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ソフィアの技術披露は夕食後も続けられ、能力に加えて、彼女自身のことについても話してもらった。
まず、両親が王立図書に勤務する家に生まれ、子供の頃から本に触れる習慣があったことから、彼女の知識は予想よりも豊富らしい。
能力には関係ないが、奴隷になった原因は、この辺に寄与しする。
ある日、両親が通り魔に殺された。
なんとか日雇いの仕事で生計を立てていたが、食べていくのがやっとの生活で、寂しさや心細さに耐えかね、気が付けば、思い出の図書館に足を運んでいた。
もちろん入場料を払うだけのお金など無く、悪いことだとは思いながらも、無断侵入を試みた所、あっけなく逮捕されてしまい奴隷になったそうだ。
回復魔法と空間魔法については、それぞれ両親に貰ったらしい。
なんでも、両親がソフィアの頭に手をかざしたかと思うと、魔法が使えるようになっていたそうだ。
この2つは彼女のステータスにも贈与の項目で登録されていることから、両親から贈与されたと考えるのが正しいだろう。
贈与の際に特殊な器具などは使っていなかったとのことなので、贈与のやり方はよくわからないらしい。
彼女の家はもともと貴族に連なる家らしく、この辺りが魔法は貴族しか使えないといわれるゆえんなのかもしれない。
回復魔法については、体力を回復させる程度のもので傷口などは治せないとのこと。
空間魔法。こいつが1番の大物だった。
使える能力は空間収納術。つまりは四次元ポケ○トである。
命の宿っていないものなら収納できるらしく、その大きさはスーパー袋3枚分といった感じだった。
中に入れられたものは時間が経過することも無く、重さを感じずに運べるらしい。
ハウン姉曰く、空間魔法は貴族の商人が、回復魔法は王宮医師達が使えるらしく、比較的有名らしい。
実験のために、夕食として出されたスープを器のまま収納して貰い、翌朝飲んで見たが暖かいままだった。
ソフィアが居れば、野宿しても美味しいものが食べれるねと、ジュリはホクホク顔である。
また、その夕食の際、彼女に同じ食事で同席を促すと、暖かくて美味しい物が出来るなんて思わなかったよ、といって泣き出してしまったのは余談であろう。
翌日は、朝の早い時間から王都を出発し、村に向けて歩き出した。
やはりと言うべきか、僕達と比べるとソフィアの体力は少なかった。
山の中で育った僕達と彼女では比べることがそもそも可愛そうだろう。それに奴隷商で捕まっていた時間もあり、仕方がないと言えた。
次第に口数が減り、呼吸も荒くなったソフィアに合わせるようなペースでこまめに休憩を挟み、歩き続けると、遠くに中世ヨーロッパを思い出させる赤レンガの城壁が見えてきた。
日暮れにはまだ時間があるが、急ぐ必要もないので、初日のゴールは城壁の町になった。




