オウカの苦難
イクスの代理で点在する天界たちの中心に位置する神殿の円卓にオウカはいた。どうやら自分が一番乗りだったようだ。
「あら、オウカちゃん。久しぶりね。」
「あ、イシス。」
「最近イクスが頻繁に降りてるって話だけど…」
「いやあ、仕事してくれなくて困ってます。」
「まったくよね〜。」
とイシスが返事をすると、
「あなたが言わないでください。今実質事務をやってるの私じゃないですか。」
リオンが後ろからツッコミを入れる。
「それより、最近イクスとどうなの〜?」
とここぞとばかりにわざとらしくイシスが話題を逸らした。
「…えっと…、それは…」
オウカが答えにくそうにしていると、もう1人、よぼよぼのお爺さんが到着した。
「久しぶりじゃのう。イシス君、それにオウカ君。」
このお爺さんはクニヌシ、神々の間で最も古参とされる人だ。そして、イクスによって付いたあだ名がー
「お久しぶりです。ちょうろ…クニヌシ様。」
「本当にお久しぶりですわ。」
実は彼はイクスが神になる際の決議以降、この手の集まりにほとんど顔を見せなかった。ということは今回の集まりはそれだけ大事なのだろう。オウカはますます憂鬱になった。
「やあ、お2人さん。」
現れたのは1人の青年。顔立ちはかなり整っている。彼も神の1人ゼクス、イクスとほぼ同期少し先輩の神だった。
「今日はオウカちゃんを口説かないの?」
「…いや、やめとくよ。またあいつと喧嘩したくないからな。」
その場にいた全員がイクスが初参加した集まりのことを思い出した。
「あれは傑作じゃったのう。」
神殿が半壊した大喧嘩の後、長老の一喝で自体は鎮静し、ゼクスは大人しくなった。
その後他の神も続々到着し、会議が開かれた。
「…どこぞの若い連中のようにわしを長老などと呼ぶものもおるようじゃし、今回もわしが仕切らせてもらおうかのう。」
沈黙が流れるこの場合は肯定と取るべきなのだろう。
「今回の集ったのは『ルシファー』を継ぐものへの対処についてじゃ。奴が冥界に落ちた当初のままならばこちらも放置して良いと考えたが、この前のように世界を乱すかもしれん。此度の奴も奴と似たような思想を抱いておるようじゃしの。」
とオウカの方を見る。
「ええ。我々の世界にて昨日、イクスのいる目の前で彼の関係者が殺されています。事故に見せかけたものでしたが我々は奴の仕業と見ています。」
「なるほど、バックアップが狙われたわけか。」
バックアップとは誰かが神になる際、万が一の緊急事態に備えて創られた存在である。
「こりゃあ、イクス君の提唱する防衛システムの導入を本格的に検討する必要がありそうじゃのう。」
これにも沈黙を返す。これはまだまだ議論の余地があるということだろう。
「そこで、我々は各人1人ずつ勇者を出すことに決定しました。その選定、育成の進み具合をお聞きしたい。」
「私の方からはトウヤを出します。力の程はイクスが証明してくれるでしょう。」
「奴も認める人材か。ならば問題ないだろう。」
「わしも1人、目星をつけておる。わしの力を少し分け与えておるのもあり、この中に入っても引けを取らぬぞ?」
と次々に報告がされていく。そして、オウカの番になった。
「…我々はイクスのバックアップ、守を出す予定です。」
会場がざわつく。
「…そんな危険を…」
「…それに、彼の防衛システムは」
「彼にはイクスが新たな防衛システムを構築し、それを実施しています。」
周りがざわつく中、長老が落ち着いた声で語りかける。
「実力に問題はないのじゃな?」
「はい。イクスの見立てではもう少し時間がかかりそうですが、かなりの力を持つものになるとのことです。」
「…ならば問題ないじゃろう。これで全員か。では、恐らく最後発であろうイクスの勇者が完成次第。我々はルシファー討伐に勇者を送り出すことにしよう。」
長老が締めくくると、全員が力強く頷いた。
「お疲れ様、オウカちゃん。」
「…はぁ。とんでもない重圧ね、神様たちは。」
「まあそりゃあ…ね。」
「イクスっていつもあんなとこに座ってあれだけ飄々としてられるんだね。」
「…やっぱりあの人は異常です。」
久々に感じたイクスの規格外さに呆れるオウカだった。




