そして、歯車は小さく動き始めた
―――――――陰陽庁 天照大御神執務室。
「雛の奴はどうじゃ?皆に馴染んだか?」
机に両の肘を置き、組んだ指の上に顎を乗せながら目の前の部下――――法園寺 蓮生に問う。
「ええ、茶会の様子を見る限りは。小夢とも仲良くなったようですし、これから良き好敵手となってくれそうですね」
丁度、この時茶会会場で小夢と雛は友達として仲良く会話をしていた。
「結構。あ奴の事は八来だけではどうにもならんじゃろ」
言いながら目の前の資料に目を落とし、苦い顔をする。資料には雛の実家である八塩家の歴史と現状が事細かに記されていた。
「京の八塩家の監視は別の部下に任せてはいるが……どうにも胸騒ぎがしての。お主の所の部下も数人送り込みたいのじゃが?」
「構いませんよ。丁度、蝦夷の事件の後処理が終わったところですので」
「ああ、お主の孫と炎雷神が討伐に行ったのだったな。……また原点回帰派絡みか。最近またぞろ増えてきおったな」
《原点回帰派》―――――――――世界を召喚や顕現前に戻し、人間だけの世界に戻そうとする集団。中には「人々の純粋なる信仰を取り戻す」「人間の恐怖心、畏れを呼び戻す」と、人間だけではなく神々や妖怪も参加している。
主な活動は原点回帰派の考え信念の布教、勧誘、集会など新興宗教と変わりがない。ただ、一点の違いは崇める神がいないというだけだ。
ちなみに一部の過激派によるテロ行為が度々発生しており、陰陽庁の頭痛の種となっている。
余談ではあるが、第一次大厄祭の際に大雷神(現・カイ神父)は彼等を使って大規模なテロ活動を行っていた。まさか後々、テロを成功させるために煽り規模を大きくさせた原点回帰派が自分たちの首を絞めることになるとは当時の八雷神は思わなかった……。
「カイ神父もまさか自分たちが作ったテロ集団の後始末をすることになろうとは思わなかったでしょうね」
今頃、茶会の会場では元凶の神父が大きなクシャミをしていることだろう。
「因果応報とはまさにこの事じゃて。火を付けた責任はしっかりとって消火してもらわなければ困る」
先程、蓮生から渡されたリストに再度目を通し眉間にしわを寄せる。最近行動が活発になっている原点回帰派の過激派のメンバーリストだ。
「カイ神父達には引き続き原点回帰派に目を光らせるように伝えておきます。それと、京へ行く部下については後日また」
「頼んだぞ。それと……」
「ええ、分かっています。八来忠継、八塩雛、両者を【来るべき日】に備える為により鍛え上げればいいのですね?」
「ああ、よろしく頼む」
法園寺蓮生は軽く会釈し、部屋を出て行こうとしてその足が止まった。
二人の耳に装着されたピアス型の通信機から部下の緊急連絡が入る。
その内容は、彼女たちがマークしていた原点回帰派の過激派グループのリーダー格が路上で死体になって発見されたというものだった。
これにて四章おしまいです。
次の五章からまたバトルてんこ盛りに戻りますです、ハイ




