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Original Heart  作者: 美紅
10/18

第10話 1組と隣の席

 あの後、恐らく他の高校と大して変わらない様な内容で、入学式を終えた。

 そして、俺達はそれぞれのクラスに分かれるのだが、クラス分けの紙は張り出されるのではなく、先生が生徒一人一人にクラスが書かれた紙を渡していた。

 入学式が終わってすぐに移動させられなかったのは、座っている俺達に先生が紙を配るためだったのか、と一人納得した。

「美佳達はクラスどうだった?」

 周りの皆が移動する中、俺はのんびりとそう訊いた。今移動すると目の前の人海に飲み込まれそうだし。

「えっと……私は2組だよ」

「あ、オレも2組だな」

「……」

 ……こんな事ってあっていいのかな?

「カズちゃんは何組なの?」

 時雨が、俺に対して柔らかな笑みを浮かべながらそう訊いてくる。

「…………1組」

「え?」

「あ……」

 俺がそう答えると、二人とも微妙な顔をした。その顔ヤメテ。余計に悲しくなる……!

 まさか……いきなり知り合いと離れ離れになるとは……。

「だ、大丈夫だよ!隣のクラスだし……お昼休みは一緒にご飯食べようよっ!」

「そ、そうだぜ!どうせ同じ学園に通う訳なんだし、クラスなんて気にする事ねぇよ!」

 二人の親切心が辛いっ……!俺の心にグサグサッ!って突き刺さる。泣きそう。

「うん……アリガト」

 もうどうにでもなれ……。

 半ばやけくそになっていた俺だが、そろそろ人が少なくなっている事に気付いた。

「あ、もうそろそろ移動しても大丈夫そうだな」

「そうだね。それじゃあ途中まで一緒に行こ?」

 教室までの道のりは体育館を出る所に張り出された地図を見れば分かるので、寮を探す時程の苦労はかからないだろう。

 早速美佳達と離れてしまった訳だが……何とかクラスに馴染むしかない、か。

 そう思いながら、俺は美佳達と一緒に体育館を出た。


●○●○●


「それじゃあね」

「またな」

「おう」

 俺は、美佳達の教室である2組の前で別れた。

 ……うわぁ……いきなり不安になってきた。俺メンタル弱ぇ……。

 しかし、ウジウジしていても仕方が無いので、俺は頬を軽く叩くと1組の教室へと向かった。

 教室のドアの前まで来たのはいいが……ふぅ。ここまでくれば後は度胸だろ。

 大丈夫。魔力がゼロでも、適性値がゼロでも皆普通に接してくれるはずさ……!

 ………………。

「不安しかねぇよ……」

 このまま地球に帰ってしまいたい気持に駆られる。どうしてこんなエリート集団の学校に通わなきゃいけないんだ……。

 でも、地球に居れば、またあのクロムのような危ないテロリスト共に襲われる可能性が高まる。

 このクラフェイアにいてもそれは変わらないんだろうけど、地球にいるよりはこの学園内にいるうちはとても安心できる。だって昔の世界ランキング1位様がいるんだぞ?

 はぁ……結局俺に、まともな選択肢は最初から存在しない訳だ。普通が恋しい……。

 俺は取りあえず心を落ち着かせるために、深呼吸を繰り返した。

 スー……ハァ……スー……ハァ……よし。

 俺は決意を固め、教室のドアを開いた。

「……」

 中に入ると、何故か全員こっちに注目していた。え、なに?何か知らんけど、無駄に静かだし……。

 しかし、無理矢理頭を冷静にして考えると、俺は恐らくこの教室に到着した最後の生徒だろう。だから、こうして注目されている……そんな考えに至った。

 でも、そうだとしてもこの注目は……。

 そう思っていると、いきなり教室内が騒がしくなった。

 しかも、反応が女子と男子で両極端に分かれている。

「キタ――――――ッ!黒髪の超イケメンッ……!」

「このクラス男子のレベル高くない!?」

「それ思った!うわぁ……これからの学園生活がとても楽しみです!」

「神よ……!マジ、有り難うございます……!」

 何だか知らんが、女子は俺を見るなりいきなりハイテンションになっている。

 そして、男子達は――――

「クソがッ……!」

「イケメン多過ぎるだろ……!」

「フフ……暗黒の高校生活の始まりかぁ……」

「男子の顔面偏差値がインフレしてるぜ……」

「神は死んだ……。否、消し飛んだ……!」

 ……うん、カオス。

 え、マジでこの状況何?全く理解できないんだけど……。

 俺がクラスの雰囲気にいきなりドン引きしていると、異様に懐かしい声が俺を呼んだ。

「一真!」

「その声は……広樹!?」

 声の主は、中学時代の親友である広樹だった。

 広樹は俺に近づいてくると、背中を叩く。

「この学園に来たんだな!」

「ああ。物凄く、激しく、本気で、不満最大だけどな」

「全然嬉しくないのかよ!?」

 うん、全然。

 テロリストとか、俺がいない所で勝手にやっててくれって話しだろ。俺を巻き込まんで欲しい。

「まあいいや。とにかくお前も席に座れよ!……って言っても空いてる場所はもう一つしかないんだけどな」

 そう言うと、広樹は一点を指さす。

 その場所は、所謂窓際の一番後ろの席であり、何で空いているのか不思議なくらい俺からすればベストポジションだった。

「マジ?ラッキー。一番後ろじゃん」

「ちなみに俺がお前の前な」

 どうやら広樹は俺の前の席らしい。

「しかし……広樹が同じクラスで助かった。俺、この学校に知り合い全然いないからよ」

「そうか?……って一真って確か一般校を受験してたよな?つか、第一魔力も適性値もゼロのお前が何でここにいるの?」

 俺が聞きたい。

「まあ……色々あったのさ。あ、言っておくけど、適性値とか魔力が急に上がったとかってわけじゃないからな?」

「何だ、てっきり何かがキッカケで覚醒でもしたのかと思ったよ」

 そんな単純な理由だったら、もう少し俺の気も楽になっただろうにねっ!

「それで……何でこの席が空いてるんだ?」

 俺は一番後ろの席に座りながら広樹にそう訊く。

 だって、普通なら真っ先にとられててもおかしくないポジションだ。残ってる方がおかしい。

「そりゃあ……ん」

 広樹も俺の前に座り、俺の方に向くと、俺の右側を親指で指した。

 指の先を視線で追うと、そこにはなにやら近寄りがた雰囲気の男子生徒が座っていた。

 深い藍色の髪に同じ色をした瞳。目鼻立ちは非常に整っているのだが、目つきが幾分か鋭い。足を組んだ状態で、文庫本を読んでいる。それに、目が悪いのか、眼鏡もかけていた。

「……誰?」

 広樹はどうやら隣のコイツが原因と言いたいらしいが、いまいち理由が分からないし、誰だかも知らない。

 すると広樹は「まあ、そうだろうな」と呟いて教えてくれた。

「アイツ、このクラフェイアでも武術の名門グラントーク家の子息なんだぜ?」

「グラントーク?」

「そう。クラフェイアの中には結構武術に秀でた名門の家柄が存在するんだけど、グラントークはそんな中でもクラフェイアの5本指に入る程の名門なんだ」

「へぇ……」

「しかも、あの容姿でこの雰囲気だぜ?誰もが気後れしちまって、近づきにくいのよ……」

「そうか?」

 俺がそう言うと、広樹は「はぁ……」と何故か溜息を吐いた。

「お前、自分がこの教室に入ってきた時、どんだけ騒がれてたか分からなかったのか?」

「え?あれってやっぱり俺のせいなのか?」

 そう言うと、広樹は更に深いため息を吐いた。

「もういい。とにかく、あの容姿と雰囲気のせいで近づきにくいんだ。それに、一番後ろの席は、アイツの所とお前の所だけだしな」

 そう言われて初めて一番後ろの席が2つしかない事に気付いた。

「ホントだ」

「まあ、それ以外にも理由があるんだけどな……」

「え?」

 広樹が小さく何かを呟いたので、何を言ったのか訊こうとした時だった。

「着席しろ」

 そんな鋭い声が教室内に響き渡った。

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