって、売っているのか。吸い寄せられるようにサントラコーナーへ歩いていく広海。そして見つけたタイトルは『ファイナルファンタジーⅣ』。値段を確かめる。シングルCDではなくいわゆるアルバムなのでやっぱりお高い。広海の買おうとしていたCDのおよそ3倍の値段だった。財布のお札を数える広海。どうにか足りるが貯めたお小遣いがほぼ消滅する計算だった。逡巡したが2枚ともレジに持っていった。