少年、久しぶりにステータス更新をする
「おいおい、もっと速く走らないとゴブリン共に追いつかれるぞww」
「見習い冒険者を鍛えるのは俺たち上級冒険者の仕事だからなw これは特訓なんだよw」
「安心して逃げなさいw もしもの時はお姉さんが治癒魔法をかけてあげるからw」
崖の上から聞こえてくる楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
その笑い声の主は、僕が居候させてもらっている勇者パーティーの3人。
彼らは僕を指さしながら笑っていた。
……まぁ早い話、崖の上から僕を蹴り落して、下にいたゴブリンたちに襲わせて楽しんでいるんです。
落ちた時の衝撃で、左腕の骨が折れた。
泣きたいぐらい痛いけど、今はそんな余裕がない。
ゴブリンたちから逃げないと、殺されてしまう。
僕は必死に逃げた……が、すぐにゴブリンたちに捕まえられこん棒で何度も何度も殴られる。
僕は恥を忍んで3人に助けを求めるが、彼らは笑っているだけで助けてなどくれない。
彼らは、僕の意識が途切れ助けを求める声が止んで、初めて動き出すのだ。
斧使いの男がゴブリンをつまらなそうに倒し、女魔法使いがヒールで僕の傷を治す。
そして、そのあと勇者が、気を失っている僕の腹を思いっきり蹴って無理やり僕を起こす。
――――いつものことだ。
しょうがないと言えばしょうがない。
世の中は弱肉強食なんだ。
3年間ずっと見習い冒険者の僕を、勇者パーティーの3人が虐げる。
ギルドの人も、他の冒険者も見て見ぬふりをする。
なかには、一緒になって暴力を振るうものもいた。
しょうがないんだ、僕には抗う力なんてないから。
だから……
――――僕が誰よりも強くなった時は、手加減してもらえるなんて思わないでね?
その日、いつものいじめによって片目を失った僕は、久しぶりに冒険者カードを引っ張り出した。
あまりにも能力が向上しない自分の不甲斐なさに嫌気がさして、馬小屋の藁の下に投げ入れておいたのだが、……僕にはもうこれしか希望がない。
2年半ぶりの、ステータス更新。
僕は憎しみを込めながら言葉を発した。
「ステータス更新!」
真っ暗な馬小屋のなかで、冒険者カードは光り輝いた。
いままで見たこともない輝きだった。
こ、この輝きはもしかして!
僕は輝きの失ったカードがどう変わったか確認するために、外に出て月の光に照らした。
「……え?」
見たことも聞いたこともない職業、スキル、パラメーター。
僕はしばらくの間、何が何だか分からず放心状態だったが、すべてを理解した。
神は……死神は僕を見捨てていなかった。
―――僕は、錆びて刃こぼれした短剣を持って、勇者たちのいる酒場へと向かった。
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名前:カルマ
職業:死神
攻力: ――――
体力: ――――
物耐: ――――
敏速: ――――
魔力: ――――
魔耐: ――――
スキル:
<幻影化>
相手の攻撃はすべて体をすり抜ける
<死神の黒衣>
任意の時間、姿を見えなくすることが出来る
<死神の誘い>
傷を負わせた相手を殺す
<死神の瞬歩>
瞬間移動できる
<死の不可逆性>
スキルを使用している間、術者の半径1キロ以内で発動した回復魔法の効果を無効化する
<奪生の快楽>
殺害をやめれなくなる