プロローグ
アクセサリー
きらきら、きらきら、色とりどりの素材にデザイン。
それはまさしく女の子の夢が詰まっている。
ペンダントにネックレス、ピアス、イヤリングにブレスレット。中々ないがイヤーカフスにイヤーフック、アンクレット。究極は指輪。
身に付けるのは苦手、という女性もいるだろう。
装飾品なんて要らないわ、という女性もいるだろう。
だが、断言する。
女性で、アクセサリーが本当に嫌いな人なんていない。
これは、私の持論だ。
※※※※※
「───おはようございます、マスター」
ちゅんちゅんと小鳥の囀りが聞こえ、閉め切ったはずのカーテンから朝日が燦々と降り注ぐ。
暖かい日差しが気持ちいい。私はそのままふかふかの枕に抱き付いた。
「んぅ………もうちょっと………」
「ダメです。本日は10時にジュエリール商会のエルダンジェ様がいらっしゃるのですよ。さぁ、モーニングティーが冷めてしまいます」
さっさと起きてください。
その言葉と共に、抱きついていた枕が腕から引っこ抜かれた。………はい、起きます。
「………おはようございます、リカルドさん」
「ええ、おはようございます、マスター」
律儀に返す彼、リカルドは朝から既にしっかりと‘制服’に身を包み、微笑んだ。………もうこの顔にも見慣れたものだ。若干どうかと思うが。
むくりと起き上がると、見事な手際で寝乱れていた髪を軽く整えられた。ついでさっと白いカップに入れられた紅茶を差し出される。
それを両手で受け取ると、まずはゆっくりと一口。
「………今日の予定って、エルダンジェさんがいらっしゃる以外には無かったですよね………?」
そこからは、今日の予定の確認だ。
因みにまだ私はベッドから一歩も出てない。
しかし、リカルドはそんなことも気にせずに微笑みながら、今日の予定をつらつらと述べた。
「はい、来客はジュエリール商会のエルダンジェ様のみです。午後からは自由になさって結構ですが、お茶会、夜会、舞踏会の招待状、ついでにお仕事の招待状も届いておりますので、お目通しください。本日のお召し物は、お客様がいらっしゃるのでこちらでよろしいですか?」
「ええ、それで」
示されたのは、ジャケットを羽織る黒いドレスだ。
スクエアネックのシンプルなデザインのドレス。フルレングス(床に届く長さ)の丈に、袖もぴったり腕に沿いながら手の甲近くまでの袖丈。裾、袖口、襟ぐりには繊細な黒いレース。伸縮性のある生地を使っているから、見た目に反して着心地も良い。上に羽織るのはスタンドカラーの黒いジャケット。前は閉めない。
因みに足元は10センチはありそうなヒールのブーツだ。
………カッコいい。確かにカッコいいが、一見して魔女か悪の女幹部にしか見えない。
「では、着替えが終わりましたらお呼び下さい」
リカルドはにっこりと微笑むと、部屋から出ていった。
………この生活にもずいぶん慣れたな、と思う。
私、蓮見夾香は異世界召喚された。
もう、半年ほどになる。