りゅうくんはうみへいきました
りゅうくんは、綺麗な緑色の小さな竜の子供です。
りゅうくんのお母さんは、白い色の空を飛べない、きれいな竜です。いつも畑で働いている、働きもののお母さんで、りゅうくんのことが大好きです。
りゅうくんのお父さんは、青い色の空を飛べるスマートな竜です。いつも、外で、働いてたり、そうでなかったりしている、ちょっとふらふらしていて、やっぱりりゅうくんが大好きです。
りゅうくんのお婆さんは、紫色の空を飛べる小さなかわいい竜です。旅行が大好きで、いつも世界中を飛び回っています、そして、りゅうくんのことが大好きです。
りゅうくんのお爺さんは、銀色の空を飛べる大きく立派な竜です。けっこう忙しく仕事をしていますが、同じくらい遊んでいます、人と遊ぶのも仕事のうちなんだそうです、もちろんりゅうくんのことが大好きです。
今日は、このりゅうくんといっしょに、5人で海にいくことにしたのでした。
りゅうくんは、海へ行くのは初めてでした。わくわくして前の夜は大騒ぎです。
とてもとても暑い夏のある日でした、お母さんと、お父さんと、お婆さんと、お爺さんのお休みの日が合いましたので、近くの海岸まで、ひとっとびです。
りゅうくんは、まだ飛べないので、大きな銀の竜のお爺さんの背中にのせてもらいました。
お爺さん竜は、とてもとても大きいので、お母さんもお婆さんも、乗せてもらっていました。
お父さんものせてもらいたがっていたようですが、さすがに自分で飛びなさいとお爺さん竜に言われてしまいました。
楽できると思ったのになと、お父さん竜は残念そうです。
りゅうくんたちは、空の道を通って、まず、南へと向かいました。周囲には、夏の長い休みを満喫する空を飛ぶ竜や、翼をもつ人たちがびゅんびゅんと飛んでいます。
また、お休みの日でも働いている、竜の人たちもいました。大きな荷物を運んでいる、あの黄色い竜は、これからどこへいくのでしょうか?
綺麗な緑色の大きな木々(きぎ)の枝の下、トンネルのようになっているそこを、お爺さん竜はおもしろがってくぐって飛びます。りゅうくんは喜んで笑っています。
お婆さん竜は、こらこら危ない、とお爺さんを叱っています。お母さん竜は少し目を回しているようです。
お父さん竜は、うん、いっしょに乗ってなくてよかったなと思いながら、意外と安全に飛んでいます。
南へ一同が進んでいると、潮の香りが漂ってきました。りゅうくんは、なんか変なにおいがする!って大騒ぎです。
お母さんが、それは潮の香りですよ、というと。ふーん海ってくさいんだねとりゅうくんはいいました。
まあ、このにおいが嫌いな人もいますよ。とお父さんが言います。でも、そのうち慣れて気にならなくなります。
海には、防波堤や港がありました。大きな船や小さな船が、波止場に止まっています。ゆらりゆらりと波に揺られています。
りゅうくんは海に浮かぶ船を見るのも初めてなので、夢中でみています。
お爺さんは、海にそって西へと進路を変えました。海沿いにくねくねとした海岸線にそって、飛んでいきます。
海岸では、もう人が泳いでいたり、ジェットスキーなどで遊んでいました。
りゅうくんはあそこで遊ぶの?とききます。
お爺さんは、もう少し先に海水浴場があるから、そこで遊ぶんだよ、とこたえてくれました。
お母さんも、お父さんも、海に行くのはとても久しぶりでしたので、道案内はお爺さんまかせでありました。
そうです、お母さんも、お父さんも、旅行とかあまりしない竜だったからです。
でも、りゅうくんが喜こんでくれるなら、 もう少し、りゅうくんが大きくなったら、いっしょにいろいろな所へ行くのもいいですね、と夫婦でたまに話し合っています。
海水浴場につきました。お爺さんと、お婆さんは、近場だから、りーずなぶるな人たちがくるのよね、そうだね、といいながら、日蔭のある休憩スペースをお店のひとから借りて、荷物をおきました。
そして、お婆さんは、いまさら近場の海で遊ぶような気も起こらないから、ここで荷物番をしてますよ、といいます。朝早く起きてお弁当を作ったので眠たいし、少し眠りますわ、といいます。
なので、お爺さんと。お母さん、お父さんと、りゅうくんが水着に着替えて、海で遊ぶことにしました。りゅうくんは大はしゃぎです。お母さんは久々(ひさびさ)に新調した水着を着てみました。
かわいいですよ、とお父さんがほめると、ありがとう、と喜んでいます。この2人、いつまでも仲がいいのですよ。
はやくはやくと、りゅうくんがみんなをせかします。まてまて、このゴムボートをふくらませてからな、とお爺さんは、ふう、と、りゅうくんよりだいぶ大きなゴムボートに息を吹き込んで膨らませます。
おおきい、おおきい、とりゅうくんははしゃいでいます。お爺さんは、おおきなしゃれた麦わら帽子に、サングラス、という伊達男ふうのいでたちで、にやりと笑いながら、ゴムボートを海まで運びます。
りゅうくんもついていきますが、うっかりはだしのまま砂浜に出てしまいました。あつい!とりゅうくんは、おもったより熱かった砂に驚いて飛び上がります。
ああ、熱いから、ビーチサンダルをはいたほうがいいよ、とおくればせながら、お父さんが言います。早くいってよね、とりゅうくんはなきそうです。
りゅうくんは、海に入ると、そんなやりとりもわすれてしまっています。とても暑い日でしたので、海の水の冷たさがちょうどいいみたいです。波打ち際でサンダルを脱いで、でもおそるおそるりゅうくんは足を海に入れていきます。
なんか、足の下がむずむずするぅ。とりゅうくんは、波にさらわれる砂を感じています、そして、足の着くところでじゃばじゃばと海の中を歩いてみています。
あっ、波に足をすくわれて、こけてしまいました。海の水をすこし飲んだみたいで、からいー、と泣いています。うん、かわいいですね。
そおれ、と、お爺さんが、りゅうくんをゴムボートに抱えてのせます。りゅうくんはきゃっきゃっと楽しそうに笑っています。
でも、水しぶきが顔にかかると、なんとも言えない表情になってしまいます。からーい。どうやら、口のなかに、また、海水がはいってしまったようです。水が塩辛いというのが、すごくびっくりすることのようです。
あと、目に水が入るのを嫌がって、きゅっきゅっと、すぐにお母さんの水着の上にきたシャツに顔をうずめてふきにいっています。ああ、かわいいですね。
お父さんは、くるりとまわりをみわたして、きわどい水着の女の子を見つけては、いいものみたなー、といって、お母さんにあきれられています。
でも、りゅうくんともいっしょうけんめい遊びます。ゴムボートをひっぱって沖まで泳いでみたり、りゅうくんと水をかけあったりしています。
もっとも、りゅうくんは、海の水で顔が濡れるのが、いやなようで、かけられると、すぐにおこったり、泣いたりしますが、それもかわいいです。
うみってひろいねー。おとうさん、うみで泳げるの?
もちろんだよ、泳ぐのは得意なんだ、でもあまり好きじゃないだよね。
?よくわからないから、ほかの国まで泳いで?
りゅうくん、じつはまだ水を顔にかけられたことおこっていますか?
ううん別に?そうだ、お父さん海の中にどれだけもぐってられる?
けっこう長くもぐれるよ?
じゃあ、明日までもぐってー。
しんじゃうから!
お母さんは、りゅうくんに、いろいろな海藻を見せています。これはわかめかな?こんぶかも?ええと確か正式名称があったはず?うーん、昔は一通り調べてみたんだけどねー。
どういうこと?りゅうくんはお母さんににたずねます。
昔ね、子供の時の研究で、海藻を天日干しにして、標本をつくったことがあるんよ。なつかしいなー。
ふーん、で、食べたの?
いや、食べんし。食べたら、お腹いとうなるし。
りゅうくんも、きになるんやったら、あとで調べていみるといいかもね?
うん。で、これ、食べれるの?
いやだからね……。
お母さんは、いつも畑で、薬の材料になる、草花をそだてている、薬屋さんですので、実は、草花には詳しいのですが、海藻はちょっとジャンルが違うようです。
お母さんは、りゅうくんが、なんにでも興味をもつ、賢い子になってくれればいいな、と思っています。
なので、機会をのがさないで、こういう話をいつもしてあげるようにしています。
お爺さんは、りゅうくんを引っ張りまわして遊んでいます。ゆらゆらとボートを揺らして、りゅうくんを楽しませています。
そして、時折、りゅうくんを見て、疲れてそうだなと感じると、砂浜で休もうね、とうながします。
お父さんは、そのあいだ、ひさしぶりに思いっきり泳いでいました。沖の方で、波しぶきをたてて爆走しているのがそれです。
泳ぐのが好きじゃないのに、すごく泳げるのね?と自分はかなづちギミである、お母さんがいいました。
うん、どのくらい今、泳げるのか、たしかめてた。これなら、今でも、10Km単位で泳げそうだね。
お母さんは、しんじられない、という顔です。
おなかがすいたので、お昼です。
お婆さんが、握ってくれたおにぎりに、近くのお肉やさんから買ってきた、から揚げに、卵焼きに、ハンバーグです。全部りゅうくんの好きな食べ物です。
りゅうくんは、海で遊んで、お腹がすいたのか、夢中で食べています。
お爺さんも、お母さんも、お父さんも、おいしい、おいしいと、ぱくついていて、やまのようにあった、おにぎりやらは、あっというまに食べきってしまいました。
おいしかったです、ごちそうさま。みんなお婆さんに感謝して、言いました。おばあさんは、おそまつさまでした、とにこにこ笑いながら、嬉しそうに、いいました。
食事のあとも、少しだけ海で遊びました。
最後に海の家に行きました、りゅうくんは、大きないちごのかき氷を食べて、満足でした。
また来たい、とりゅうくんはいいました。
そして、りゅうくんは、帰りのお爺さん竜の背中の上で、疲れてぐっすりと眠ってしまったのでした。かわいいねがおでした。
次の日に、なんだか、りゅうくん、つかれて熱がでてしまって、たいへんでした。
でも、楽しかったですね、またみんなで、海へ、いきましょうね、りゅうくん。
このお話はフィクションですよ。
おしまいです。