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僕の服だと思う荷物を手に下げたジュリとハウン姉。
彼女達にとって、この部屋の光景はどう写るのだろう。
丈の短いワンピースに身を包み、床に頭を擦り付ける17歳女性と、それを見下ろす15歳男性。……いくら考えても良い方向にはいかないな。
ってことで、彼女達が誤解する前に、パニックで泣いているから慰めてあげて、と助けを求めた。
ジュリがしゃがんで彼女の頭を撫でる。
「どぉしたの? お兄ちゃんに何かされた?」
「……汚い私などに、妹様の手を汚すなど、もうしわけありません」
なんとなく意味はわかるが、もはや支離滅裂である。
「大丈夫だよ。ほら、同じ腕輪。私もお兄ちゃんの奴隷だからさ。同じだよ」
「先輩でしたか、……先輩には重ねがさね――」
「そんなのいいから。それに先輩じゃなくてジュリでいいよ。同じ奴隷として仲良くしようよ」
「いや、そんな、でも……」
「だーめ、先輩命令」
どうやら、ソフィアのことはジュリに任せておけば良さそうだ。
安堵の息を吐き出し、一緒に彼女達の様子を伺っていたハウン姉に報告を行う。
「えっと、今は少々取り乱してますが、能力は保証しますよ」
「そのようですね。あの様子でも自然に敬語が出てきますし、能力は十分でしょう。
それにしましてもよくあのように綺麗な方を金3枚以内で購入できましたね。さすがはクラッド村長です」
「そこは僕というより彼女の力がほとんどですね」
「優秀な主人には、優秀な奴隷が寄って来る。結局はクラッド様のお力ですよ」
どうやらハウン姉の御眼鏡にも叶ったようだ。
そんなやりとりをしている間に、ジュリがソフィアの陥落に成功したようだ。一応は、こちらの話を聴いてくれる状態になったように見える。
財布を取り出し、村までの旅費を除くすべてのお金をジュリに渡した。
「明日から村に向けて出発するから、このお金でみんなの服を買ってきてくれ。中古じゃなくて新品のやつな」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
「え? いえ。あの奴隷のわた――」
「それと、銭湯に行って疲れを癒してこい」
「はーい」
「そんな銭湯などと、わたしは井戸からみず――」
「はい、そういうことで、すぐ移動ね。はい、かいさーん」
ソフィアの言葉を無視するように命令を出し、ジュリが引きずるように彼女を連れて行った。
どことなく、浮気相手が彼女にバレるような気分だったが、ジュリの反応を見るに大丈夫そうだ。
女子同士、お風呂に入って、買い物でもしてくれば、自然と仲良くなっているだろう。




