決戦
リルモア大陸の東からさらに海を渡った先にある秘境『エウテルペ』。この間まではここは未開拓地だった。しかし、現在はそこに国ができている。名前はまだ無い。
「イクスの所に返してよ!このっ、このっ!!」
「そう暴れるな。心配しなくてもイクスはじきにここへくるさ。」
「……!」
オウカが奴を無言で睨みつける。奴はそれを無視したままエウテルペにある城の中へ入って行った。
城の中では一人の騎士が立っていた。
「ーなんだ?その女は。」
声からすると女のようだ。ふと、オウカと目があった時、オウカはその女と会ったことがあるような気がした。
「餌として連れて来た。大物が釣れるからな。お前とも無関係ではないぞ?」
「ーそうか、私はこれからくる奴を殺せば良いのだな?」
「そうだな。」
ーイクス、助けてよ…。
その頃、イクスはエウテルペの城門前に転移していた。ここに来るまでに夥しい数の魔物や、魔族を倒して来たがまだキリがない。魔界から転移でもしてるのか?
「くそっ、キリがない!」
「…大丈夫です!イクス様!!ここは私達に!」
「ルー!?それにこれは…アポロニアの国軍か!?」
「そうよ、私が転移させたの。」
姿形は多少変わっていたが、イクスにはすぐわかった。
「イシスか?こっちに来れたのか?」
「言ったじゃない、悪魔が絡んでるときは制限が無いって。」
「てか、アポロニアの国軍なんか連れて来て大丈夫なのか?」
「心配ないよ、イクス君。本国には第5、6部隊と手練れを2人ほど置いて来た。」
「…手練れ?」
「君もよく知ってる人物だ。」
「今はそんなことよりも、早くオウカちゃんを連れ戻して来なさい。」
「…わかった。」
イクスが魔族の軍勢を躱し城の中へ突入すると、黒の鎧を纏った騎士が立っていた。
「…待っていた。貴様を殺す。」
「…誰だ?」
「ーそいつは、お前とも無関係ではないぞ?」
「…てめえ!」
イクスが奴に飛びかかろうとするが、黒の騎士が遮る。
「…奴との約束だ、まず私と戦ってもらう。」
イクスは無言で騎士を睨みつけ、斬りかかった。黒の騎士も剣を抜き、盾を構えて突進する。
ーこいつが魔王なのか?いや、それにしては…
強く無いのだ。500年前に戦った魔王よりも。
「……」
イクスは何故かこの騎士が本気で戦ってないように感じた。
「…どういうことだ?やる気あるのか!?」
「……。」
「お喋りばかりしてないで、ちゃんと戦えよ。じゃないと…」
奴は指を鳴らした。パチンという音と共に鎖で繋がれたオウカが姿を表す。
「オラ!サッサトアルケ!!」
「痛い!離してよ…!」
「こいつがどうなるか知らねえぜ。」
奴はニヤッと口元を緩めた。すると、イクスの中で何かが弾けた。
ドォン!
天照の一振りで城の30%ほどが吹き飛んだ。
「…邪魔だ…。消されない内に…どけ!」
城の外では、アポロニア軍とイシス、ルーが戦っていた。
「本当に数が多いわね。いつの間にこんなに増えてたのよ…。」
「神様が愚痴をこぼさないでください。周りの士気に影響します。」
「ルーは良かったの?あいつが選んだのはオウカちゃんだったのよ?」
「イクス様がオウカに惚れてたのは知ってますし、私はイクス様の家族ですからね。」
と、ルーも笑ってみせた。
「こんど、他の皆にも聞いておこうかしらね。」
「まあ、皆大体似たような答えが返ってくると思いますが…。」
「「っ!」」
イシスもルーも、同じようにイクスの魔力を感知した。
「…やばいわね。イクスが本気を出し始めた。ルー、皆を集めて。安全な所まで避難するわよ!」
「…わかりました!」
黒の騎士は防戦一方だった。まあ、あのイクス相手に攻めることのできる者の方がおかしいが。
「おお、怖い怖い。そんなにこの女が大事かよ。」
「黙れ…次はお前だ!」
イクスの蹴りが騎士の頭部の鎧にヒットした。鎧の頭の部分が吹き飛ぶ。その顔をイクスは見たことがあった。
「なんで…、なんでだよ………!」




