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<26>

 ジュリに怒られた翌日、僕達は村に居たハウンさんを問い詰めていた。


「つまり、ハウンさんは僕達を騙していたわけですね?」

「はい、私はクラッド様達を騙しておりました」


 ハウンさんは申し訳なさそうな雰囲気を醸し出しながらも、毅然とした商人の態度を貫いている。


「……ハウン姉、わるいんだけど、商人じゃなくて、姉の立場で話してくれない?」

「……わかったわ。……それで、クラッド君はなにが聞きたい?」


 周囲ではジュリと、村長代理のジュンさんが、話の行方を見守っていた。


 事の起こりは、昨日、召還獣の有効利用が発覚した時にさかのぼる。


 隠密と飛行能力を確認するためにすずめを村へと飛ばしたところ、村の重役達数人がハウンさんに詰め寄っていた。

 彼女が村に居ることに疑問を覚えつつ、会話を盗聴決行。

 その会話に驚愕を覚えた僕は、夜明けを待って、村まで走りハウンさんを捕まえた。


 そして、探りなどなしに、盗聴で聞いた本命の話をぶつける。


「物価の上昇。周囲の戦争の有無。それと、7割の税金の内訳を教えてくれない?」

「……いいわ、隠し事なしで教えてあげる」


 ハウン姉は、自分の罪を告白するかのように話し。村長代理が彼女を擁護するように話してくれた。 


 2人の話をまとめると、僕達2人に隠されたていた村の状況が見えてきた。


 物価の上昇の原因は戦争であると聞いていたが、それは真っ赤な嘘であり、税率上昇が本当の理由だった。


 村長夫妻が居なくなった、ひいては第2王子が負けたことにより、第1王子派が村の権利を取り上げた。その権利を振りかざし税率を徐々に増加させているとのこと。 

 そのため、現在の村の税率は、周囲の村から比べても異常な数値であり、到底生きていける数値でない。

 色々と手は考えているが、権力の前にどうすることも出来ていないらしい。


 僕の場合は、納税対象が毛皮であり、食生活に直結しないことや、まだ子供であることを考慮し、増加分の毛皮を物価の上昇分として徴収していた。


 ハウン姉を中心に大人達で税率を解決し、僕達には戦争が終了したと報告する算段だったようだ。  

 おそらくは、僕というより、元村長の娘であるジュリが思いつめないための作戦だろう。


「私が事前に察知し、止めれていれば、ここまで酷いことにはならなかったわ。つまり、すべて私の責任なの」


 ハウン姉が自分を攻めるのには理由があった。今回のことはハウン姉が雇われている商会が大きく関わっていたのである。


 商会はもともと第2王子派だったが、負け戦だと見ると第1王子派に鞍替えした。その結果、辛くも弾圧は免れたが、派閥からの信用は当然低い。その信用を得るためにとった行動が、この村の見せしめ税上げなのだ。


 話しを聞く限りは、商会全体の問題であり、ハウンさんの責任では無いと思うのだが、僕がそう言っても聞き入れないだろう。


「責任の所在は一旦置いておくとして、現状はどうなっているんですか? 税金を下げるよう交渉とかしてるんでしょ?」

「……ええ、そうなんだけどね。

 恥かしい話し、こっちにはお金も権力もないし、交渉のテーブルに座らせることすら困難といった状況なの」

「……なるほど、状況は理解しました。……ちょっと、ハウン姉に見て欲しいものがあるんですよ」


 そういって、洞窟で拾った石を袋ごと手渡す。


 異世界に転生して15年。初めて神に感謝しても良いかなと思えた。

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