パーティー当日その4
「また使わせちゃったね悠……」
「気にするなって言ってんだろ」
遥を助けた僕は携帯に表示された地図を見ながら帰宅路を辿っていた。
ちなみに会長には珠里がことを説明してくれたようで、僕が電話すると会長は全てを理解してくれた。
そんな全てが軌道に戻りつつある今、僕には一つの問題があった。
「だって悠の力は珠里を助けるために覚えたもののはずだよ。それなのにその力を私のために使ったじゃない。だから……ごめんね」
「いや、もう本当に気にしなくていいから」
「でもっーー」
ーーと、さっきからこんな風にずっと謝って来るのだ。
ちなみに力とはさっき下衆を倒すときに使った技のことだ。
実をいうとこれはお嬢様である珠里のそばに僕がいるもう一つの理由でもある。
僕は珠里の双子になった日から、珠里の父にこの力を身につけ守り目として生きるように言われている。
「だって悠は珠里の兄として生きるために守り目の自分を封じるようにしてたのに」
「それはそうだが」
「だから悠はあまり力を使いたがらなかったじゃない」
確かに僕自身この力はあまり使いたく無かったし、それを避けるために性格を変えていた部分もある。
このことを知っている遥が僕に力を使わせてしまったことに引け目を感じてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
でもな遥ーー
「いいんだよ。この技と力は珠里を守るためじゃなくて大切な誰かを護れるように身につけたんだ。ーーだから俺が遥を護るのは俺の意思には反してない」
「そう、なの?」
「ああ、もちろんだ」
「そっか、なら良かった」
遥が納得したように頷く。
そういえば遥が救出してからも性格こののままになってるな俺。ーーまあ、いいか。
「早く行こうぜ遥、会長達が待ってる」
「うんっ、そうだね」
そう言って何故か遥は俺の右手に抱きついてくる。
ーーと、同時に柔らかい感触が腕から伝わってくる。
「は、遥? その、歩きにくいんだが」
「えー、このまま家までこうしてようよ」
ジッ……と遥が上目遣いで俺を見上げて来る。
ーーくっ、これは反則だ‼
その後結局遥の態度に折れた俺は家までずっとこの体制で歩いて行った。
◆◇◆◇
一方の立花家では悠と遥を除いた生徒会のメンバーが悠と遥の帰りを待っていた。
三人共さっきの電話で無事なのは分かっているのだが何と無く落ち着かないのだ。
「お兄ちゃん達本当に大丈夫なのかな」
「大丈夫ですよ珠里さん。悠さんから電話が来たでしょう」
「もしかしたら悪い人に無理矢理言わせられたのかもしれないんだもん」
「ーーまだそんなことを言ってるのか珠里は。まあ私は別の危険を危惧しているけどね」
サーニャは意味深な言葉を珠里に向かって放つ。
それを聞いた珠里は顔をしかめながらも思わず会長に聞き返す。
「もう一つの危険?」
「ああそうだ。しかも現在進行形でね。それはーー」
「それは?」
「遥のことを助けた悠が帰りながら二人でイチャコラしている危険性さ」
「ーーッ‼ それはーー」
ーーピーンポーン
珠里が何か言いかけたそのとき、家の会場に来客を伝えるチャイムが鳴り響いく。
しかし誰も動こうとしない。
扉の向こうには遥とイチャコラしている悠がいるかもしれないからだ。
ーーピーンポーン
「ハッ‼」
もう一度響いたチャイム音で舞花が何かを思い出したかのように玄関に向かい始める。
「サーニャ、珠里さん、クラッカー持って来て‼」
そして玄関から先に向かった舞花の声が珠里とサーニャの耳に入る。
その声で静止状態が溶けて、二人は慌てて玄関に向かった。
もちろんその手にはクラッカーがある。
そして三人はーーコクリ、と頷き、舞花が玄関の扉を開ける。
『ハッピバースデー遥‼ お誕生日おめでとう‼』
ーーパンッ、パンッ。
玄関にクラッカーと三人の声が響いく。
そして家に帰ってきた遥は戸惑ったように言葉を出す。
「え、何これ? サプライズ?」
しかし遥な戸惑った声に答える声は存在しなかった。
何故なら三人は目の前の光景を目にして再び静止状態になっていたのだから。
ちなみにその光景とはーー
「な、なんでお兄ちゃんの彼女みたいな感じて遥が腕に抱きついてるの⁉」
ーーである。
しかしこの状況で一番困ったのは悠だった。
(な、なんかイヤーな予感が)
悠の嫌な予感は的中する。
「遥どういうことなの⁉ーーま、まさか 抜け駆け⁉」
「え?ち、違ーー」
「悠さん、何があったか説明して頂けますか?」
「ま、舞花さん落ち着いてっ、目が怖いッ‼」
「悠、遥とは何処までやったんだい?」
「にじりよらないで下さい‼ 後、俺は何もやってない‼」
しかし的中した嫌な予感は、同時に騒がしいパーティーの始まりを意味していた。
お楽しみ頂けましたか?
今回の話はエピローグに向けての前置きの回となります。
ということはついに次回が最終回になるのでしょうか?
感想、評価待ってます。
ではまた




