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「……確かに、最高級の塩のようだな。ありがたく頂戴しよう」
「それで、村の件なのですが」
「うむ。そうだな。……価格次第では、売却を考えなくもない」
「ありがとうございまず。お客様からは適切価格で購入してきて欲しいと頼まれて居りまして、金額の提示をお願いできますか?」
「う、うむ。そうだな。あの村なら金貨30枚でなら売っても良い。商会員の君もそう思うだろ?」
会長が提示した金額は、家が17軒しかない村としては桁違いであった。
この国の貨幣価値は、下から鉄、銅、銀、金、白金の5種類である。鉄銭100枚で銅貨1枚、銅貨100枚で銀貨1枚と、100単位で貨幣が変わる仕組みだ。
王都に住む一般町人の月給が銀貨1枚なので、金貨30枚は日本円で8億程度。家1軒が5千万クラスだ。
これが王都周辺なら権限の強さも相まって理解できなくもないが、今回は山奥の田舎村である。
(売っても良いって、全然売る気がない値段じゃない。それにわざわざ、商会員のって付けて、同意を求めてくるなんて、ほんとクズよね)
「お客様からは、お金に糸目を付けずにと仰せ付かっております。それと同時に、会長が値段を提示してくれたならば、渡して欲しいと、手紙を預かって参りました。
そして、私事で申し訳ありませんが、こちらの手紙は私からの物です。お納めください」
あの塩を出した手前、値段交渉は不利と悟り、金30枚を受け入れた。
伯爵家がバックについていながら、お金がないなどと言い出せば矛盾を指摘されかねない。そのことがわかっていながらも、塩を出さなければ値段提示すら出来なかったのだから、仕方が無い。
幸い、石を1.2倍で販売していたこともあり、ギリギリではあるが、持ち合わせはあった。
「私用の方は退職届けでございます。今回のお客様の下で働かせて頂くことになったため、退職させていただきます」
「そうか、今日までご苦労だった」
まるで興味が無いようにあっさりと受理し、傍らに控えていた秘書に退職届を渡す。
「それで、こっちの内容は?」
「はい、そちらの手紙に関しては、私共に一切を秘匿されておりますので、ご確認いただければと」
会長は蜜蝋の封を切り、手紙を確認する。読み進めると徐々に会長の顔色が青ざめ、額からは汗が滲んだ。
無論、中身を知らないはずがない。
お客様からの手紙は、1週間分の会長の行動が事細かにしるされたものだ。
朝飯から睡眠時の方向まで、ありとあらゆることが記載されている。
要するに、いつでも暗殺出来ますよ、といった内容だ。
(ふふ、面白いほど顔を変化させちゃってるわね。優秀な護衛が機能してないことが怖いって丸わかりじゃない。……まぁ、あの能力を知ったときは私も驚いたけどね。
さー、商会との関係も断ち切れたし、気合入れて、ガンガン要求を通させていただきますかね)
「主から金に糸目はつけずと賜っておりますが、私個人としましては、もう少し権利が欲しいと考えてる次第なのですが」
「…………あ、あぁ、わかった。聞かせてもらおう」
その後の交渉は、終始有利に物事が進んだ。
最終的に、値段は変わらず金30ながらも、村に加え、村のある山、さらには裾野に広がる平原までも購入することで合意した。




