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<19>

 何が起こったのかわからず、ぼんやりとしながら、僕はジュリの指示に従った。

 そして、現在、家の囲炉裏側に座り、ジュリとお茶を飲んでいる。


「落ち着いた? おにいちゃん」

「ん? あぁ。落ち着いた迷惑をかけた」

「それじゃぁ、確認ね。まず、家周辺には悪い人がいます」


 明日の献立を確認するかのように平坦な口調で紡がれたジュリの言葉は、一瞬にして僕の脳を刺激した。


「っ!!! そうだった、ジュリ、逃げないと!!」

「いいから、落ち着いてお兄ちゃん。じゃないとまたキスするんだから」


 頬を赤く染めながらも力強く宣言した彼女の表情は、どことなく決意が表れているように見える。


「…………」


「それじゃ、確認の続きね。その悪人のうち2人をお兄ちゃんが退治してくれました」

「そう、僕は人をころし――」

「その前に、あの人達は、この家を盗もうとしていた盗賊さん。盗賊さんは生死を問わず捕まえなきゃいけない」

「……前に村長がそう教えてくれたな」

「うん。だから、お兄ちゃんは人を殺した訳じゃない。盗賊さんを捕まえただけ。わかった?」

 

 かなりの詭弁だろう。相手が誰であろうが殺しは殺しだ。


 だけど、僕には反論する事が出来なかった。


 ジュリが文字通り身を挺して取り成してくれたのだ。無下に出来るはずもない。

 そして、自分が予想以上に焦っていたことも理解した。


「……わかった。取り乱して悪かった」


 僕の言葉に対し、嬉しそうに笑って見せたジュリが、お願いごとをするように両手の合わせ、上目遣いで言葉を紡ぐ。


「それでね、お兄ちゃん。これからのことなんだけど。私達2人で悪人さん達に奇襲をかけようと思うの」


「……どうしてそうなったのか教えてくれるか?」

「あの人達は危ない人だと思うの。

 村が見つかったら村の人に被害が出ると思う、だから、2人でやっつけちゃわない?」


「……それはダメだ。危険すぎる。だから、ジュリが村に――」

「だーめ。そんなこと言って、お兄ちゃん1人で行くつもりでしょ。

 それに、村で弓が上手なのって、お兄ちゃんの次私だよ?」

 

 ジュリの言うことは何1つ間違っていないと思う。


 彼等は恐らく盗賊の類だろう。

 なぜこんな辺境の地までやってきたのかわからないが、家を見たときの反応や武器の手入れ具合をみるに、盗賊以外ありえない。


 村の戦力で1番弓の扱いがうまいのが僕で、次がジュリ。年齢さえ考慮しなければ、僕達で向かうのが妥当である。


 言っている事は間違っていないし、彼女には一貫した決意を感じる。

 

「……わかった。2人で行こう。けど、ジュリは僕のバックアップだ。

 これ以上は譲歩できない」

「うん。ありがとう、お兄ちゃん」

 

 勝てる言葉が見つからなかった。



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