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Original Heart  作者: 美紅
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第14話 新たな友達

 シェリエルさんに挨拶をし、ジョアンナさんに再び絡まれた後、俺は女子寮を後にした。

 つか、ジョアンナさんは本当に俺に何か恨みでもあるんだろうか?メッチャ絡んでくるけど……。

「それより、次はローランドか……」

 なんと言うか……本当に面倒な奴等と組むことになったなぁ……。ローランドも取っ付きにくそうな奴だったし。

 でも、そう言う変わった奴は中学の時にも相手にしている。

 広樹も覚えてるだろうけど……あいつ等元気にしてるかなぁ。

 そんな事を思いながら歩いていると、男子寮に戻って来た。

「そう言えば……男子寮って管理人がいないんだっけ?」

 女子寮程、男子寮は厳重に警戒されていない。まあ、男守っても仕方が無いよな。男尊女卑とかそんな考えじゃなくても、女子には優しくしないと。

「ここがローランドの部屋か……」

 もう外は暗くなりつつあり、中には学園の学食を食べるために、食堂に向かう人たちもちらほら見かけた。

「よし……」

 俺はドアをノックする。

 ………………。

 …………。

 ……。

「……?」

 しかし、部屋の中からは何の反応も見られなかった。

「あれ?もう寝てるとか?」

 外が暗くなりつつあるとは言っても、未だに5時半ごろだ。寝るには早過ぎね?

「……あ、学食を食べにでも行ってるんだろうか?」

 その可能性の方が、部屋で寝ているというよりは高い気もするなぁ……。

「まあ、行くだけ行ってみるか」

 そう決めると、食堂へ向かって歩き出す。

 食堂は学園の校舎内にもあるが、男子寮女子寮にもそれぞれ食堂が存在する。

 基本的、学園の食堂で食べるのは、昼休みとかそれくらいで、夕食や朝食は寮の食堂を利用する。

 なので、最初は寮の食堂に行って、いなければ学園の食堂を見て回るつもりだ。

 食堂までの道を特に何を思うことなく進んで行き、辿り着くと辺りを見回した。

「うーん……いないなぁ……」

 結局寮の食堂にローランドの姿は見られなかった。

「……面倒だけど、一応学園の食堂も見とくか」

 そう言うと、俺は寮の食堂を後にして、学園の食堂へと向かった。

 学園に向かうので、必然的に寮から出る事になる訳だが……この学園は広いと実感する。

「一々こうして学園に行くの面倒だよなぁ……」

 ちなみに、俺は一切使えないが、転移魔法を使う事が出来る人間は結構いる。

 ただ、その人達は親父やクロムみたいに地球から次元を超えてクラフェイアまで転移するなんて離れ業は出来ない。

 それでも、寮から移動する分には転移魔法を使ってもさして苦にならないんだろうけど、学園の校則に『許可なく魔法、古代遺物を使用する事を禁ず』なんて言うモノがあった。

 まあ、体育館でのあれは、ボルティーナ先生が許可してたから大丈夫だったっぽいけど。

 そんな事を考えながら移動していると、何時の間にか学園の食堂に到着した。

「……あれ?ここにもいない?」

 学園の食堂を見回してみるも、誰もそこにはいなかった。

「やっぱりいないよなぁ……つかどこにいるんだ?」

 この広い学園を探すのは流石に面倒だ。大体見つけられるのかさえ分からないのに。

「仕方ない、今日はもう諦めるか」

 明日学校に言った時にでも話しかければ良いか。どうせローランドに至っては隣の席だし。

 そう思い、学園の食堂を後にし、外に出た。

「……ん?」

 学園から寮まで道のりを歩いていると、なにやら「ビュン!ビュン!」と言う何かが風を切る音が聞こえて来た。

「何だ?」

 あまりのも不自然な音なので、誰かが何かをやっている音だろう。

 しかし、この時間に一体誰が?

「……見てみるか」

 俺は風を切る様な音を辿り、俺は学園の裏に向かった。

 校舎の裏は、意外と木々が多く、ちょっとした冒険をしている気分になる。

「ここら辺から音が聞こえてくるんだが……」

 俺は音が近づくにつれて、辺りをキョロキョロと見まわしながら音の主を探す。

「ん?……あ」

 探していると、校舎の丁度裏側にある木々の中でも一部空き地状態になっている所で、音の主を見つけた。

「ふっ!ふっ!」

 音の主は――――ローランドだった。

 何をやっているのか気になり、俺は静かに近づく。

 すると、ローランドが何をしているのか見えて来た。

「え……」

 ローランドは、木剣を振っていた。

 それも、素人の俺から見てもとても綺麗な剣筋を描いていた。

「フッ!……ふぅ」

 最後に一段と気合の入った一筋を振り下ろすと、静かに息を吐き、ローランドは剣を下げた。

 終わったのか?とも思ったが、そうでは無く、ローランドは休憩もそこそこにして、再び剣を構えた。

「…………」

 しかし、ローランドはすぐには動かず、静かに瞑目している。

 そして――――

「――――ッ!」

 ローランドは舞った。

 綺麗な剣筋を描き、額から流れる汗すら輝いて見え、思わず魅入ってしまった。

 ローランドの剣は、空を切り裂き、宙に舞い、そして……疾かった。

 恐らく、空想上の敵と戦っているのだろう。

 ローランドの剣は、『蝶のように舞い、蜂のように刺す』、を体現しているかのようだった。

 しばらくの間、縦横無尽に動き回っていたローランドだったが、再び最初の位置に戻ると、剣を正眼に構え、瞑目して剣を下ろした。

「……」

 そんなローランドに、俺は――――

「スゲーな!?お前!」

「!?」

 拍手しながら近づいた。

 ローランドは、突然現れた俺に目を丸くして驚いている。

「いやあ……お前本当にスゲーな!俺剣術とかド素人だけど、今のが凄い事位分かるぞ!」

「……」

 俺がどんどん話すのに対して、ローランドは黙ったままだ。

「今のってやっぱり特訓?」

「……ああ」

 やっとしゃべってくれた。

「ほ~……いや、俺何も出来ないから純粋にお前が凄いと思ったわ。魔法も古代遺物も使えなければ、体術や格闘技も何も習ってないからなぁ。自主練しようにも、どうしようもないんだけど」

 次々と言葉を発する俺に、心なしかローランドは戸惑っているようにも見える。でも、それが気にならない程さっきの動きは感動的だった。

「あれがグラントーク家の剣術ってヤツなのか?」

「……ああ。正式名称はグラントーク流守護剣術だ」

「へぇ……」

 俺がローランドの言葉に頷いていると、今度はローランドから口を開いた。

「……初原……だったか?」

「ん?一真で良いよ」

「……そうか。では、一真。お前はどうしてここに?」

「あ、忘れてた」

 ローランドの質問で、俺は当初の目的を思い出す。

「いや、実はローランドを探してたんだよ。そしたら、なんか風を切る音が聞こえてきてさ。その音を辿ったらローランドがいたってわけだ」

「……そう言う訳か。だが、何故俺を探していたんだ?」

「んなもん……少しでも一週間後の決闘について話し合っておくために決まってんじゃん」

「……そうか」

 …………あれ?

 俺は内心首を傾げた。

 ルルは、決闘の話しをしに来たと言ったら面倒くさがっていたが、ローランドは見た感じあまりそう言った雰囲気を出していない。……まあ上手く隠してるのかもしれないけど。

「えっと……それで、一緒にどうするか考えてくれるか?」

「……俺は別に構わないが……ウェルムクロは?」

「ああ……何か相談に行ったら、追い返されてしまった」

「……ふむ」

 何かを考えるような仕草をするローランドを眺めていたが、どうしても気になるので思い切って聞いてみる事にした。

「そう言えば、ローランドは話しあいに参加してくれるんだな」

「……やると決まった以上は、勝てる勝てないにしろ本気でするつもりだ」

 うわー……ルルとは真逆で真面目や。口数が少ないのは同じだけど。

 そんな事を思っていると、ローランドは途端に気まずそうな表情になる。

「どうした?」

「……いや、その……」

「?」

 俺が首を傾げていると、ローランドはやがて息を一つ吐くと恥ずかしそうに言った。

「……本気でやると言うのも一つの理由だが……それ以上にチームで何かをやると言った事が初めてで……」

「…………」

 これは……想像以上にコミュニケーション能力低いな。

「……それで、こうして長い間話しているのも初めてなんだ。それで……どうすればいいのかよく分からないんだ」

 なんかもう……可哀そうになって来た。

「え、てか俺こうして普通に話してるけど、友達とかいないのか?」

「……俺は世間では落ちこぼれとして知られているからな」

 なんか地雷踏んでしまった!

「そ、そうか……」

「……」

 俺のとんでもないミスにより、気まずい空気が流れる。

 内心自分のやらかしたことに頭を抱えていると、意外にもローランドから声をかけて来た。

「……その……一真」

「へ?な、なんだ?」

 俺は今の出来事があるので、思わずどもってしまった。

「……その、だな……おかしな頼みだとは思うのだが……」

「?」

 ローランドは途端に木剣を忙しなく動かし、なにやら急に歯切れが悪くなった。

 すると、やがて決意を固めたかのような表情になり、俺にこう言った。

「……俺と……友達になってくれないか?」

「ん?いいよ」

 俺はごくあっさりとそう答えた。

「!?ほ、本当にいいのか?」

「うん。断る理由ないじゃん」

 逆に言えば、何を言い出すのかと思った位だしな。

「……自分で言うのもなんだが、俺は落ちこぼれだぞ?そのせいで友達もいない。……まあ、だからこそ友達が欲しいと思っていたのだが……」

「え、そんな事言ったら俺ってどうなんの?」

「む?」

「魔力ゼロ、適性値ゼロ」

「……………………すまん」

 今までで一番長い沈黙があったよ!?あとその『すまん』が惨めな気持ちになるからヤメテっ!

「……しかし、本当にいいのか?」

「だからいいって」

 俺がそう言うが、ローランドはなにやら納得出来ていない表情になる。……元はと言えば、ローランドから持ちかけて来た話しだよね?何でそんなに否定的なの?

「……すまない。友達がいないので、どう反応すればいいのか分からないんだ」

 こりゃあ重症過ぎる。

 そんなローランドに、俺は思わず溜息を吐いた。

「はぁ……いいか?第一友達なんて自然となってるもんだぜ?だから、俺は別にローランドからその話しを持ちかけられなくても、勝手に友達だと思ってただろうしな」

「……そう言うモノなのか?」

「そうそう。まあ、今からでも遅くは無いだろ。この学園で友達を増やしていけばいい」

 俺が頭の後ろで腕を組みつつそう言うと、ローランドは嬉しそうな表情で目を閉じた。

「……なら、改めて頼む」

「おう。……つか本当に友達がいなかったんだな」

「……ああ。家族は皆俺に優しいが、親戚の伯父さん達は落ちこぼれの俺に厳しい。それに、世間でも俺の評判があるせいか、誰からも話しかけられた事が無い」

「……」

 俺は黙っていたが、話しかけられないというくだりには思い当たる節がある。

 ……単純に近寄りがたい雰囲気を放ってるからだと思うんだ。

 多分わざとじゃないんだろうけどね?でもね?もう少し雰囲気って和らげる事って出来ると思うんだ!

 ……まあ、俺が言った所ですぐに解決するものでもないだろう。ローランドの反応を見ている限り、あの雰囲気は自然らしいし。

 だから、俺はローランドにその事を教えるのではなく、接して行くうちに俺が自然とその雰囲気やイメージを取り払う事を心に決めた。

「まあ、それは一旦置いておいて……。決闘の順番とか決めたいけど……」

「……それはウェルムクロがいる時が良いだろう」

「だよなぁ……」

 どう言った作戦でそれぞれ試合を勝ち進むかとかは、ちゃんと三人揃って話した方が良いに決まっている。

 なので、ローランドと仲良くなれても作戦なんかは話しあう事が出来ない。

「仕方ない。明日にでもルルと合流して話すか」

「……そうだな。俺はもう寮に戻ろうと思うのだが……一真は?」

「あ、俺も戻るぞ。一緒に帰ろうぜ~」

 俺はそう言うと、ローランドと並んで寮に向かって歩き出した。

 その際、ローランドとは他愛もない話しをするのだが……話してみると、ローランドは意外と話題豊富で面白い奴だった。

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