裏切りの覇王
「ゼラーク様、ゼラードの軍が二手に別れて迎撃を開始したようです。」
「ならば、そろそろ我等も出るか。」
「「「はっ!!」」」
「西軍の攻撃が止まりましたね。皆さん、気を付けてください!そろそろきますよ!!」
「ゼラード隊長、聞こえてますの?そろそろ来ますわよ、奴らが。」
<聞こえてる。こっちはあらかた終わった。今からそちらに向かう。>
「…私たちは時間稼ぎですわね。」
「そうですね。」
遠く離れた先に、敵の大部隊が見える。あれが新パンドラだろうか?2人はこちらにやってくる敵を見据えて戦闘準備を開始した。
「…あぁ、もう!面倒くせえな!!」
ここ数日、イクスたちは東軍に追いつかれては撃破、そしてまた移動し、追いつかれては撃破を繰り返していた。
「君達がそれを置いて行ってくれれば、追いかけなくて済むのだがね。」
「キリがないわ!」
オウカがかなり消耗してるようで、少しずつ反応も鈍くなってきている。イクスがそろそろフォローに入ろうかと考え始めたその時、
バシュッ
オウカと戦っていた男たちの1人が突然吹き飛んだ。
「っ!誰だ!?」
「ここは私たちに任せなさい!!」
「お久しぶりですね、イクスさん。」
「カノン!リッカ!どうして…?」
「全くもう、見てられないわ。弱くなったんじゃないの、オウカ?」
「ここは私たちに任せて、早く力を取り戻してください、イクスさん。」
「済まない…、じゃあ行ってくる。」
イクスとオウカは一言礼を言い、駆け出した。
イクスたちがエウテルペの元魔王城に着くと、一頭の神獣が待っていた。
「…!…イクス。」
「…あれは、大丈夫だ。」
「1000年ぶりだな、イクスよ。」
「そうだな、ツクヨミ。」
「魔力を取り戻しに来たのだろう?ならば、ついて来い。」
イクスとオウカは黙ってツクヨミについて行った。城の奥に行くとそこには人の心臓程の光の結晶のような物があった。
「これが…」
「そう、これがお前の魔力だ。触ってみろ。」
イクスが手を触れると光がイクスを包み、やがてイクスの身体に溶けていった。
「力が…溢れてくるみたいだ。」
「そうか…良かったな。これで私の役目も終わった…。」
すると、ツクヨミの身体が徐々に透けていった。
「ツクヨミ…」
「心配する事はないぞ、イクス。私の寿命はとうに来ていたのだ。神獣として生まれ、妻と出会い、良き友と出会い、一族の長にまでなれた。満足だ。これ以上の幸せがあるものか…」
そう微笑んでツクヨミは消えた。
「ツクヨミ…ありがとな。」
イクスとオウカがしばらく立ち尽くしていると、
「イクスさん!これを!!」
「…エア、やっと出てきたのか。」
そういいながらイクスは手渡された通信機のようなものを受け取った。
<ごめん、イクスさん…。俺たちじゃ……。>
<イクスさん、早く来てください…、あの人たち…>
「トウヤ!?エミル!?」
イクスが呼び返すも、返事は聞こえなかった。
「…助けてください。今のあなたなら出来るでしょう?」
「…当たり前だ。空間転移の前に距離など関係ない!」
3人が転移すると、そこにはリオンを連れ去ろうとする敵の姿があった。
「イクス!!」
「わかってる、『ギガグラビティ』。」
次の瞬間リオンを連れ去ろうとしていた男たちがその場に崩れ落ちた。
ひとまず、リオンの救出には成功した。だが、なぜリオンを狙う?
答えは最初にあった、まさか…
「イクスさーん!」
「っ!トウヤ…!……トウヤ、リオンを少し預からせてもらう。」
「何を言ってるんだ、イクスさん!?」
「リオンに会いたければエウテルペまで来い。」
そう言うと、イクスとオウカは消えてしまった。
「イクスさん、……イクス!!!」




