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異世界村長:目標は生き残ること。神は信じない  作者: 薄味メロン
― ダンジョンのある町 ―
63/73

<62>

 ミシェルを引き連れて、ダンジョンの入口を潜り、2個目の部屋にたどり着いた。


 部屋の中には、大小様々な岩が点在し、敵の姿を僕達の目から隠していた。


 水を吐き出すスライムを見つけてから4ヶ月。

 ダンジョンはその姿を大きく変化していた。


 もともと土だけだった地面には、部屋によって様々な物がスライムから生み出され、現在では森や湖、岩場に沼地など、部屋によって様々な空間を生み出している。


 部屋数自体も増え、部屋数の把握どころかダンジョンコアの位置さえ把握できなくなっていた。



 僕達にとっては、毎日の様に見慣れた空間なのだが、隣に居るミシェルは、キョロキョロと視線を彷徨わせ、緊張を隠しきれて居ない。 


「基本的に僕達は手を出さないが、危険そうならすぐに助けに向かうよ。

 ミシェルは安心して、出来うる限りの能力を見せてくれ」

「……かしこまりました」


 ミシェルは盾を前に突き出し、部屋の中へと歩みを進めるが、当然その足取りは重い。


 スズメを飛ばして部屋全体を確認できる僕と異なり、彼には敵の姿を把握する術はない。


 自身の身長を超える岩のせいで視界が悪く、いつ魔物に襲われるかわからない状況は、恐怖以外のなにものでもないだろう。


 それでも、ゆっくりとだが、着実に歩みを進める姿勢は評価できた。


 そんな彼が2メートルほど直進したところで、岩陰から1匹のゴブリンが飛び出してきた。


 ゴブリンは、勢いそのままに、右手に掴んでいる木の棒を体ごとミシェルに叩きつけるも、がっちりと盾で受け止められ、逆に地面へと叩きつけられる。

 瞬時に立ち上がろうとしたものの、ミシェルが繰り出したロングソードで首を落とされ、光りとなって消えた。


「ほぉ。見た目通り、なかなかの筋力だな」

「斬新な盾の使い方だね。勉強になるよ」


 敵が消えたことにより、ほっと一息吐いたミシェルは、僕達の感嘆の声を尻目に、目的物である魔玉を拾い上げ、びっしょりと濡れる額の汗を拭った。


(ふー、なんとか倒せたか。ってか、本当に魔物が居て、魔玉が取れるんだな。この玉、いくらでうれ――んな!!)


 自分に迫る影に気付き、転がるようにミシェルは横へと飛んだ。

 

 地面をけるようにして盾を構えた彼の目に、ゴブリンの姿が映る。

 しかし、その手にはすでに1本の矢が刺さっており、唯一の武器である木の枝を地面に落としている。

 そして、矢から炎が上がったかと思えば、ゴブリンがその場から消え去っていった。

 

 僕は矢を撃ち終えた弓を下に下げ、身振り手振りにて、ミシェルに帰還命令を伝える。

 

 明らかに落ち込むミシェルを引き連れて地上へと戻り、黄色い紐と少しばかりのお金を彼に手渡した。


「試験の結果は合格だ。

 明日からはこの紐を見えやすい場所に身に付けて、この穴に潜って魔玉や素材を集めてくれ。それを僕のところまで持ってくれば、給金を渡そう。

 直接商人と取引を行えば即座に解雇とするからそのつもりでな。

 それと、その紐は採掘人を示す紐だ。

 穴の中で人に出会ったら、その紐を確認してくれ、確認出来なければ、敵である可能性が高い。その場合は捕縛するか、最悪殺してしまって良い。

 注意点としてはそんなとこだ」

「…………雇って頂けるのですか?」

「ん? ……あぁ、確かに、気の緩みから危ない部分はあったが、しっかりと避けれていたな。問題ないと判断した。

 ただ、慣れるまでは奥に進むのはやめた方が良いと思う。

 それから、複数人で作業を行った方が良いと思えば、人を連れてくるといい。ミシェルの紹介であれば、試験を免除してやろう。

 その代わり、その者はミシェルが教育してやれよ?」

「……わかりました。ありがとうございます」


 こうして、採掘人第1号を雇い入れ、ダンジョンの町が本格稼動を始めた。


 

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