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事後承諾ってステキな響き・パートⅡ

「お初にお目に掛かります。本日よりオーランディア様の補佐を致します、リカルドと申します」



よろしくお願いします。と頭を下げた青年に、夾香の顔が引きつった。






※※※※※






「オーランディアよ、今日はそなたに付ける補佐官を連れて参ったぞ」



アクラシエル=フェースに魔術方陣を入れられた翌日。まだまだ思い通りに動かない身体に悪戦苦闘しているときに来た。それでも侍女さん達に手伝ってもらいながら、何とか着替えてご飯も軽くだが食べれた。………中々病気でもないのに誰かに食べさせてもらうって羞恥心との戦いだ。


特に侍女さんたちって綺麗系の美人さんばっかりだしね!!ナニこの居たたまれなさ!!



「………は?」



「前々から言っていたであろう、補佐官を付けると。これから忙しくなるからの、誰か代理になるような人間は必要じゃ」



………そう言えばそんなことも言っていたな、ぼんやりと思い出してきた。研究や技術開発に集中してもらうために補佐官や護衛を付ける云々て。そう言えば説明してくれたおにーさんはどうしているんだろう。



「お初にお目に掛かります。本日よりオーランディア様の補佐を致します、リカルドと申します」



そう言って綺麗に一礼した彼に、夾香の顔がが引きつった。


年の頃は夾香より幾つか上に見える青年だった。すらりと伸びた身長に、燕尾服っぽい服装。艶やかな艶のある紫黒色の髪を首の後ろでリボンでまとめているのがとてもよく似合う。涼やかな切れ長の一重が印象的な顔立ちは女性的ですらある。

はっきり言う、かなりの美形だ。普通なら「まさに二次元の執事!!写真撮らせてください!!」と詰め寄るところだが………



「………殿下、一言よろしいでしょうか」



「なんじゃ?」



「………………ご兄弟かナニかですか?」



そう、自分の補佐官だというリカルドの姿形は、保護者でもあるアクラシエル=フェースと非常によく似ている。よく見れば細部は違うので見分けれないことはないが、揃っているとまるで兄弟のように似ている。アクラシエル=フェースをもうちょっと男性的に成長させたらリカルドになりそうな。リカルドの瞳の色はアクラシエル=フェースよりもやや黄色っぽいブラウンで、身長も体格もリカルドの方がやや大きい。


ここまで似てて他人の空似は無いだろう。



「やはり分かるかの?オーランディアの言う通りリカルドは我が実の兄じゃ」



「王子が補佐官をしているのですか?」



アクラシエル=フェースの実の兄ならば王子だろう。そんな人物が補佐官?



「いいや、リカルドは王子ではないぞ」



あっさりそう返すアクラシエル=フェースに、二人して疑問符を飛ばした。なんだか、お互いがお互いに理解しきれていないような。



「失礼いたします。私から説明させていただいてもよろしいでしょうか?」



す、とさりげなく挙手しながら発言したのは当のリカルドさんだった。



「お願いします」



「畏まりました。私は確かにアクラシエル=フェース第二王子殿下の兄でございます。ですが、我が国は他国のように生まれた順番で王位継承順位を決めると言うことを致しません」



「………王様と王妃様の子供であると言うこと以外に、何か必要な物があるってことですか?もしくは王子にそれ以外の意味がある?」



「左様でございます。必要な物が、と申されましたが明確な基準がございます。我が国が技術者の国と謳うのは、王族もまたある分野での技術者でなくてはならないという考えからなのです」



「王族が技術者、ですか?」



「はい、技術とはモノを生み出すことだけではございません。持っている技術を活かし、正当に評価を下し、民を守ることが王族の方々の仕事です」



此処でやっと夾香は理解できた。



「つまり、王族を名乗るには法律の専門家、交渉、商人の専門家でなくてはならないということですか?」



「その通りでございます。私は法律家にも商人にもなれませんでしたので、こうして補佐の仕事をさせていただいております」



………それはまた、またなんと言う選別方法だ。

王族もまた技術者でなくてはならない。この持論そのものは夾香も激しく同意する。対人関係や話術は個人のセンスがダイレクトに反映するだけに、得手不得手がはっきり別れる。特にクリエイティの王族は、この国の特異な体制を維持するにはそうならなくてはダメだと、今更ながらに思う。

民主主義ではないのだ。


絶対王政とまではいかないが、最終判断は王が下す。クリエイティが民間主導に限り無く近い体制を取っていながら、それでも王族貴族がいる理由はこれか。縦と横の繋がりは、外交にダイレクトに影響を及ぼす。───特に、他国が王政を取り続ける間は。



「理屈は分かります。分かりますが、その判断は誰が、どう下すのですか?」



だが、民主主義の中で生きてきた夾香にとっては頭を傾げることばかりだ。才能はあくまでも原石であり、本人が磨く努力をしなければ意味がない。


二ヶ月の間は一般教養をアルマロス=ストレーガの下で学んだが、こんな王族の特異な事情は初めて聞いた。



「最終的な判断は王が下しますが、実際は本人の資質でございます」



「オーランディア、王の子供はの、十五の歳まで自分が王の子供だと知らずに育てられるのじゃ。産まれてから二歳までは王と王妃の下で普通の子供として育てられる。何か特殊な理由が無い限りはの」



「はい。その後は王族所縁の家に預けられ、その家の子供として育てられます」



「その後は本人次第じゃ。十迄の教育を終えた後は技術者に弟子入りするも良し、司政官の試験を受けるも良し、他国へ出るも良し」



「子供が十五の誕生日を迎えると王宮への召喚状が届きます。そこで王の子供だと教えられ、王子王女になるか、自らが選んだ道を進むか選択するのです」



「それって………」



王族として、より効率的に、無駄がないようにするための措置だとは理解できる。クリエイティの特殊過ぎる立ち位置は、職人を束ねる為には必要なことだろう。この国としては、選別方法としては優れているのだろう。この世界で十五は大人と子供の境目で、本格的な修行に入る寸前。一人前とまではいかないが先達が才能を見定めるには充分な期間だ。


だが、まるでそれは、



「オーランディア様が、お気になさることではございません」



口を開きかけた夾香を、リカルドが遮った。



「私を含む王の子供は、確かに兄弟としての情は薄いでしょう。家族として過ごした記憶もほとんどございません。ですが、王家の子供が育てるのは王家の子供です。王子王女の子供は自分の兄弟姉妹に育てられます───伯父や伯母に」



「オーランディアが気にすることではない。王と王妃は全て覚悟の上でしていることじゃ」



もしくは、そういう覚悟がないと務まらないということだろう。



「………物凄く今更ですが、一般人に言ってよかったんですか、それ」



ふと現実に帰ってきたが、良いのか。

明らかに機密事項じゃないのかそれは。


が、王族関係者の反応はあっけらかんとしていた。



「公に告知しているわけではないがの。別に機密事項ではないぞ」



「ええ、一般人でも知ろうと思えば知れることです。大々的に公開してはいませんが」



………ああ、そう言うこと。

つまり、一般人に告知はしたけど何かのついでだったんですね。そして法律書の隅っことかに書いてあって、よほど熟知しないと分からないってことですね………!?


重要事項という扱い方をしなかったんですね。恐らく学校でも習わないんだろうしな。


で、リカルドさんは私の補佐官決定なんですかそうですか。



「リカルドをオーランディアの補佐に選んだ理由の一つでもあるからの。王族を名のれはせぬが、候補であることは確かじゃ。我との繋がりも含め、有能さも間違いない」



私に拒否権は無いんですね………


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