vs猪だったはずが…
「そういえば、オウカってなんか武器持ってるの?」
「ええ、持ってるわよ。ほら。」
そう言って、オウカが腰から抜いたのは小太刀ほどの刀だった。
「ふふん♪驚いた?これは私の家に代々伝わる…」
「みんな武器があるのか。俺はどうしようかな。」
「人の話を聞きなさいよぉぉ!」
そんなやりとりをしている内に、例の猪を見つけた、のだが。
「え?死んでる…?」
オウカも同じ疑問を抱いたみたいだ。
「なんだか、これって何かに肉を喰われたみたいですね。」
「ルー、お前もそう思うか。」
「喰われたって…?」
「まぁ、こいつらより強い何かだろうな。」
ズンッ
「「「っ!!」」」
突然地響きがした。まさか、これをやった奴か?現れたのは、体長5メートル程のドラゴンだった。ルーとは違うタイプだな。って、2回目で早くもドラゴンに慣れてしまった自分が恐ろしいよ…。
「オウカ、武器貸してくれ!んで後ろに下がってろ!ルー、こいつの保護を!!最悪元の姿に戻ってもいい!!」
2人が言われた通りに動き、オウカに借りた武器を持ってドラゴンに対峙する。やれんのかな?俺。
「ギァァァァ!!!」
ドラゴンは低く響く咆哮をあげるといきなり青いブレスを吐いてきた。ちょ、こっちは魔法なんてつかえねえんだぞ!それをかわすと、真横から巨大な爪が飛んできた。
「っ!」
ガキンッ
なんとか爪を払うと、少しの間膠着状態になった。
「なんで?あいつあんなに平気そうに戦ってるの?相手はドラゴンだよ!?どう見たって幻獣クラスはあるじゃない!あんなの化物じゃない!!」
「まぁ、イクス様も十分化物ですからね。ある意味人の枠外れてますし。」
「はぁ?それってどういうー」
ガキンッ
膠着が解け、再び剣と爪が飛び交う。それにしても硬いな、刃が通らないじゃないか。とりあえず、刺してみるか。
ブォン!
ドラゴンの爪をよけ、隙ができたところに突きを放つ。
ガンッ!
はい?硬すぎません?このお方。
「うおっと!あぶねーなっ!」
再び突きを放つ。だが今度は少し違う。少し柔らかそうな腹目がけてだ。けれども刺さったの先っぽだけだった。
「っこのやろ!!」
イクスは思いっきり刺さっていた剣を蹴り込んだ。
バキン!
かなり嫌な音がした。するとドラゴンは動かなくなり、地面に倒れこんだ。しかし、オウカの剣は見事に折れていた。
「あっ、やっちまった…。」
ドラゴンが死んだのを確認してから、オウカとルーを呼ぶ。
「全く、私が戦っても良かったのに。」
「すまんな、ルー。俺も戦闘経験を積みたかったんだ。」
「あんな無茶な事して!すごく心配したじゃない!!」
「ごめんな、オウカ。てか、ちゃんと心配してくれんだ。嬉しいよ。」
「な、な、なんであんたの心配なんかするの!そうよ、その剣のほうよ!」
「あぁ、ごめんな。折れちまった。近い内に弁償するからさ。ゆるしてくれよ。」
「べっ、別にいいわよ!イクスが無事に…ゴニョゴニョ」
「ん?なんか言った?」
「言ってない!!」
こうして初めての依頼を終わらせた2人だった。