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~ナーガとマーヴェル~

~ナーガとマーヴェル~


 そろそろ書店のレシピ本がつきかけてきた。だから最近色んな店で一旦食事を取ることにしている。


 癖があるものもあるが、結構おいしい。なるほど。こういう味を再現するのも一つだなと思っていた。店は行列ができる店がある。一つにラーメンというものがあった。これがかなりおいしいのだ。


 魚介、とんこつ、鶏がらスープ。色んなパターンがある。そして、中でもいつも行列ができている店があるのだ。


 こっそり夜にアランの街に忍び込んでみたのだが、夜でも行列だった。並んでいる時にキール様から連絡が入ったらどうしようか悩みどころだ。


 だから、あまり並んでいない店に入ったのだがいまいちの味だった。やはりあの行列の長さの分だけおいしいものがあるのかもしれない。


 人間というのは食に対してものすごい探究心があるようだ。最近部下も舌が肥えてきたのかはじめほど感動しなくなった。


 あの時のスパゲティの方がうまかったとか、今日の唐揚げは中がちょっとだけ生だったとか言ってくる。


 ついこの前まで鶏など生で喰っていたヤツが何を言っているとつっこみたくなる。だからこの余興も早めに切り上げて買い物前に店に入って、料理の研究をすることを日課に組み入れていたのだ。


 だが、今日は遠くからものすごいスピードで白い物体がやってきたのだ。しかも感触からあれは純粋オリハルコンの塊だ。あんな重量のあるものを飛ばせるやつはそう居ない。われわれ3貴族でもきびしい。あんなスピードで飛べるのはキール様かあの勇者くらいだ。だが、二人ともその該当には当たらない。まさか勇者のようなものがもう一人居るとでもいうのか。


 そう思っていたら、城壁に白い鎧を身に着けた若者が立っている。しかも剣をこちらに向けているのだ。


 あれはまずい。絶対にまずに。こんな遊び感覚でどうにかできるものじゃない。だが、相手は人間だ。いや、あの黒い髪、紫の瞳。まるで魔族じゃないか。真剣にならなければ。


 距離を取る。まずは上空で旋回だ。


 首を上に向けて飛び上がる。だが、その横にきっちり追いついてくる。


「おい、なんでこんなところで遊んでいるんだ?」


 そう言われた。遊んでいるだと。ふざけるな。スピードを上げる。逃げ切れない。いや、白い鎧のやつはいきなり方向を変えてぶつかってきた。


 痛い。というか、これやばい感じだ。


「こっちは早く日常に戻りたいんだ。折角リネとうまく話せるようになったんだからな」


 リネって誰だよ。というか、人間の考えることはよくわからない。


「おい、話せるのはおやじから聞いているんだ。会話する気がないならこの剣で切り刻むぞ」


 そう言って切っ先を突き立てる。普通に竜鱗が削られる。わかったよ。会話するよ。


「ああ、話せる。本当はこの街に用があるんだ」


 まあ、言って伝わるかわからないが。


「だったら人に変化してくればいいだろう」

「それだと時間がかかりすぎる」


 本当にキール様はきついんだ。ちょっと遅れたら本当にまずい。あ、どこからか鐘の音がする。今買い物に行かないと本当にまずいことになる。


「なあ、人間。ちょっとだけ時間をくれないか。後で説明する」


 私はそう言って一旦人型に変化する。そうして、一気に地上にめがけて加速する。だが、この白い鎧に身をつつんだ人間も同じスピードでやってくる。


「おい、どこに行くんだ」


 仕方がない。説明するか。


「買い物だ。タイムセール前に行かないと混雑しすぎて買えなくなる」

「は?」


 やっぱりわかってもらえない。地上に降り立つ。大丈夫誰にも見つかっていない。


 ドスン。


 ものすごい音がした。白い鎧の人間だ。あれはオリハルコン製か。だとしたらやたらと重いだろう。なんであんなもの身に着けているんだ。罰ゲームか何かなのだろうか。あ、そういえば、昔勇者もあんなかっこしていたな。


 人間界のルールなのだろうか。まだ知らないルールがいっぱいあるのだろう。気にせず走って行かねば。もう今日買う商品の店は決めている。


 まず、ホワイトアスパラはこの先にある店がよい品質だ。ばっちり余っている。次に魚だ。鮮魚は鮮度が命だ。うん、いい色をしている。さらにレタス、トマト。野菜は色をみて買わないといけない。


 うん、これなら大丈夫だ。後はじゃがいも。そう言えば、ここ最近このじゃがいもを広まってきている。これはサラダにしてもおいしいのだ。そうだ、マヨネーズがもうそろそろ切れるのだ。この前買った安いのは不評だったからちゃんと見極めないといけない。これなんかよさそうだ。


 買い物に夢中になっていたら横に白い鎧の人間がいつのまにかいた。


「なんでこんなに買い物をしているんだ。魔族はエターナルからエネルギー取れるだろう」


 こいつ詳しいな。ひょっとして魔族なんじゃないのか?聞いてみるか。


「おい、お前ひょっとして魔族か?」

「ふざけるな。俺は魔族じゃねえ。この髪と瞳のせいで、後出生のせいで言われるが、俺は魔族じゃない。俺は認めない」


 なんかよくわからない。だが、こいつの身体からは不思議と魔族の匂いもするのだ。よくわからない。まあ、あの勇者が身に着けていた鎧とかを普通に装備しているのだ。普通の人間であるはずがない。


「わかったよ、これはキール様とそのお気に入りの人間の分だ。後は私と部下の分。最近こう料理に嵌っているのだよ。はずかしながら。だからお忍びで買いに来ている」


 はじめは興味がなかったのだ。だが一回作ってみるとこれがなかなかおいしいのだ。そして料理は奥が深い。人間はなんてすばらしいのだ。私は最近特に思う。私の部下なんてもう人間を襲うのは辞める。そう、こんなおいしいものを作れるのなら一緒に学びたいと言っているのだ。白い鎧の人間が言う。


「なら、もっと目立たないようにしてこの街に来いよ」


「だから人型より竜の方が早いんだ。それにこれから買うアイスとかは本当に時間との勝負なんだ」


 わかっていないな。アイスは本当に時間が立つと厳しいんだぞ。白い鎧の人間が言う。


「だったら、竜のままで透明になればいいだろう」


 透明?そんなこと出来るのか?やったことないぞ。


「透明は無理だろう」


「だったら、空色に擬態して見た目でわからないようにして近づけばいいだろう。そしたら騒ぎも起きない」


 なるほど。それならばできそうだ。だが、いいのだろうか。疑問がある。聞いてみるか。


「あの城壁にいる人間たちは私と戯れるのを楽しんでいるように思えたが。あれは娯楽になっていないのか?そういうものだと思って気を使っていたのだが」


 あの盛り上がり方はおかしい。まあ、勝ってはいけないのはなんとなくの空気でわかる。白い鎧の人間が言う。


「あのな。そんなこと気にしなくていいんだ。お前が竜の状態でいるから怖がってこの街から離れたヤツもいるんだ。だから明日からはもうあれをやらなくていいからな」


「わかった。じゃあ、明日からは空色に擬態して街に来るとしよう。ありがとう。恩に着る」

「いいってことよ。ああ、それとあの暗黒の森の徘徊もやめてほしいんだけれどどうにかならない?」

「それは無理。あれはキール様が楽しまれているから」


 キール様に進言なんてできるわけがないだろう。何を考えている。ひと睨みでこっちはどれだけ死にかけると思っているのだ。白い鎧のやつが言う。


「なら、仕方ないか。一緒にこれからついて行く。連れて行け」

「無理だ」


 そんなめんどくさいことはしたくない。というか、キール様の機嫌が確実に悪くなりそうだ。


「連れて行け」


 そう言って白い鎧の人間は睨んできた。魂が削られそうだ。この感覚まるでキール様ににらまれたみたいだ。頷かないと殺される。


「わかった。ついてこい」

「ありがとう」


 死ぬかと思った。


 とりあえず、買い物も終わったので飛び立とうとした。


「ちょっと待て、迎えに行く相手がいる」


 そう言うとものすごいスピードで城壁に向かう。かなり早い。あれは私が竜になった時よりも早いのではないのか。あんなに重いおもりのような鎧を身に付けているにもかかわらずだ。そして、戻ってきた。なんだか人間の女性を抱きかかえている。


「お待たせ、じゃあ行くぞ」

「ああ、わかった」


 なんだか人間の女が何やら叫んでいるがもう時間がない。アイスが溶け始めているのだ。急がなければ。これ以上時間をかけると本当にまずい。私は全速力で飛ばした。




~ウォーレンと側近~


 迂回をしているはずなのにスムーズに行き過ぎる。いや、軍を分けたはずなのにしかもこちらは少人数であったはずなのに行く先々で兵が増えるのだ。だが、誰でもいいと言うわけでもない。


 そう、こういうヤツが一番めんどくさいんだ。


「ウォーレン様。私は常日頃からあなた様の元で働いたいと思っておりました。参戦させてください」


 こいつの名前は覚えていない。だが中央で王にべったり張り付いていた諸侯の一人だ。


「これはほんのお近づきのしるしです」


 そう言って何か渡してくる。大きな箱だ。多分中身は金か宝石だろう。とりあえず、この手を出すやつにはろくなやつがいない。こいつの所有する都市はすでに調べさせている。「失礼します」


 そう言ってアベルがやってきた。当然移動をしているから執務室なんてない。天蓋があるテントだ。ただ、外壁もあり周りとは違う作りにしてくれている。


 こだわりはなかったのだが、一目見て違いがわかるテントでないと見間違えてしまうとアベルが言ったからこのテントを使っている。


 まあ、毎日移動をしているから仕方ないのかもしれない。何か目印が必要なのだろう。


 そんなちょっと抜けているアベルが私のもとにそっとやってきて耳元でささやく。


「不正の証拠はすべてそろいました。後、後任の候補も連れてきておりますがいかがいたしましょうか?」

「通せ」


 入ってきたのは若い男性2人と女性だ。女性は若そうだが年齢不詳だ。意外と同い年くらいか、ひょっとしたら年上かもしれない。あきらかに仕事は出来そうな雰囲気がある。


 名前もわからない諸侯のおっさんが言う。


「なんだお前たちは。ここはお前たちが来るような場所ではないぞ」


 そりゃ顔見知りだろうな。あんたが排斥した勢力の者どもだ。


「いえ、彼らは私の客人です。そう、新たに加わった勢力を誰に治めてもらうのが良いのか話したいのですよ。アベルの推薦者はこの3名なのだな」


「はい」


 なんだか諸侯のおっさんがわなわな震えている。


「わしの、わしの街だぞ」


「いえ、街はあなたのものではない。民のものだ。勘違いをするものはその自治を任せるわけにはいかない。すでにお前の家財は押さえてある。それと牛耳っていたギルドも再編する。お前はもう諸侯でもなんでもない。ただの人だ。それともう一つ。今までの横領の証拠もつかんでおる。かなり私服を肥やしていたみたいだな。牢にでも入ってしばらく頭を冷やすがよい」


 そう言うと兵士がそのおっさんを連行する。


「さあ、皆さん。この街をよい街にして、民が暮らしやすいようにしてください。お願いします」


 僕は頭を下げた。実際あんな不正だらけの賄賂で生き残っている奴が治める街がいいわけがない。それに民が苦しんでいる。目の前にいる3人が威勢よく「はい!」と言った。


「自治は3人の中から一人を選出してくれ。うち一人はこのまま軍に残ってついてきてほしい。何かあれば事の大小にかかわらず報告すること」


 そう言うと女性が手を挙げてこう言った。


「私が行軍に参加します。私の名はミレーユ。街の自治や運営はこの二人、リムドとアインが居れば大丈夫です。彼らは優秀です」


 まあ、彼女が付いてくるというとは思っていなかった。自治は地元のものに任せるのが一番だ。


 よほど人がいない限りその中から選び商人の組合を広げていき管理する。軍事で管理するのではない。商品とお金の流れで管理をするのだ。


 武力で国を支配するのはもう古い。僕はそう思っている。いや、言い訳だ。僕は戦いたくないんだ。


 戦うとしてもできるだけ被害のない戦いをしたい。もうかなりの領土の支配構造がかわった。不正だらけだった諸侯連中はかなり更迭してきている。後は中央に残っている宦官くらいか。


 まあ、実際王もかわいそうな人だ。一人息子は事故でなくなり、孫娘は行方不明。そういえば、今の王が亡くなった場合どうなるのだ。血族者が引き継ぐのであれば伯父がいたはずだ。


 そういえば、その領土は王都のすぐ近くだ。おそらくそこが決戦の場になるかもしれない。


 王都は防衛するつくりではない。物流拠点のため開かれているからだ。城門も多い。通りもすべてが白亜の宮殿に向かっている。


 おそらく手前のポナムが激戦区になりそうだ。城壁も高い。なんとかうまく被害少なく勝てないだろうか。


 そう思いながら進軍を進めた。次は小さな街だ。湖畔の街リュムーナだ。


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