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ツインテール少女は、戸惑いながらもぺこっとお辞儀をしてみせる
「こ、こんにちは、じゅりです。」
「ジュリちゃん。よろしくね」
言葉と共に、握手しようと近づいたら、逃げるように母の後ろへ隠れてしまった。
「ごめんねー。この子、はじめて見る同世代の子に緊張しちゃってるみたいでね」
村長夫人の言葉通り、少女の表情は、恐怖よりも戸惑いだろう。
ふぅ、そうか、緊張かぁ。あまりのスピードで逃げるから、思わず日本に居た頃の思い出がよみがえってきそうだったぜ。
……いや、違うんですよ。僕は、おはようって近所の子に言っただけなんです。なんで、おまわりさんが僕の家を訪ねてくるんですか? いや、ロリコンじゃないですよ。挨拶は大事だって、小学校のとき習いませんでした?
へ? 任意同行? いや、え? ほんとに? いや、行きますよ。やましいことなんてないも……。
「ほほほ、クラッドや。お前のほうが、お兄ちゃんなんだから、自分から打ち解けにいくべきじゃてぇ」
っと、そうだった。この状況をなんとかしないとな。なーにーか、キッカケはっと……。
「じゅりちゃん。服に土がついてるけど、お外でお母さんの手伝いしてたの?」
「……う、うん。そうだよ?」
ま、そうだよな。6歳を1人にしておくわけにも行かないし、母の手伝いで畑仕事が妥当だろう。
「そっかー。じゅりは偉いなー」
「……そうなの? …………じゅり、えらいの?」
村長夫人も僕を援護し、えぇ、偉いわよ とテンプレの流れになってくれた。
雰囲気が柔らかくなったので、ゆっくりとツインテ少女に近づく。
そのことに気がついたのか、少女は抱きしめるように母のズボンを強く握った。それでもその場から逃げださないでくれた。
「じゅりは偉いよ。これからも、お母さんとお父さんを助けてあげるんだよ」
そういって、頭を撫でてあげる。
初めは呆気にとられていたものの、僕の思いが通じたのか、嬉しそうに微笑んでくれた。
少女の髪から手を離し、じーちゃんの隣へと戻る。じーちゃんも満足そうに頷いてくれたのだった。
ふぅ。ミッションコンプリート。初めて狩りをするときよりも緊張しなー。……通報されなくてよかった。