1限目
前に書いていた学園ものです。
よかったら読んでみてください。
よろしくお願いします。
笑い声や侮蔑の声が聞こえる…
耳元から離れない言葉、呪いのように俺に押し付けてくる。
何度も忘れようとするがすぐに蘇ってくる。
やめろ!やめろ!俺を見るな!蔑むな!なぜ俺なんだ?
どうしてやめてくれないんだ?暗闇の中心でうずくまり怯える。
そして耐え切れなくなり目をつぶり大声を上げる。
目を開けると辺りが変わっていた。
どこか知らない教室に一人黄昏、戸惑う自分がいる。
今まで自分の部屋でうずくまり引きこもっていたのになぜ学校にいるのか?
何が起こったのが一人唖然としていた。
教室の扉から誰か入ってくる。
漆黒の髪をなびかせ、制服を着た女の子がこちらに近づいてくる。
つりあがった目でこちらを見つめてくる。
「あんた、名前は?」唐突な質問。
「えっ!なっ夏木 勇太!」早口で答える。
女の子はこいちらを少し睨んだ後、笑顔で答える。
「私、秋城 麻衣 よろしくね」
「あっよろしく…ってちがう!ここは何?ここどこ?」
「落ち着いて、順に説明するからついて来て」そう言って教室を出る。
廊下に出て歩きながら話をする。
「でここは何?ここって学校だよね?」
「ええっ学校よ、でも普通じゃないのそこはわかるでしょ?その格好で普通こないしね。」
学校には合わない格好。
半パン、ティーシャツ寝る格好である。
「今まで家にいたはずだし…いつのまにかここにいた」
「あんた学校で何かあったでしょ?」
「なぜ?そんなことを聞くの?」
「私もそうだから…」寂しそうな顔をする。
なんとなく理由は聞かなくてもわかった。理由は聞かない。
「あんたと私達が抱えている問題が原因でここに呼び出されたってこと、そして
生き残らないといけないってこと!」表情を歪めた顔を浮かべ舌打ちする。
「あんたは自分のせいでここにきて、現実に戻るには執行者と戦い生き残ること、わかった?」
アバウトな説明をされた。
「執行者にやられると…」「二度ともどれない、存在が消えるの」冷めた返答が戻ってくる。
「なんで消えないといけなんだよ!」俺は噛み付く。
「それがここのルールなのよ、後戻りできないの、戦争なの」
「戦争って…そんなすぐに納得できるかよ…」
「いやでも納得するから」
途中から文句になったが一通りの説明を終え、目的の場所に着く。
部屋に入ると、秋城と一緒の制服を着た人たちがいる。
人数は5人だ。俺と秋城あわせて7人。
その学生5人はこちらを見ているがいろいろと準備している。みな真剣な顔だ。
その中の一人が歩みよってくる。
メガネをかけたさわやかな男子学生。
生徒会長風、いかにも秀才って感じのまじめなやつだ。
その男子学生が秋城に話しかける。
「麻衣 こちらに来たのは彼だけか?」
「ええっ今のところは」
「そうか…あまり時間もない、準備しておいてくれ」
「うん、わかった、彼のことよろしくね」秋城は準備に入る。
「わかった」メガネを上げ答える。
メガネ男子はこちらに話しかけてくる。
「今時間があまりないので、手短に話すよ。僕は佐々木 雅彦、一応このクラスのまとめ役だ。
でだ、とりあえずこれに着替えてくれるかな?」
手渡されたものはここの制服らしい。確かにこの格好は恥ずかしい。
制服を急いで着る。
「うん、サイズぴったりだね、よかった、よかった」
「ありがとう」
「いえいえ、あとこれも渡しておくよ」そっと渡されたものは拳銃だった。
「拳銃…」生唾を飲み込む「使い方わかる?これはね…」当たり前のように説明された。「わかった?」ニコニコしてこちらに問いかける。
「ああっこの武器だけど何であんの?」恐る恐る聞く。
「この武器は彼が作ったんだ」と奥にいる寝癖でボサボサで身長の低い男子学生がいてこちらを見て軽く会釈する。
「彼は星川 燐太郎、かなりの武器マニア、まあ大抵のものは作れるらしい」
「そんな作れるって!そんな簡単に作れるわけが…」
「普通はね、ここは普通じゃないから…」悲しい目をする。
「ここに来ると、みな何か一つは能力が備わるらしいよ 」こちらを見つめてくる。
「君の能力は…」首を傾げる「普通はあるんだけど…」困惑している。
「まだ覚醒してないだけかもしれないし気にしないで…」フォローが入る。
「雅彦こっちは準備整ったぞ」
「私もおわった…」
「こっちもおわったよ~」
こちらに三人歩み寄ってくる。
「夏木君彼らを紹介するよ」メガネを上げ彼らを紹介してくれる。
「彼は門屋 満」 「よろしくな!」ガタイがよく気のいいお兄さんのようだ。
「彼女は八神 夜美」「よろしく…」ちょっと暗くておとなしい女の子。
「でこの駄犬はポチ」「ワン!ワン!ってちがうわ!!琴宮 冬瑚!」
乗り突っ込みする、元気でちっさな女の子だ。
「よろしく~」かわいく挨拶された。
その女の子の頭を抑え、佐々木が言う。
「現時点でのクラスメートは君を合わせて7名になる。あらためてよろしく」
「こちらこそ、よろしく」佐々木と握手する。
「麻衣、そっちはどうだ?」
「今終わったわ」
秋城と星川がこちらにやってきて、佐々木がみなに伝える。
「みんな、またやつらが俺たちを消しにきたようだ、今回も厳しい戦いになる
常に二人組みで行動するように、夏木君は僕と麻衣とでフォローする、みなの健闘を祈る」
全員が頷き、教室を出る。
みなそれぞれの武器を持ち、構えて警戒する。
「麻衣、どうだ敵の様子は?」「6体いるわ、体育館にいる」
「よしみんな行くぞ!」体育館へ向かう。
体育館はここから2階へ上がり階段正面に体育館の扉がある。
扉近くに待機しみな戦う準備を今一度行う。
みな緊張している。手が震えてきた。今手の中には拳銃を持ち戦おうとしている自分がいる。
遊びじゃない。空気が違う。ここで失敗すると死?
死じゃなく消滅?誰にも覚えていてくれない。それだけは嫌だと、頭の中でリフレインする。
そんな俺に気づいた秋城が言う。
「夏木君大丈夫だよ、私達がついてるから」そう言って笑う。
秋城以外のメンバーもこちらを見て頷く。
佐々木がメガネを上げて戦闘開始の声を上げる。
「じゃあみんな行くぞ!」そう言った瞬間に体育館の扉を乱暴に開ける。
みなすかさず入り、敵めがけて走りだす、俺もみなの後に続いた。
俺以外は戦闘に慣れており、敵と互角に戦っていた。
体育館でみな混戦となり戦い続けている。
そんな中、俺も拳銃を使い応戦する。
「こいつら半端ね!」攻撃しているがあまり効果はない。
俺の隣で応戦する佐々木が冷静に答える。
「執行者だからね、さすがに強いよ」なれた調子で言う。
「あーもう、ウザイわね!」秋城もいらだっている。
みなも協力しながら執行者たちと戦っている。
みな自分の能力を駆使しながら、戦い続け徐々に戦いが終わりを告げる。
全員無事、執行者を倒し生き残った。みな執行者の残骸を確認し、集合する。
「今回も何とかなったな」佐々木は安堵する。
「そだね~今回も楽勝だったね~」琴宮が感想を言う。
「ナッチーは腰引けて、叫んでたもんね~面白かったよ~」クスクスと笑っている。
みなそれにつられ笑い出す。
さっきの空気とは違い、どこにでもある学生達の集まりに見える。
秋城が気がつく。「おかしいわね、いつもならここで放送が流れるはず…」
みな表情が変わり、武器を構える。
「どこかにまだいるわ、みんな気をつけて!」
体育館に静寂が訪れる。
周りを見渡し、心拍数が上がる。
敵はどこからくるのか?数はどれくらいるのか?緊張感が高まる。
まだ2~3分しかたっていないのにもう一時間、静寂が続いている気がした。
地面に液体のような物が落ちてくる。
液体の音をきいたメンバーは天井を見ずに一斉のその場から離れる。
離れた場所に先ほどとは執行者が落ちてきた。
みな、攻撃をしたがびくともしない。執行者は容赦なく攻撃してくる。
みなその執行者に次々と倒れていく最後に残ったのは俺だけだった。
メンバーはみな倒れて苦しんでいる。秋城が倒れながらも声をかけてくる。
「早く逃げて…」力を振り絞り俺に伝える。
執行者はこちらを確認し襲いかかってくる!
俺は動けない。迫り来る敵に対して無力、どうにもできない、試行錯誤するが
なにもできない、ここでも同じなのか?無力のままで終わるのかそう思っていた。
声が聞こえる…笑い声、侮蔑する声…呪いの言葉が聞こえる。
「うるさい…やめろ…近づくな!!」俺は逆上する。
執行者は俺を捕まえ、両手で握りつぶそうとする。
俺は独り言のようにつぶやき、うなだれる。
執行者は握りつぶそうとするが握りつぶせなくいる。
俺は執行者の手を拒絶し、執行者の両腕を破壊する。
執行者の両腕は無造作に転がり、俺は地面に着地する。
「ぶち壊す!何もかもすべて!」執行者に近寄る。
執行者は腕を再生させ襲いかかってくるが簡単に回避し懐へ入り執行者の体を掴み、包装された箱の紙を剥がすように攻撃を繰り返す。
執行者は絶命し動かなくなる。俺はそれに気づかずに永遠に剥がし続けていた。何かに取り付かれたように…そして徐々に体力がつき、徐々に正気を取り戻してくる。
電池の切れたおもちゃのように動かなくなる。
クラスのメンバーはある程度回復し、こちらに近づく。
「夏木君」佐々木はすこし驚いた声で言う。
「君は一体…」
俺は呆然とし答える。
「なんだろ?わけわかんね…」
執行者の残骸が転がる体育館に放送が響きわたる。
「キンコンカンコーン、今回の戦争は、生徒達の勝利となりました。
おめでとうございます、次の戦争は2ヵ月後となります、頑張って生き残ってください」信じられない放送だ。
「あの放送何?」
「この戦争の終了を告げる放送だ、あの声の主はわからん…」門屋が答える。
秋城が俺の前に近づき手をさしのべる。
「ほら!たちなさいよ、終わったんだから戻るわよ」
俺はその手に掴まろうとするのを躊躇う、あの惨状を思い出す。
秋城の手だけでなく、他のメンバーの手が伸びる。
「すこし驚いたけど、大丈夫問題ないよ」佐々木は冷静に言う。
「えーっと、僕にできることがあればお手伝いします」星川は慌てて言う。
「誰だって混乱する、俺もそうだった」門屋がやさしく言う。
「気にしない…」八神はぼそりと言う。
「ちょっと引いたけどね…みんないるし何とかなるっしょ~」琴宮は明るく言う。
現実なら、崩壊するような場面だろうと思うが、みな言葉の中に温かみを感じる。
うわべだけの言葉を言っている感じもない。
みな何かを抱えてここに来たのだ。自分もその1人。
だから、多少の驚きはあるにしろ受け入れてくれる。
そう思うとなぜか胸の奥が熱い。
俺が黙っていると秋城がもう一度声をかける。
「ほら!ちんたらしない!いくよ!」強引に手を握り引っ張り、周りのメンバーもそれに続く。
「よし、みな寮にもどろう!」佐々木が号令する。
「オオーーー」佐々木に続きメンバーも答える。
俺はそれを見て悪い気がしなかった。
いつの間にか笑っていた。久々に。
まだいろいろとわからないところはあるが、このメンバーとならやっていけそうな気がした。
これが俺にとって初めてのありえない戦争になった。