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五百文字の小説

そこだけが違う

作者: 銭屋龍一

 ここにいるこの私など、あの頃の私は想像すらしなかった。


 金魚鉢の底から世界を見ているように、いつも私の世界は歪だった。真っ青な空を鰯の大群が泳いでいったこともあった。あるいはそれは象の大群だったかもしれない。それとも北の約束の地に渡る蝶たちの群れだったか。いずれにしても、そのものたちの影が流れている間にほんの少しだけ泣いた。でもそれはあまりにもわずかな時間で、おおむね私の時は止まったままだ。

 誰よりもなつかしいひとも、たくさんの思いを抱えて、どこかで今、しあわせに生きていることだろう。

 そして世界はいまやただの空洞に過ぎない。空も海も大地もいつの間にか消えた。宇宙すらその意味をなくした。


 時は止まったままのはずなのに、私だけが枯れて消えゆこうとしている。

 その醜悪さに喜びさえ感じながら。


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