とある世界での一幕
「姫様……」
「……結果が出たの?」
姫様と呼ばれた少女は暗い声音でそう尋ねる。彼女の目の前には騎士然とした恰好の若い女性が少女の声音同様の暗い表情を浮かべて立っていた。
「はい……」
「有難う。貴方のその表情で答えは解ったわ」
そう言って少女は溜息をつく。
「それで? あの子はどうするって?」
「残された時間は親元で過ごすと……」
「そうね、それが良いわね。それで? あの子は何時ここを立つの?」
「もう間もなく。こうなる覚悟は出来ていたようですでに準備はほぼ終えておりましたので」
「そっか……。セレナ、蔵の備蓄から私の分の食料をあの子に渡してあげて。白いお米をお腹一杯食べたいってあの子良く言っていたから、せめてそれ位はさせてあげたいの」
「畏まりました。丁度ダイエットをしたいと思っていた所でしたので」
「貴方まで付き合う必要は無いのよ?」
「姫様の分だけでは大した量にはなりませんよ。それに思いは私も同じですから」
そう言って騎士の女性は薄らと微笑むと、その笑みにつられ少女の暗い表情も少しだけ薄れた。
「ありがと。それにしても、これで三人目か。確率はそう高く無いはずなのに私の周りの人間に集中するなんて……」
「偶然が重なっただけですよ」
「でも」
「それに、思い悩んだ所でどうする事も出来ませんし、考えるだけ無駄です」
「まあ、そう言われるとそうなんだけど……」
「余計な事を考える暇があれば、今日を生きる為に出来る事を考えた方が宜しいかと」
「言いたい事は解るしこんな世の中じゃそれが正しい事だと思うんだけど、そういうその日暮らし的な思考ってなんだかなぁ……」
「その日暮らし結構。今日を生きる事が出来た者だけが明日を迎える事が出来るのですから」
少女は何か言いたげに声を発しようとしたが、すぐに思いなおすと小さく溜息を一つついたのだった。