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 ハウン姉おすすめの奴隷商店。扉の前で何度も懐の財布を確認する。


 うん、ハウン姉から貰ったお金はあるし、大丈夫だな。……なんだか、コンビニでアダルトな本を買う中学生のような気分だな。


 大きく息を吐き出し、早まる心臓を落ち着かせながら、がっちりとした扉を開く。

 

 中は予想に反して清潔感が漂っていた。

 足元には青く染色させた毛皮の絨毯が敷き詰められ、端々にまで掃除が行き届いている。

 目の前にはカウンターのような机とイスがあり、その奥には長い廊下と複数の部屋が見える。


 最高級のカラオケに来てしまったかのような雰囲気だ。


 僕の姿に気付いた受付嬢らしき人物が立ち上がり、深々とお辞儀をしてくれた。


 右手に青い腕輪をしているため、彼女も奴隷なのだろう。

 身に着けている青いワンピースは太股までしかなく、腰を白いリボンで縛ることで、胸の大きさを強調していた。


「いらっしゃいませ。本日は買取と売却どちらでお見えですか?」


 彼女の衣装に釘付けになっていた僕に綺麗な笑みで問いかけてくる。

 慌てて答えると奥にある会議室のような小部屋に案内され、中に居た男性に希望を聞かれ、その場で少し待つことになった。


 5分もしないうちに男性が12人の女性を連れて部屋に帰ってくる。彼女達が商品なのだろう。


 受付嬢と同じ青のワンピースに身を包んだ女性達。

 下は10歳に満たない少女から、上は20後半だと思う者まで、多種多様な女性達が、壁に沿って一列に並んだ。

 彼女たちの目には希望の光りなど無く、全体的に沈んで見える。


 全員が奴隷なのだ。それも仕方のないことだろう。


「お待たせしました。ご希望の商品達です。腰のリボンで赤いが金2枚、黄色が金3枚となります」


 彼女達の脅えた表情に同情を隠しきれないながらも、一人一人、鑑定スキルで能力を確かめていった。


 出来るなら全員購入し、救ってあげたいなどと偽善めいた考えが過ぎるが、資金も収入も足りない。ならば、より良い人を探さなくてはならない。


 そして、金3枚の人達の中で異質な女性を発見した。



 ここの商人だと思う男性には、ハウン姉から返却された資金の残りと能力の希望を伝えてある。

 家政婦の仕事がある程度できて若い女性。値段が金2~3枚が条件だ。


 奴隷達は、能力や見た目に応じて値段が変わるらしく、金3枚程度というのは平均的な金額らしい。

 そして、能力に対し若干の希望を入れた。つまり、目の前に集められた女性の見た目はそういう評価らしい。


 ハウン姉にも、今回の奴隷に関して、見た目には拘らないでください。今後、お金が入りましたらでお願いします、と言われている。

 僕には妻と言って過言ではないジュリが居るし、別に良いのだが、出来るなら見た目も良い人の方がいい。

 個人の見解だけでなく、周りからの評価もあるためだ。


 そう思っていたのだが、明らかに目の前の女性は美人と言って差し支えない見た目である。

 

 年齢は僕の1つ上の16歳。淡い紫色の髪を肩まで伸ばし、大人びた雰囲気を醸し出している。

 童顔のジュリを可愛い妹だとすれば、頼れる姉といった感じだ。

 若干痛んで見える髪を整え、高校の制服などを着せ、図書館で難しい小説でも読ませれば、さぞ絵になるだろう。


 容姿に加え気になる点があと2点。 

 

 まずは、ステータスである。


 ソフィア 16歳 女性

 剣 - (G)  弓 - (G) 魔法 10/10 (F) 先天:過去3

 スキル:生活魔法

 贈与:空間魔法 1/10  回復魔法 1/10 


 並べられた全員分のステータスを見たが、生活魔法を使える者は彼女だけだった。そして、先天スキルや贈与スキルなど、初めて見るステータス欄まである。


 もう1つは、彼女だけが、その細い足にオモリが付けられ、手が後ろで縛られていることである。

 さらには、他の女性達より栄養状態が悪く、髪の毛もあまり手入れはされていないようも見える。


 どう考えてもわけあり商品なのだろう。


 とりあえず、店員に聞いてみるしかないか


「彼女はなぜ拘束されている?」

「はい。彼女は情緒不安定なところがありまして、訓練時は非常に優秀なのですが、お客様の前だと暴言を吐くなどを繰り返しました。

 お恥かしい話し、1人のお客様に危害を加えたため、あのように拘束をしている次第です」


 なるほど、極度のあがり性か二重人格者ってところか。

 奴隷として売られて精神がおかしくなったか、元からなのか。……もし後者なら、環境を整えてやれば、その能力を十分に発揮してくれる可能性はあるだろう。


 彼女を見つめながら様々なことを思案していると、突如、彼女が動いた。


 傍らに控えていた商人が盾になるべく、彼女と僕の間に立ちふさがる。


 小さな部屋の中は、一瞬にして緊張感に包まれた。


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