ギルドマスターのアルさん
ギルドマスター室で頭を抱える男がいた。彼の名前はアルヴァロン、この町のギルドマスターをやっている。ちなみに、冒険者からは『アルさん』の愛称で親しまれるSランクの凄腕だ。
そのアルさんをSランク依頼よりも悩ませる原因の答えは手元の1枚の紙にあった。
〜グランドワイバーン討伐〜
討伐者・イクス(Fランク)
・オウカ(Fランク)
補足 ・上記の2名は本日ギルド登録したとのこと。
ただグランドワイバーンを倒したのならわかる、そんな奴は何人もいるのだから。しかし、問題なのは2人のランクと初任務、ということだ。
「どうしたもんかなぁ…。」
初任務でBランク以上に昇格はまずいが、実際たおしたのだ。それは曲げようのない事実だ。
「よし、直接話そう。」
一度決めると即行動が理念のアルさんだった。
「俺たちなんでギルドマスターなんかに呼ばれたんだ?」
「そりゃ、あんなドラゴンを倒しちゃったからでしょう。あんたバカなの?自覚持ちなさいよ。」
「そうです、イクス様。あなたは正直、規格外です。」
「そうはいってもよぉ、倒さなきゃ俺たち今頃あれの餌だぞ。俺は嫌だな、うん。」
「無駄話はおしまい。ここがギルドマスター室よ。」
目の前には他の部屋よりちょっとごつい扉があった。プレートには『ギルドマスター室』と書いてある。そういや、なんで俺はこの世界の字が読めるんだろう?
すると扉が開き中から30歳手前かな?というくらいの男が出てきた。
「ユリ、ご苦労だったね。仕事に戻ってくれ。」
「わかりました、失礼します。」
そう言うと、ユリは部屋から出た。
「さて、私の名はアルヴァロンだ。周りからはアルさんなどと呼ばれているがまあ、好きに呼べばいい。本題についてだが、いやぁ、正直驚いたよ。まさか、初依頼でドラゴンを倒してしまうとはね。とりあえずあそこにドラゴンがいた事を察知できなかったこちらのミスを詫びよう。済まなかった。」
「べつにいいよ。そこまで強くなかったし。」
「私も特に怒ってはいませんので。」
「ありがとう。そして君たちのランクだが、本来ならBBランクとなるところだが、今回は特例すぎるからね。こんなの歴史上に一人だけいただけだよ。その話はまた今度にして君たちもその人に習ってBまで上げることに決定した。実力は認めるが、もう少し経験を積んで頑張ってくれ。まあ、Bランクあれば生活がかなり楽になる。目立った特典としては、宿と武器防具が4割引されることかな。
もっとランクを上げれば特典が増えるので是非頑張って欲しい。」
「わかりました、それでは私たちは失礼します。」
「わかった。今日はギルドの宿舎を貸すからゆっくり休んでくれ。」
俺たちはマスター室を後にした。