救出
次にイクスが姿を現したのは、例の洞窟の前だった。洞窟の入口には、見張りっぽいのが立っていた。イクスはそのど真ん中に転移してしまったのだ。
「誰だ!お前はいったい何も…」
一人がそう言ったところで細切れになっていた。もう一人はなにが起こったか分からずに突っ立っていると、
「ライトレイ」
光属性の超上級魔法が唱えられた。魔法の知識と一緒に出てきた記憶?によると、魔法にもランクは有るらしい、火、水、土、風、光、闇の他に、時間魔法、空間魔法、というものがあって、各属性でSSSランクからFランクまであるそうだ。ちなみに今唱えたのは、Aランクほどらしい。
見張りを片付けるとイクスは再び洞窟の中に走りだした。
洞窟の最奥にはアンチレイズのボス、オークがいた。この盗賊とは、オークの盗賊だったのだ。人攫いを繰り返し、男は労働者として使い、女は人身売買をしていた。見張りの男たちもその中の2人だった。そしてそこにオウカもいた。
「ん〜!!ん〜!!!」
手足を縛られ、ご丁寧に猿轡までされている。そのそばにいた手下と思われるゴブリンが、
「オーク様、小娘一人さらっただけで金貨20枚など怪し過ぎませんか?誰から依頼を受けたのです?」
「悪いが、お前らにも言えん。まぁ、信用は出来るから大丈夫だろう。」
「ん〜!!ん〜!!!」
「うるせぇ小娘だな。売り渡す前に味見してやるか。」
「んん!?ん〜、ん〜!!!」
必死で身をよじって逃れようとするが動けない。そしてオークの手が触れる寸前、
「オーク様、侵入者です!見張りがやられました!すごい勢いでこちらに向かってきます!!」
「いいとこだったのに邪魔しやがって。ええい、迎え撃て!ここまで来させるな!!」
「それは無理だな。もうここまで来てるぞ。」
「「「「「っ!!!!」」」」」
「オウカ、大丈夫か!?」
オウカの猿轡を外す。
「ハア…ハア…、イクス…怖かったよお!」
「もう大丈夫だ、一緒に帰ろう。」
「うん。」
「さて、こいつらを処理しないとな。」
オークたちがまわりで吠え、叫び、襲い掛かる。
「俺から離れるなよ、オウカ。」
オウカが頷くとイクスは呪文を唱えた。
「ギガグラビティ。」
Sランクの空間魔法で、対象の空間にかかる重力を何倍にも出来る。
「お前らに一つ聞く。オウカを攫った主犯は誰だ?お前らが自分の意思でわざわざギルドを襲いはしないだろう?誰に依頼された?このまま潰されたくなければ言えよ。」
「俺たちは依頼人との契約は守るどんなことになっても絶対言わねぇよ!」
まわりにかかる重力が大きくなった。耐えきれず潰れていくゴブリンもでてきた。
「言わねえと、この辺り一帯ごと焼くぞ?」
ゾワッ
イクスから溢れ出過ぎた魔力が遂に感知能力の低いオーク達にも伝わった。ゴブリンが一匹、二匹…と震え出す。オークもとうとう耐えきれなくなった。
「俺たちに依頼したのはこの国の国王の使いと名乗ったやつだ!王家の紋章を見せてくれたから間違いねえ!!だから俺たちは離してくれぇ!!!」
「そうか、王家か。行くところが増えたな。ちょっと目を瞑っててくれるか?オウカ。」
そう言ってオウカが目を閉じたのを確認する。
「もう、お前らに用は無い。…潰れろ!」
「ギャッ!!」
グシャッという嫌な音とオークたちの断末魔がオウカの耳に入ってきた。そのあと、
「『テレポート』」
とイクスが言ったのを聞き目を開けると、ギルド宿舎のイクスの部屋にいた。
「これで一安心だ。」
「ルー、いるか?」
「はい。いますよ。」
その声と同時に、ルーが部屋に入ってきた。
「すまないな。おいて行ってしまって。」
「私は構いませんよ。あなたが望むように、後悔の無いように動いていただいても。」
「じゃあ、さっそくオウカを頼む。キレイにしてやってくれ。あと服もボロボロだから、昨日買った奴から適当なのを着せてやってくれ。あと、こいつの警護を近づくやつは潰しても構わん。絶対に怪しいやつを近づけるな。」
「わかりました。イクス様は?」
「俺はまだ行くところがある。」
そういうとまた、何処かに転移してしまった。
「あっ、イクス様魔力がある…。って、ちょっと、空間魔法を詠唱破棄って何ですか?人間どころかこの世界の生物はすべてそんなこと出来ないですよ!!」
部屋の中にルーとオウカだけが取り残されたのだった。




