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結界は攻撃魔法に入りますか?

『あ…あぁ!?ざっげんなよ、ごのグゾ女!!』


自来也はぼたぼた鼻血を垂らしながら日本刀で袈裟懸けに斬り掛かってくる。


(普通の人間でしたら今の攻撃で大幅に戦意喪失、鼻呼吸を阻害されているので動きもかなり鈍くなるのですが流石は紛ツ神ですね)


雛は冷静に分析しつつ、腰を落とした低い体勢から素早く相手の懐に飛び込み真下から刀の鍔元を掴む。


「失礼致します」


ご丁寧に断りを入れるとその小さな手で根元から刃の部分を折り取った。更に強く握りしめると薄いガラス細工の様に白刃が粉々に砕け散った。


『ひぃ!?ば、バゲモノ(化け物)!!』


自来也は柄と鍔だけとなった刀を投げ捨て、慌ててバク転の要領で後方へと間合いを離す。


「化け物じゃありませんよ、これは私の持つ術です!未熟ですけど…」


最後の一言だけやや気弱に呟くが、すぐに気を取り直してニッコリ笑うと獣の様な俊足で自来也へと迫る。




「…素手で刃物掴んでも傷一つ付かねぇとはなぁぁぁぁ。ありゃ、もしかして結界の応用術かぁぁぁ?」


八来は雛達からやや離れた場所で無傷の買い物袋を回収し、中にあったワンカップな日本酒をちびちびやりながら観戦としゃれこんでいた。


彼の予測通り雛の実家に代々伝わる秘術とは絶対防御の結界術。

普通の結界術とは違い、結界の形を変えることが出来るのが大きな特徴だ。例えば壁の様な表面を棘状にしたりと防護だけでなく攻撃としても使用することが可能である。


(私の場合、巨大な結界を維持することが出来なかった)


雛は苦い思いを振り切るように、結界を指先から肩までコーティングさせるように展開させるとボクシングのフックの要領で自来也のこめかみを殴りつけた。雛の一撃は再び特殊金属を破壊し生身の体へとダメージを与える。


『ば っ !?』


自来也は白目を向くと口から泡を吹く。が、中身は気絶しても彼を覆っている特殊金属と紛ツ神の能力と怨念は健在。若干体は横に揺らいだが、懐から苦無を取り出し斜め下から雛を斬りつける。


「わ!?びっくりしました」


結界で覆っていない脇の下を狙ってきた苦無を肘で叩き落とし、次いで襲ってきた飛び膝蹴りを滑るように横に移動して回避する。


(出雲で悪い事していた妖怪さんよりもずっともっと動きが早くて鋭い…。でも、お爺様より弱い。そして)


脳裏に映るのはどんな妖怪も圧倒的にねじ伏せていた祖父の姿。そして、祖父意外に初めて手を差し伸べ、祖父に勝るとも劣らない圧倒的な強さを見せてくれた男性の姿。


「八来さんよりもずっともっと、貴方は弱いです!」


素早く自来也の鳩尾へと両手を重ねて当て、右足を強く踏み出す。全身の力と強い踏み込みによる発剄の振動が特殊金属を砕き生身の体へと伝わる。


『ぶぎゅるあぁっ!!!』


潰れたヒキガエルの様な断末魔の悲鳴と共に彼を覆っていた薄い鎧は砕け散っていく。忍び装束はビリビリに引き裂かれボロ雑巾の様になりながら地面へと錐もみ落下。地面へ強烈な口づけをした後、その体はぴくりとも動かなくなった。


「ふぅ…」


高ぶった感情を鎮めるように大きく深呼吸し息と心を整えようとしたが、鼓動は未だ激しくなり続け体の火照りも治まらない。


ああ、足りない


酔い足りない


もっと もっと 飲み干したい


「雛」


声に振り返ると何かを期待した様にニヤリと笑う八来がいた。その目はまだ興奮気味に見開いていて飢えが色濃くある。

ああ、多分この人も自分と同じなのだろう。

でも、悪い人と紛ツ神はもういない。酔う相手はいなくなってしまった。



もし  八来さんと 拳を交えたら 


「っ!?」


いけない! と、ぶんぶん頭を横に振って先ほど浮かんだ考えを頭から追い出そうとする。


きっと 凄く 凄く 酔える はず


「だだだだ、駄目ですぅぅぅぅ!!!」


自分が闘って、拳をぶつけるのは悪い事をした人だけ。それ以外の人とは稽古や練習でもない限りやってはいけない。


でも 八来さんと本気で闘ったら…


「はしたない…はしたないです!!!」


内なる欲望の声に、意味もないのに耳を塞ぎ頭を振り続ける。


いけません でも 「でも」じゃないです駄目です でも だから「でも」じゃないです絶対だめです!!


雛の頭の中で仏と悪魔がぐるぐる回って言い争っている。

近くで八来が何やら声を上げているようだが、脳内の声がうるさくて聞こえない。

だから、雛は気が付かなかった。


真下から襲い来る何かに

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