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<39>

 僕の服だと思う荷物を手に下げたジュリとハウン姉。

 彼女達にとって、この部屋の光景はどう写るのだろう。


 丈の短いワンピースに身を包み、床に頭を擦り付ける17歳女性と、それを見下ろす15歳男性。……いくら考えても良い方向にはいかないな。


 ってことで、彼女達が誤解する前に、パニックで泣いているから慰めてあげて、と助けを求めた。


 ジュリがしゃがんで彼女の頭を撫でる。

「どぉしたの? お兄ちゃんに何かされた?」 

「……汚い私などに、妹様の手を汚すなど、もうしわけありません」


 なんとなく意味はわかるが、もはや支離滅裂である。


「大丈夫だよ。ほら、同じ腕輪。私もお兄ちゃんの奴隷だからさ。同じだよ」

「先輩でしたか、……先輩には重ねがさね――」

「そんなのいいから。それに先輩じゃなくてジュリでいいよ。同じ奴隷として仲良くしようよ」

「いや、そんな、でも……」

「だーめ、先輩命令」


 どうやら、ソフィアのことはジュリに任せておけば良さそうだ。

 安堵の息を吐き出し、一緒に彼女達の様子を伺っていたハウン姉に報告を行う。


「えっと、今は少々取り乱してますが、能力は保証しますよ」

「そのようですね。あの様子でも自然に敬語が出てきますし、能力は十分でしょう。

 それにしましてもよくあのように綺麗な方を金3枚以内で購入できましたね。さすがはクラッド村長です」

「そこは僕というより彼女の力がほとんどですね」

「優秀な主人には、優秀な奴隷が寄って来る。結局はクラッド様のお力ですよ」


 どうやらハウン姉の御眼鏡にも叶ったようだ。

 そんなやりとりをしている間に、ジュリがソフィアの陥落に成功したようだ。一応は、こちらの話を聴いてくれる状態になったように見える。


 財布を取り出し、村までの旅費を除くすべてのお金をジュリに渡した。


「明日から村に向けて出発するから、このお金でみんなの服を買ってきてくれ。中古じゃなくて新品のやつな」

「うん。ありがとうお兄ちゃん」

「え? いえ。あの奴隷のわた――」

「それと、銭湯に行って疲れを癒してこい」

「はーい」

「そんな銭湯などと、わたしは井戸からみず――」

「はい、そういうことで、すぐ移動ね。はい、かいさーん」

 

 ソフィアの言葉を無視するように命令を出し、ジュリが引きずるように彼女を連れて行った。


 どことなく、浮気相手が彼女にバレるような気分だったが、ジュリの反応を見るに大丈夫そうだ。

 女子同士、お風呂に入って、買い物でもしてくれば、自然と仲良くなっているだろう。


 

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