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僕は4歳になった。
2つの魔法は、じーちゃんに習い始めてから3ヶ月ほどで出来るようになった。どうやら、滑舌はあまり関係ないようで、詠唱内容も厳密な問題ないみたいだ。
そして、水と火の担当を僕がやると言いしたら、2人はすごく喜んでくれた。
初めの頃は水量がないことや、薪に火が燃え移らないなどあったが、半年ほど、毎日朝昼晩と水と火を使い続けたおかげで、今では息を吸うように使うことが出来る。
ステータスを確認してみると、努力を証明するかのように魔法がFになっていた。じいちゃんやばーちゃんと同じレベルにまでなったらしい。
じーちゃんも魔法に関しては免許皆伝、もう教えることはないとほくほく顔である。
僕自身もこれ以上の成長はないと感じている。なぜかと言われればステータスを見てもらえば分かると思う。
・クラッド 3歳 男性
剣 - (Z) 弓0/1 (G) 魔法 10/10 (F) 神託:鑑定2
ある日を境に人物の鑑定結果に変化があった。それまではアルファベット評価だったのが、数値とアルファベットに変化した。
注意して観察してみると、魔法を使い続けるにつれ、3/5(G)が4/5(G)になり、4/5(G)の次が1/10(F) だった。
どうやら分子、分母の表記であり、1になったらランクアップのようだ。
なんともゲームチックな表記である。
そして、問題の魔法だが、10/10(F)で本来なら(E)になるべきところから変動しなくなった。
FとEには壁があるのかと、その壁を突破する方法を模索していたが、3歳にはお手上げだった。じーちゃんの鑑定結果もFで10/10なので、65歳でもお手上げのようだ。
つまり、このまま使い続けてもEにはならないらしい。ここが、平民と貴族の境目なのかもしれない。
ようするに、おい、神。チートくれよ。限界突破のチートくらいくれよ!! そういう話である。
まぁ、神なんてどうせそんなもんだってことは2年前から痛いほどに分かっているため、いまさらであるのだが……。
かといって、いつまでも派手な魔法が出来ないからと、嘆いてるわけにはいかないので、じーちゃんに弓を習うことにした。
魔法はかっこ良いんだが、100円ライターと蛇口のみを駆使しても、この異世界で生きていけるとは思えないし。
それに弓の方が魔法よりかっこいいしな。
……べ、べつに負け惜しみとかじゃないんだからね!!
「じーちゃん、ゆみ、おしえてよ」
「ほほほ、クラッド。そうじゃのぅ、そろそろ教えてもよいころかのぅ。よし、明日からはじめようかのぉ」
「うん、ありがとう。じーちゃん」
そういうことになった。
翌朝、布団からゆっくり体を起すと、じーちゃんが近づいてくる。
「クラッド起きたかのぅ。ほれ、お前さんの弓じゃ、使うとえぇ」
そういって、小さな弓を差し出してきた。さっそく鑑定してみる。
……最近なにかと鑑定癖がついてきた気がするな。良いことなのか悪いことなのか……。
まぁいい、いまは鑑定より弓だ。
・ちいさな木の弓 ランクG 説明 初心者用の弓。使いやすい
うん。弓だった。まぁ、そうだよな。
あ、そうそう、物の鑑定は、説明という項目が増えたよ。まぁ、かといって、説明項目の有効利用も見つからないんだけど、情報が増えることはよいことだと思う。
「ありがとうじいちゃん」
「ほほほ、クラッドは、弓より魔法のほうがすきかのぅ。魔法のときのほうが目をきらきらさせとったぞ」
「…………」
うぐ……。いや、そんなことないぞじいちゃん。魔法より弓のほうがかっこ良いんだからね!! 弓だって派手なんだからね!!
「まぁええわい。クラッドや、玄関にお前用の矢と的を用意してあるから、好きに使うと良い」
そういって、楽しそうにじーちゃんは狩りに出かけていった。
じいちゃんを見送ったあとは、ワクテカする弓の時間だ。
魔法よりわくわくする弓の時間だ!! ほんとなんだからね。魔法より、わくわくするんだからね。
……うん、がんばろう。