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<55> 

 ゴブリン戦の翌日、僕達は山の麓にある平原の一角で、地面に開いた洞穴を眺めていた。

 

 100匹近くのゴブリン達を倒したあと、落ちていた魔玉を使って召還魔法のレベルを上げ、30体のすずめを使って村周辺を調査した結果、この洞穴からゴブリン達が出てきているのが判明したためだ。 

 ちなみに、ジュリの付与魔法は、種類こそ増えなかったものの、炎や水、結界の威力があがっている。

 ソフィアも空間魔法のレベルアップで入れれる大きさがあがり、回復魔法も骨折程度なら一瞬で改善できるようになった。……つまり、レベルアップらしい効果を得られていないのは、僕だけである。


 深く考えると悲しくなりそうなので、話を目の前の穴に戻そう。 

 

 周囲には木すら生えていない平坦な草むらに、ぽっかりと開いた直径5メートル程度の穴は、緩やかな角度で地面奥深くへと続いている。


 内部を覗き込むと、すこし降りた先が部屋のように空間が広がっており、周囲に生えるコケがうっすら光り、部屋全体を照らしていた。

 

 僕の中では、おおよその検討が付いているのだが、念のために、ソフィアに話を聞く。

 

「ソフィア、この穴は、何だと思う?」

「そうだね。十中八九、ダンジョンだと思うよ」 


 結局、予想通りの答えが返ってきた。


 詳しく話を聞くと、この世界のダンジョンは自然発生的に突如出来ると言われ、発生のメカニズムなどはわかっていないとの事。

 ある日突然、街中央に穴が開き、中から魔物が出現した、なんて話も過去にはあるらしい。


 穴の最深部にはコアと呼ばれるものがあり、それを破壊しなければ無限に魔物が沸いてくる。

 内部は、魔物だけでなく、罠も仕掛けられており、ダンジョンを駆除する専門家が対処しているとのこと。

 

 一通り話しを聞いたところで、今後の活動方針が決まった。


「ここに街を作る」

「…………」


 僕の発言にハウン姉ですら言葉を失った。



「ハウン姉、魔玉は売れるんだよな?」

「……はい。薬などに用いることがありますので、需要は高いかと」

「ソフィア、ダンジョンの奥からは技術石が見つかることがあるんだよな?」

「……あぁ、そうだね。書物の知識ではあるが、そう記憶しているよ」

「ジュリ、入口を結界で塞ぎ、特定の人間だけ行き来することは可能だよな?」

「うん、大丈夫だよ」

「魔物が出てこなくて、内部には豊富な資源。有効活用すべきだろ?」


「…………」


 どうも、ダンジョンは早急に駆除するものであるとの考えが根強いようだ。


 ダンジョン駆除は、国が無償で行ってくれるらしく、敵が湧き出す物をわざわざ放置するなど考えもしないのだろう。


 敵の基地ですら、もったいないの心で有効利用するなど、地球人特有のものなのかもしれない。


 それでも、僕は日本人の記憶を受けついだ者として、この気持ちを大切に、前に向かって突っ走ろうと思う。


 腕につけられた青い輪を外せる未来まで。

  

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