表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/96

対決!修羅雪姫VSツバキ

それから雛と小夢は順調に勝ち進み、雛は『い』ブロックを制し小夢は『ろ』ブロックを制した。

他のブロックの勝者も決定し、彼女たちの次の相手は――――


《今大会、秒殺の女王となった修羅雪姫ちゃんと秒殺の王であるツバキの対戦だぁぁぁぁぁーーーーーーー!!》


スクリーンに映し出された対戦表を見て、雛は嬉しさのあまり万歳をした。小夢はというと「運営も演出下手やな。何考えてるん?こんなの事実上決定戦やろ」と言いつつもマスクの下では笑みを浮かべていた。


「こんなに早く闘えるなんて!嬉しいです!嬉しいです!!」


跳ねまわりたかったが、流石にはしたないのでそれは我慢する。

小夢となら、もっと……もっと長く闘える。退屈なんてしないし、彼女ならば絶対させてくれないという信頼の様なものが芽生えていた。

リングに上がる小夢は雛とは対照的に落ち着いている。

だが、内心はというと。


(はー、やっと対戦や。鳴三の敵討ち、代理試合や覚悟せぇ!!)


未だ鳴三が敗北したと勘違いしたまま、滅茶苦茶に燃えていた。


《では、秒殺王決定戦だぁぁぁ!!れでぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ》


雛と小夢は構えをとり、


《ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!》


開始のゴングの音と共にリング上で突風が吹き荒れる。風の中心は雛とツバキの二人。


《風の能力かぁぁぁぁ!?いや、風を切る音に混じって何やら殴り合う音が聞こえるぞぉぉぉぉぉ!!!これは!まさか!二人の熱き拳のなせる技!!拳・圧だぁぁぁぁ!!》


リング上では人の影の様のものが時折揺らめていて見え、激しく殴り合う音が続く。


(凄い!凄い!!八来さんとお祖父様以外で、私の動きについてくる人がいるなんて!!)


初手で目を突きにいったが横から手を添えて払われ、次に顎、鳩尾と急所を連続で狙いに行ったが、小夢もカウンターで同じ様に顎と鳩尾を狙ってきたのだ。

アッパーで繰り出された動きを頭をやや後ろに引いて躱し、鳩尾狙いの正拳はお互いの拳がぶつかり合う事で潰された。

躱し方も潰し方も同じで、気を抜けば決定的な一撃を入れられかねないという緊張感。


(楽しい……八来さんと手合わせしている時とはまた違った楽しさがある!!)


光属性狂戦士の元段ボール箱入りお嬢様は、今最高に興奮していた!


(やっぱこの娘、そんじょそこいらの解体屋とはちゃうわ!なんなん?この反応速度!?)


一方、白馬に乗ったオジサマをゲット済みの現役JKは雛の予想以上の実力に只々驚いていた。

初手が目突きというエグイ行為を平然とやってのけ、次から次へと急所を狙ってくる。全てが前振りですべてが本命の一撃だというのは、一つ一つの動きに躊躇いがないので分かった。


(一体どんだけ修羅場くぐったらあんな動きと思考になんのや!?いや、うちも故郷でマフィア相手に喧嘩売ったけどな!?でもこれは殺し合いやのうて試合やっちゅーの解ってるのか!?)


いや、懐いている男と『死合う』と幸せそうに語ったのだ。どこかしら思考が歪んでいる事は理解していた筈。

こめかみ、目間、脇の下と小夢が脳内でツッコミを入れている間にも雛は次々と急所狙いの攻撃を仕掛けてくる。


「ええ加減に!」


横からこめかみ狙いに放たれた裏拳を下からアッパー気味に反らし、手首をつかみ己の方へと引き寄せ両足で地面を蹴る。


《おーーーっとぉ!腕ひしぎ十字固めぇぇぇ!!!》


雛の左腕をしっかりと両腕で掴み、両足で胴体を挟み込みその勢いのまま彼女を後方へと倒そうとした。

だが、雛の上半身はやや後ろに反れたものの倒れはしなかった。細い腕は小夢の身体に支えられたまま、一向に下ろす気配はない。


「せぇ……のぉっ!!!」


息を大きく吸い込み、気合いを入れると腕を大きく上げ勢いよくリングへと小夢ごと叩きつけた。


「っ!!?」


背中から叩きつけられ、衝撃で小夢は一瞬息を詰める。

力が緩んだ一瞬を見逃さず、雛は腕を素早く手前へと曲げて拘束を解いた。床に転がっている小夢に鳩尾への踵落としを入れるのも忘れない。


「させ…るかぁ!」


鳩尾へと振り下ろされた足を両手でしっかりと掴むと、小夢は指でマスクを押し上げ雛に向けて口を開けた。

瞬間、雛の視界が揺らぎ顔面に激しい衝撃を感じた。


(……え?)


雛の身体は天井へと高く舞い上がり、血のしぶきを上げながら頭からリングへと落ちていく。


《おおっとぉーーーーーーーー?何が、何が起こったんだぁぁーーーーーーー!?修羅雪姫が宙に吹き飛ばされ、ダウンーーーーーーーー!!》


「あ……かっ……」


雛は仰向けに倒れたまま四肢を伸ばし、焦点の合わぬ瞳で天井見ている。


(何が、起こったのでしょうか……?)


カウントが始まると同時に辛うじて意識を取り戻し、慌てて起きあがりファイティングポーズをとる。

風を切る音に前を見ると、再び目の前の風景が歪む。まだ完全に力の入らない脚で慌てて横に飛ぶと真後ろのリングロープが大きく撓んだ。


「よぅ躱したな、ほな次々いくで」


露わになった口で、にぃ、と笑うと再び口を開けた。

雛は本能で再び横に転がる。すると、風切り音が通りすぎていき、再び後ろのロープが撓んで戻る。

彼女はこの技に見覚えがあった。あの芭蕉宮と八来の闘いで芭蕉宮が見せた技、音の衝撃を相手にぶつける技だ。

小夢は芭蕉宮の婚約者にして弟子も名乗っていた。ならば、同じ技が使えるのも不思議ではない。それに彼女の種族は吸血鬼。恐らくこの技は蝙蝠が音の衝撃波で周囲を探るオートロケーションの強化応用だろう。


「ならば……こちらも一つ技をお見せいたしましょう」


呼吸を整え構える雛の両腕に淡い黄金の粒子が集まっていく。煌めく粒子はやがて黄金の篭手となって現れた。


「八塩流結界術・改。参ります」


小夢が放つ音の衝撃に雛は両手を開き受け止めるように向けながら正面から飛び込んでいく。


《修羅雪姫、いきなりの武装――――!そして、ツバキの不可視の攻撃に突っ込んでいったあぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!》


カアァァァァンッッッ!!と、金属のぶつかり合う甲高い音が響き、リングが大きく揺れる。


雛は両手を向けたまま、衝撃を受け止めきり勢いを殺さずに小夢へと走る。黄金の粒子が彼女の両手で輝きを増し、光の残像となって観客たちの目を奪う。


「せいっ!」


小夢が驚いたその一瞬の隙をついて、がら空きのボディに拳の重い一撃を叩き込んだ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ