12 たったひとかけらの希望
12 たったひとかけらの希望
「はっ」
「美月ちゃん!」
朝日が眩しい。
肺に酸素が吸入される。心臓が動いている。
ほづみに思い切り抱き締められる。
「よかった……本当に、よかったよ……」
「心配させちゃったかな。ごめん。あたし、ばかだからさ。ほづみんやかなえちゃんの気持ちをわかってなかった」
ほづみのぬくもりを感じる。ほづみの心臓の音が聴こえてくる。
生きているという感覚がした。
視線を右に向けると、かなえちゃんが、汗だくになりながら、微笑んでいた。
「遅いわよ。まったく、あなたは……はぁ」
かなえちゃんは疲れ果てて、ベッドに倒れ伏した。
魔力を得た指輪が、香苗ちゃんの掌に乗っている。
「ありがとう、かなえちゃん……」
あたしは指輪を、自分の右手の中指に嵌めた。
あたしのこころは澄み渡り、宝玉は清らかな蒼色に輝いている。
夢でも見ているのだろうか。
夢なら、夢でもいいや。
生きている感覚が、とても心地よい。
笑ったり、泣いたり、絶望の中でも希望を見つけ出そうと努力できる。
こんなに嬉しいことはないからね。
私がかなえちゃんに魔力を注ごうとすると、ほづみが止めた。
「かなえちゃんが、私のことは気にしないで休んで……って、言うから」
かなえちゃんは、すうすうと心地よい寝息を立てて眠っている。
ほづみは、あたしの右手を、両手で包み込んだ。
「大切な命を無駄にしないで。わたしは美月ちゃんのことが大好きだから」
「そっか。ほづみんが言うなら、しょうがないね。お言葉に甘えて、そうするよ」
あたしはかなえちゃんに布団をかけ、ベッドに入れてあげた。
右にはかなえちゃん。近くで寝顔を見ると、どきっ、とする。
左には芋虫のように這ってきたほづみん。小さな掌が、あたしの手を握る。
あたしは二人の美少女に囲まれながら、お昼まで寝た。
あたしの話はこれでひとまずおしまい。
情けないことに、この後、魔物になっちゃうんだけどね。あはは。
でも、かなえちゃんのお陰で生き返ることができた。
あたしはかなえちゃんの決断に納得してない。
でも、お礼は言わなきゃ。
かなえちゃん。あたしを救ってくれて、ありがとう。