君を守る者
月日は流れ、全国で水不足が解消された。その結果、各地の畑で例年通りの収穫を無事に迎えたことにより、食料が市場に流れ、人々の生活が一応の落ち着きを見せた、そんな頃。
王都の城内では、国内有力者による会合が開かれていた。
集まっている者達の中には、各町の町長の姿もあるので、立場だけを考えれば、僕もその場に居るはずなのだが、僕は現在、自分の部屋で書類と格闘している。
それもそのはず、本日の議題はクラッド領の長、つまりは僕についてなのである。
そのため、僕に話しを聞いていては、進行に差支えが出るため、声が掛からなかったのだ。
まぁ、そうは言っても、話自体はすずめを通して聞いているので、呼ばれても呼ばれなくても大差は無いんだが……。
「それでは本日の議題に則りまして、急激に領民の数を増やしているクラッド領について、忌憚のない意見をお聞かせください」
司会者の言葉に、最前列に居る体格の良い男性が、大きく手を上げた。そして、司会者に促されると、熊をも殺しそうな笑顔で言葉を発する。
「あやつの所は、今回の水不足をたまたま逃れた。そしてその食料を元に領民を受け入れた。その行動は善意のものであり、決して非難されるものではないとわしは考える」
そこまでいうと、なぜか不機嫌な様子でドシンと席に腰を下ろした。そして、次の者が指名され、同様に話を進める。
「私としましては、かの領地が住民を受け入れてくださらなかったら、恥ずかしながら、我が領内で餓死者を多発させるところでした。
そして、大量の者を受け入れたにも関わらず、そのすべてを統治してみせた手腕は、評価に値するものと考えます」
その後も次々と意見が出されるが、その殆どが僕に対して友好的な物ばかりであった。
勿論、彼らは僕の息がかかった者である。
中には余剰分の食料を適正価格で売却したことに恩を感じてくれた者も居るが、その殆どが、僕の領地に向けて進軍しようとした人達で、つまりはすずめ情報で脅した人々だ。
そして、今回もダメ押しするかのように、会合の使者が到着する前に、もうすぐ会合が開かれるから、僕に賛同してね、それとお友達にも言っといてね、と手紙を出してある。
つまりは、賛同しとかないと何をされるかわからないからと、焦って賛同している人達なのだ。
「畏まりました。それでは、参加者の9割以上がクラッド様の都長昇格に賛同との結論で王へ進言させて頂きます。本日はご多忙の所、わざわざ御越しくださいまして、誠にありがとうございました」
そして会合はスムーズに進み、大きな混乱も無く終わった。
それから1ヵ月後、僕のもとに、王の使いが訪ねてきた。
ジュリやソフィア、ハウン姉にその部下達、村長代理に相談役、防衛団長と近衛兵団長など、町の主要メンバーが僕達を取り囲み、これから行われる儀式を嬉しそうな表情で見つめている。
「クラッド・クラマ殿。貴殿の功績を認め、国王の名のもとに都長に任命する」
そんな言葉と共に、大きなルビーが埋め込まれた宝剣が僕の目の前へとやってきた。
「たしかに頂戴致しました」
金、権力、人脈。
使者の手から、長年の悲願であった最後の、そして1番追い求めた物をその手に受け取る。
周囲を見渡せば、僕を支えてくれた人々が微笑んでくれた。
その中で、始まりから一時も離れず、そしてこれからもずっと横に居る女性を側に招く。
彼女の右腕から、その役目を終えた青い輪を外し、その代わりとして左手の薬指に輪をはめた。
窓から入り入り込んだ風が、2人の間を抜け、大きくなった村へと降り注ぐ。
そこに息づく人々の喜びに触れると、青く高い大空に羽ばたいていった。
村の未来が幸福であれと。
最後までお読み頂き誠にありがとうございます。
初投稿の作品で非常に読みにくい点が多くあったと思います。
本当にありがとうございます。
あなたのお陰で日刊ランキングが最高50位以内を獲得できました。また、たくさんの感想や評価を頂き、嬉しく思っております。
それでは、次の作品である
『なんか、妹の部屋にダンジョンが出来たんですが』
http://ncode.syosetu.com/n2784dm/
も読んでほしいと、宣伝をさせていただいて、本作品最後の言葉とさせていただきます。
誠にありがとうございました。




