偽りの戦争
「なんで、イクスさんはあんな挑発をしたんだ?」
イクスが連合に宣戦布告してから数時間後、トウヤがイクスに問いかけた。
「それは私も気になったんだけど、わざわざこっちの戦力まで晒す意味ってあったの?」
オウカもトウヤと同じ思いだったようだ。
「まぁ、俺もわざわざこの世界全ての軍隊を相手にする気はないな。」
「だったら……」
「まぁ、俺にも考えがあるんだ。見てなよ。」
イクスが笑みを堪えきれずにいた。イクスがこれだけ余裕な態度で構えているのだからなんだかんだで大丈夫なのだろうと安心する3人だった。
およそ一月後、
「あれだけ堂々と宣戦布告をされたのに一ヶ月は長すぎたか…?」
東軍、西軍連合は船を使いエウテルペへ向かっていた。
「まあ、奴の方からあそこだと言ったんだ。十中八九罠だろうが、奴らを討つにはそこへ行かんとな。」
「…そうですね。どんな罠を用意しているのか…。やはり、古代魔法を用いた罠でしょうか?」
西軍、東軍の参謀たちが話し合っている所にぜラークがやってきた。
「奴は罠など使わないだろう。奴は俺たちに対して罠を張る必要性がない。奴一人で俺たちを全滅させかねない戦力なのだからな。」
彼は呪術を無制限に使える、すなわち対イクスにおいて唯一の希望となるので今回の部隊編成は新パンドラを中心に行われた。
「さて、そろそろ上陸だ。待っていろ、イクス。俺がお前を倒してやる…」
「…そろそろ、連合の全勢力がここへ集結する頃かな。」
「イクスさん、戦わないってどういうことですか?」
リオンがイクスの意思を探るかのように聞いた。
「言葉通りの意味だ。俺たちはともかくトウヤとリオンはこの世界の敵となるのはまずい。これから先2人で生きていくためにもな。」
「…はぁ。ますます、イクスさんの考えがわからなくなってきました。」
とリオンは呆れ顔で言ったものの、2人で生きていくという部分に反応して少し顔を赤らめていた。
イクスたちがそんな話をしている頃、連合軍がエウテルペに続々と上陸していた。
「上陸し、装備の整った者から進軍せよ!」
どこかで、指揮官の声が聞こえる。まだまだ人はやってきそうだ。
突如、エウテルペにつけようとしていた船の一隻が撃沈された。
「……」
「覇王だ!あそこにいる!!」
犯人はもちろんイクスだった。イクスが手を空にかざし、振り下ろす。その軌跡を追うかのように、『メテオ』が発動した。船が一隻、また一隻と沈んでいく。
「誰か奴を止めろ!このままでは戦争にもならん!!一方的な殺戮だ!!!」
魔法部隊がイクスに様々な魔法を放つも全て相殺されてしまう。それどころか、上向きに魔法を構えたところ、銃で撃ち抜かれる者が出てきた。こちらの犯人はトウヤだった。
「くそっ、あんなのどうやって倒せって言うんだよ…」
その頃、イクスたちはまだ城の中にいた。外を見ると連合軍たちが見えない何かと戦っている。その光景はさながら舞踏会のようで少しおかしく思えた。
「これが、イクスの言ってた戦わない策なんだね。」
「あの光景なんだか怖いんですが…、あれってどうなってるんですか?」
リオンが質問を投げかけてくる。確かに、事情がわからないままこの景色を見るのは違和感を感じるだろう。
「…これはな、闇属性魔法『ファントム』だ。効果は術をかけた相手に幻を見せるんだが、今回はそれをこのエウテルペにいる俺たち以外の全員にかけた。」
「そんなこと、どうやって…」
「まぁ、魔力量によるゴリ押しですけどね。」
あまりに適当な発言に全員が呆れそうになったが、これがイクスだとなんだか納得してしまった。
「まぁともかく、これで俺は俺の目的に集中できるな。」
「…目的って?」
「オウカ、俺の目的は今も昔も変わらないぞ?」




