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8 ほづみの呪い


   8 ほづみの呪い


 かなえちゃん家にみんなでお泊りしているとき、あたしがかなえちゃんの家の地下室でルナークと話をしていた。

 あたしの隣には坂場朱莉がいて、団子を食べている。

 櫛に刺さった三色団子である。

「なあ、美月」

「ん、何かな?」

 朱莉が話に割って入った。

 あたしは腕を頭の後ろに回して、片膝を曲げ、のんきなふりをしている。

「そんなにほづみの呪いを解決したいなら、願い事を取り消せばいいだろ?」

 ルナークは被りを振る。

「原則として、願いを取り消すことはできない。ただし、ひとつだけ方法がある」

 あたしは朱莉に団子を一本もらったので、一個、口にほおばる。

 団子の色は桃色で、まるで桜餅を食べている気分になった。

「なら、どうすれば願いを取り消せる?」

「願いは後の願いによって上書きすることができる」

 朱莉は団子を噛み締めながら、苛立ちを見せた。

「当然、代償も高くつく、と。ったく、うまい商売しやがる」

「商売をするつもりはない。実験をしているだけである」

「ふざけんな。アンタがやってることは悪質な商売と同じだろうが」

 朱莉とルナークが口論していると、後ろからこっそりと、ほづみがやってきた。

 願い事は一人一回というルールはない。

 ほづみはルナークに願いを唱えた。

「ルナーク、わたしの願いを叶えて。わたしはかなえちゃんとずっと一緒にいたい。かなえちゃんには永遠に幸せになってほしい」

 あたしと朱莉は、ぽかんと口をあけてほづみを見ていた。

 ルナークが鼻息を荒く噴出させると、ほづみの身体が光り出した。

 かなえちゃんの結界が解けて、ほづみは魔力を解放する。

 ほづみは地面や身体から木の根を突出させ、ルナークを縛り上げる。

 一瞬で粉砕されたルナークを眺めながら、あたしと美月は後ずさりした。

 ほづみはこちらを一瞥してから、何も言わずに、異空間へ飛び出した。

「あちゃー……。どうする、朱莉ちゃん。追う?」

「アタシに聞くか……」

「なんか、ほづみん辛そうだったし、もしかしたら大暴れしているかも」

「異空間の中なら、いくら暴れても実害はないだろ?」

「今日、雨だよね」

 どんよりとした空からは、すでに小雨が降ってきている。

「それがどうかしたか?」

「ほづみん、植物っぽかったよね」

「まあ、そうだけどさ。そんな理由で街中に出るもんかな?」

「しかも、ほづみん、あたし達に何も言わずに出て行ったところを見ると、暴走しているかもしれない」

「じゃあ、アタシが先に追いかけるから、アンタはかなえを呼んで来なよ。アイツ、ほづみのことが好きなんだろ?」

「あー、そっか。なら、連れて行かないとね」

 勝手にここの部屋を見たことも、後で謝っておかないといけない。

 部屋は、銃痕だらけのほづみの写真が、壁一面に貼られていた。


 さて、この後、ほづみを救い出して、ひとまずハッピーエンドかな。

 まあ、あたしはあんまりハッピーな終わり方をしなかったんだけど……。

 あたしはかなえちゃんを連れてビルの屋上にやってくる。

 案の定、水を得たほづみが暴れていた。

「かなえちゃん、ここはもう結界の外だよ」

「嘘よ、ほづみ……どうしてあんな姿に」

「かなえちゃんがほづみんのため一生懸命になるのと同じだと思うよ」

「……そう」

 あたしは倒壊してこちらに落ちてきたビルの破片を氷の刃で斬りつけ、ビルを破砕してみせた。一回転して着地する。

「よっと、危ないなあ」

「あなた、そんなことができたのね」

「まあね。剣の周りに水の流れを作っておいて、ビルが触れた瞬間に凍らせる。そうすると、ビル全体を凍らせることができるんだよ。結構、タイミングがシビアなんだけどね」

 凍ったビルの破片からは、白い水蒸気が出ている。

 そういえば、朱莉はどこにいったのだろうか。

 あたしがほづみの動きを観察していると、大雨が降り出した。

 かなえちゃんが雨に足を取られて転んでしまったので、抱え上げる。

「ああ、なんだか王子様になった気分」

「余計なお世話よ」

「いたた……。もう、何するのさ」

 あたしはかなえちゃんに頬をつねられながら、隣のビルに跳び移る。

 元いたビルは、新たなビルの破片に押し潰される。


 あたしがみんなを守る。

 正義の味方になってやる。

 どこからでもかかってこい!

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