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盗賊襲撃2日目。
朝食を済ませ、洞穴へと向かう。
念のためにと慎重に進んで見たが、結局、誰にも出会うことなく洞窟内部へと侵入した。
「もー、敵なんていないじゃん。お兄ちゃん、私のこと騙したでしょ。何が約束通りメインでいいよ」
ま、そうだよな。だって、昨日7人全員倒しちゃったし。
ほかに仲間が居る可能性はあるが、昨日の今日で援軍が到着するとは思えないし、呼びに行けるやつなんて居なかっただろうしな。
「約束通りだろ? ジュリがメインで宝探し。僕がサブで周囲の警戒。
何か間違ってるか?」
「ぅうー。……間違ってなけどさぁ。もぉー。あんまり意地悪するとグレちゃうんだからね!」
「ジュリは優秀な僕の妹だからねー。グレたりしないさ」
「うぅー、調子のいいこと言っちゃってー。まったくー。……ん? これなにかな?
……お兄ちゃん、何かあったー」
ジュリが青い石が大量に入った袋を差し出してくる。どうやら宝石のようだ。
ジュリ曰く、寝床と思われる毛皮の下に、掘った様な痕があり、掘り返してみると出てきた物らしい。
土の下に隠してあったことを考えると、すくなくともガラクタではないだろう。
そんな思いと共に、鑑定スキルを使用する。
・弓技術石 ランクA
説明:祈りを捧げると弓技術が得られる石。
使用制限:1人1個
っ!! ランクA。それに技術を得られるって、これすごい物だろう。
それがこんなにゴロゴロと。
「ジュリ、大当たりだ。よくやった」
「んー? そうなの? えへへ」
うれしそうなジュリを尻目に次々と残りの石を鑑定していく。
見た目はすべて同じに見える石でも得られる技術が異なるようで、中にはランクSのものまで混じっていることがわかった。
念の為にと、他の場所にも何か隠されてないか探したが、それ以上は何も出てこなかった。
結局見つかった石は全部で14個。ランクAが12個で、ランクSが2個だ。
ランクAは、剣術が7個、弓術が5個、ランクSが付与と召還が1個ずつである。
「鑑定終わったぞ。どうやら、技術が得られる石なんだそうだ。ランクはSとA」
「へー。綺麗なだけじゃないんだね、この石。それでAとかSってどのくらいすごいの?」
鑑定スキルについては、神のことを伏せて、妹的存在のジュリと姉的存在のハウンさんには話してある。
神託のスキルなので、トラブルを防ぐためにも隠すべきだとは思うが、2人なら大丈夫だろうと思えた。
それに2人に対し、隠し事をするのが何と無く嫌だった。
「僕の感覚からすると、Sが最高ランクだと思うぞ。だから、神器レベルってとこだな」
「欲しい!! それがあれば勇者様になれるかな!!」
ジュリの年相応に勇者にあこがれがあるらしい。
この世界の場合は、実際に魔王が居て勇者が居るので、日本ほど幼いとは感じないが、可愛らしいことに変わりはない。
とりあえず、勇者は置いとくにしても、使うべきだろうな。
使用制限って項目が引っかかるが、ランクSなら酷いことにはならないだろう。
鑑定結果を見ても危険そうな感じはしないしな。
むしろ、使わないって選択肢はないだろう。
だって、S技術だよ? これ、どう考えてもチートじゃん。夢にまで見たチートだよ!!!!
ってな訳で、神に頼らず、自力でチート石を手に入れた!!!




