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とりあえず泣いた。
なにも手につかず、涙ばかりが溢れ、気がついたら眠りに落ちていた。
目を開き、あたりを見渡しても、じーちゃんばーちゃんは居ない。
夢であれば良いと目を閉じて、また開いた。
囲炉裏そばの使い込まれた座布団、火の消えたかまど。家全体がどこか寂しく見える。
それでも一晩泣き腫らしたこともあり、昨晩と比べれば落ち着いていた。
なぜ10年なんだとか、2人のために出来たことがあったのではないかなど、色々と頭をよぎったが、消え行く前の2人の笑顔を汚すことになると思い、それ以上考えることはやめにした。
じーちゃんもばーちゃんも楽しかったと言い、前を向いてあるくことを望んでいた。だから僕は歩いていかなくてはいけない。
そう思えるくらいには落ち着けた。
そして、4人分用意してあった意味を理解した。
ばーちゃんは、僕が1晩中泣くことを予想していたのだろう。
余分な1人前は僕の朝ごはんだった。
大好きだった卵焼きに、じいちゃんがとってくれた肉料理。じっくりと味がしみこんだ煮物。
泣くのはこれで最後だからと自分に言い聞かせ、ゆっくりと噛み締めた。
昨晩はあんなにおいしかった、僕の好きな料理達。
今日はあまり味がしなかった。




