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鑑定の結果、Sランクと表示された石をジュリの前に差し出す。
本日のメインはジュリなので、先に石を選んでもらうことにした。
「そっちでいいんだな?」
「うん、早く使っちゃおう」
「そうしようか」
迷いながらもジュリは付与魔法を選択したので、僕は召喚魔法の石を手に取る。
目を閉じ、石を両手で包み込む。すると暖かいものが石から手を伝い、全身を駆け巡った。
頭の中に直接文字が流れ込んでくる。
・召還魔法 召還獣を使役し、そのものと感覚を共有する。スキルの使用方法は―――。
その文字を一通り確認した後、念の為、鑑定スキルでステータスを確認した。
・クラッド 15歳 男性
剣 - (Z) 弓 193/100000 (B) 魔法 10/10 (F)
神託:鑑定3 後天:召還魔法
スキル 命中補正5 2連撃ち 隠蔽1 気配察知4
なぜか、2連撃ちや隠蔽が増えたり、生活魔法が消えたりしてるが、目的の召還魔法は確認できた。
どうやら無事に成功らしい。
増えた2つは昨日の戦闘経験からだろう。消えた生活魔法に関しては、普通に使えたため、召喚魔法と一緒になったと考えるのが妥当だと思う。
自分の結果を一通り確かめ、ジュリに矛先を向ける。
「ジュリ、終わったか?」
「うん。なんか、物を強化できるようになったんだってー」
ジュリも鑑定してみた。
・ジュリ 13歳 女性
剣 25/100 (E) 弓429/1000 (D) 魔法 10/10 (F)
後天:付与魔法
スキル:交渉術1 命中補正2 切れ味1 気配察知2
うん、こっちも追加されてるな。
なんとなく想像つくが、予想と違っても困るし、試して見るのは広いところでやるべきだろう。
「じゃぁ、そろそろ帰ろうか。スキル試すのは、その後だな」
「はーい」
「今日はジュリのおかげで宝物が見つかったよ。ありがとうな。
メインをジュリに任せて正解だったよ」
「ほんと? 私、お兄ちゃんの役にたてた?」
「もちろんだよ。ジュリが居なかったらこの石、見つけられなかっただろうしね」
うれしそうに近寄ってきたジュリの頭をやさしく撫でる。
「えへへー。そっかー。あっ、じゃぁ、ジュリにご褒美、ちょうだい」
ジュリが御褒美なんて、珍しいこともあるな。ここは男の甲斐性を見せるべきかな。
それにしても御褒美だなんて、ジュリも大人になったものだ。
「んー、いいよ。何が欲しい?」
「あのね。ご褒美にキスして」
頬を赤らめ、うるんだ瞳を上目遣いで見つめてくる。
「そんなことでいいのか? ほら、もうちょっとこっちに来い」
ジュリの手を引き、近くに引き寄せる。肩に手を回し、逃げられないようにしてから、顔を近づけた。
僕が素直に応じると思わなかったのだろう。ジュリは顔を赤らめながら驚きの表情を浮かべている。
「ほら、ジュリ。目を閉じなきゃ、キスできないだろ?」
「う、うん」
勢いに流され、ジュリが目を閉じたことを確認すると、額に軽い口付けをした。
放り出すように彼女を解放すると、事の顛末が理解できたのか、ジュリの顔が徐々に恥じらいから怒りへと変わる。
「も、もーぉ、お兄ちゃん!! ほんと、お兄ちゃんは、お兄ちゃんなんだから!!!」
「ほら、ご褒美も上げたんだし、帰るぞ」
「やぁーだ。私、怒ったんだからね。ちょっと、こっち来て、そこに座って」
ジュリの顔は怒りで包まれていた。
なぜだか、逆らえないオーラを感じる。
キスなんて背伸びしたことを言う彼女を少しからかってやろうと思うちょっとした出来ごころだったんだが、どうやらやりすぎてしまったらしい。
額とはいえ、実際にキスをしてしまったのはやりすぎだった。
指示通りに、ジュリの前へ行き、座った。もちろん正座である。
そして、彼女は今にもビンタ出来そうなくらいの距離まで詰めてきた。その距離は50センチもないだろう。
「いや、ほんと、つい出来心でしてー」
「いいたいことはそれだけー? 女の子に恥をかかせちゃダメなんだからね」
一瞬だけ吸いこまれるような頬笑みを見せたかと思うと、突如としてジュリが体ごとぶつかってきた。
いくら軽いとはいえ、座った体制で受け止めれるはずもなく、押し倒されたような大勢で、僕達は後ろへと倒れる。
「ちょ、ジュリ、あぶな――」
両手で頭を包みこまれ、唇の距離がゼロになる。
2度目のキスは潜水のように、深く長いものだった。




