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40: パーティー当日その4

時間は少し戻る。


「いやだから誕生日パーティーなんて必要ないだろって」


僕はパーティーのことをバレないようにすることに必至で思ってもいないことを遥に向かって言ってしまった。

思えばこれは少し酷な言葉だったかもしれない。

しかも今、言われた本人の遥は何処かへ走り去っていた。


「お兄ちゃん、あれは少し酷いと思う」

「私もそう思う」

「そうだよな……」


僕と一緒にいた珠里と、静かに僕達のことを見ていた(らしい)委員長が僕の言葉に注意してくる。

遥が走り去ってしまったあとだから余計にその言葉の重みはましていた。


「ねえ悠、遥のこと追いかけなくていいの?」


突然珠里が問いかけてくる。


「追いかけない方がいいんじゃないか? 遥落ち込んでいるだろうし」

「はぁ……、やっぱりお兄ちゃんはそう思ってるんだ」

「うーん、何か珠里達の苦労が分かったような気がする」

「え、ダメなのか?」


何故か珠里と委員長に否定される。

でも普通そうだろ? 傷心の人を追いかけて慰めるのか? 余計に落ち込まないか?

そんな疑問が僕の中でぐるぐるまわる。


「ほらお兄ちゃんそんな難しい顔をしないの。ーーそれにねお兄ちゃん、多分今の遥は訳もわからずただ闇雲に走っていると思うの、だからーー」

「だから?」

「万が一今の心が不安定な状態で知らないところに迷い込んだら危ないのよ。具体的には……言わなくても分かるよね?」


珠里の言葉を委員長が引き継いで説明してくれる。

しかし、危ないことだって?

遥は一人だ、しかも美少女。それが迷い込んだら危ないこと……


「ーーっ‼」

「さすがにお兄ちゃんでも分かったみたいだね、遥の携帯にはGPSがついてるから位置情報サービスを使えば場所が分かるはずだよ」

「悠君、君がしなきゃいけないことは……もう分かっているよね」

「ああ、あったりめぇだ」


委員長が俺に微笑んでくる。

自分でも分かる、昔の自分ーーいや、自分の素の性格が表に出て来ていることを。

昔の自分が嫌になって性格を変えていたがーーこんな事態ならしょうがないだろう。


「悪りぃ、すぐに帰っから先に会場に行っててくれ」

「うんっ、もちろんだよ悠兄」

「ハッ、昔の呼名で呼ぶなよ」

「いいじゃん、こういうときくらい」

「しゃーねーな。ーーじゃ、ひとっ走り行ってくるわ」

「いってらっしゃーい」

「え、うん」


俺は珠里の元気な言葉と、急に変わった性格に戸惑っている委員長の言葉を受けながら走り出す。

まずは遥が何処に行ったかを知るのが先だ。

俺は自分の携帯を取り出し、画面に地図を表示させる。

地図上には遥の現在地がGPSを通じて表示される。


「よし、あまり離れてはないな」


距離にして二キロ程。普段抑えている運動能力を全開にすれば五分半程で辿り着く。

ーーはずなのだが遥がまだ移動し続けているのでもう少し時間がかかりそうだ。

俺は校門をくぐり抜け遥の走ったルートをたどって行く。

それから六分後。

後一キロってところで遥の移動が細い路地裏で止まりやがった。

くそっ、変な奴に絡まれてなけりゃあいいが。

俺の頬に冷たい汗がしたたる。

ーー間に合えよっ‼


そして悲鳴が聞こえたのは遥のいる路地裏が目の前まで来たときだった。

俺は急いで路地裏に入り込む。

するとそこにいたのはーー


二人の金髪をした男にブレザーを脱がされて、スカートに手をかけられ、涙を流している遥の姿だった。


ーーこの様子ならまだことには至ってなかったみたいだな。かなりギリギリだったが。

ホッとすると同時に俺は頭の中の何かが来れる音を聞いた。


「てめえらうちの女に何してんだ?」


俺はドスの聞いた声で金髪二人に話しかける。

それを何と勘違いしたのか二人の下衆はゲラゲラと笑い出す。


「何だてめぇ、ピンチの姫を助けに来た王子さまか?」

「それとも何? この女お前の彼女か?」

『ギャハハハハ』


ーーとずっと下衆共がからかってくる。その間に俺は遥に近付き自分の着ていたブレザーをかけてやる。

近くで観察すると遥の服はボロボロになっていた。


「悠、ありがと」

「いや、まだ礼を言うんじゃねぇ。お前が礼を言うのはあの下衆共が地に這いつくばった後だ」

「え? 悠、ダメだよーー」


俺は反対する遥を片手で抑え、下衆共に話しかける。


「おいあんたら、うちの女に手えだしたんだからどうなるか分かってるよな?」


俺の言葉に下衆は一瞬呆然とした後また下品に笑い出す。


「何? 兄ちゃんが俺達の相手すんの?」

「お前バカか? バカなのか‼」

「ハンッ、残念だかその通りだ」


俺はそう言いながら下衆に向かって走り出し、一瞬にして辿りついた。

そして右側にいた男の顎に掌底をぶち込む。


「ガッ‼」

「こ、こいつ今どうやってーー」

「縮地だよ、聞いたことないのか?」


ーーまあ、無拍子も同時に使ってるんだけどな。

そんなことを考えながら俺は体を切り返し、その勢いを利用して左側の男に肘を叩き込む。


「くそっ、つえぇ……」

「チョロイな」


下衆を始末したので、遥の元へ戻る。


「遥、大丈夫か? その……悪かったな、嫌なこと言って」

「ううん、私もごめんね。迷惑かけちゃって……。それと、ありがと」

「おう」


俺は遥の手を取り立ち上がらせーーようと思ったのだが起き上がった勢いで遥が俺に抱きついてくる。


「お、おい。遥?」

「ひぐっ、ぐすっ……。ズズッ」


一瞬遥の胸の感触で戸惑ったが、遥の泣き声を聞いて戸惑いの感情は何処かに消え去る。

ーーそうだよな。こいつ後少しで強姦にあうとこだったんだもんな。


「遥、もう大丈夫だ。何があっても俺が守ってやるから」

「……うんっ、グスンッ」


その後も少しの間遥は俺の腕の中で泣いていた。

そして俺はそんな遥の頭を撫でてやることにする。


どうでしたか? 今回は悠が主人公らしさを見せた回だったと思います。

この話はあと二、三話で終わる予定です。

次回の予告をするとーー悠の強さの秘密、そしてお嬢様である珠里との関係が明かされる‼ かもしれない。

みたいな感じです。


誤字脱字や、こうしたらいいと思うなどなにかありましたら教えて下さい。

感想と評価もお願いします。


ではまた。

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