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初狩の日から3年ほどたち、8歳になっていた。
本日ははじめてのお使いである。
だーれにも内緒でお出かけなの……ではなく、じーちゃんと一緒に町へ狩りの成果を持っていく。
毎日の走りこみのおかげで、体力も増えたため、一緒に町へ行く許可が下りたのだ。
いつもの布製品と弓を装備し、背中には毛皮を括り付けた背負子がある。もちろんこの毛皮は狩りの成果物だ。じーちゃんの1/4程度ではあるが、僕の成果も入っている。
初めての獲物は初日から半年は経過していたと思う。的ならすぐに当てれたが、よける相手では勝手が違った。そのため、逃がした獲物は数知れずだ。
それでもじーちゃんは笑って待っていてくれた。初獲物のときは、じーちゃんもばーちゃんも泣いて喜んでくれたし、がんばってよかったと思う。
そんなこんなで、久しぶりにステータスを見ていただこう。
・クラッド 8歳 男性
剣 - (Z) 弓141/1000 (D) 魔法 10/10 (F) 神託:鑑定3
スキル 命中補正3 気配察知2 生活魔法
おかげ様で弓がDになり、気配察知2も取得した。
7歳からはじーちゃんの付き添いではなく、一人で森に入っているし、気配察知取得は当然の結果といえた。
向うに気づかれる前に射る。それが出来ないと逃げられるばかりか、身に危険がせまる。
一人での狩りを許可してもらったのも、気配察知2を得てから少したったころだったし、重要なスキルだろう。
家を出てから3時間、森を抜けたのか光が当たる開けた場所に出た。
視界に広がる柵、その向うには家や畑が並ぶ。家は見たところ16件といったところだ。
面積の殆どが畑で、芋のような作物が植えられている。
ところどころでは村の住民らしい男性達が畑仕事をしている風景が見受けられた。
町というから城やお姫様など、色々妄想をしていたのだが、そんなものあるはずもない。
ただの集落だった。
「ついたぞ、クラッド。村長に挨拶へ行くからのしゃんとすんじゃぞ」
じーちゃんの後について柵を抜け、連れてこられた一軒の家。ほかの家と見比べても大きいといった感じではなく、普通の家だった。森の中の自分家と同じくらいだろう。
「村長ー。わしじゃぁー」
「おぉー、到着したかー。今日は遅いから心配してたよ」
返答を確認した後、引き戸を開け、中に入っていく。
木張りの床に囲炉裏、台所と。うちとまったく変わらない間取りがそこにあった。
まぁ、20件前後の村じゃ、村長とはいえ、豪華ってわけにはいかないよな。
「おや、その子がリアム爺さんの孫かい?」
「そうじゃ、自慢の孫じゃてぇ」
「はじめまして、孫のクラッドです」
「ほほぉー、リアム爺と違って中々頭の良さそうな子じゃないか」
「ほほほ、そうじゃろう、そうじゃろう。それで、これが今月の成果じゃ」
「おぉー。今週は中々の量じゃないか。それじゃぁ、部屋の角のほうへ置いといて。いま妻を呼んでくるから」
のんびりと村長は家を出て行った。去り際にステータスをちら見する。
・メイズ 31歳 男性
剣 127/1000 (D) 弓24/100 (E) 魔法 3/5 (G)
スキル 交渉術2 命中補正2 切れ味3
おぉ、村長は剣がメインなのか。まぁ、Dランクでじーちゃんの弓と比べると技術面でパッとしないが、交渉術があるし、村長としては十分なのだろう。それに爺さんと仲良さそうに話をしているところを見るに良い人なのだろうし。
盗み見たデータから評価を下しつつ、持ってきた毛皮を部屋の角に並べていると、村長が女性と少女を連れて戻ってきた。
「グラッドくん紹介するよ、妻と娘だ」
「グラッドくんね? 遠いところようこそ。これからよろしくね。ほら、ジュリ、挨拶するのよ」
村長夫人はそういうと、自分の後ろに隠れるように立っていた少女の手を引き、僕から見えるとこに少女を移動させた。
肩まで伸びた黒髪を麻の糸でツインテール上に結んだ、6歳くらいの少女がそこにいた。