39:パーティー当日その3
お楽しみください。
ーー放課後。
私は今日が誕生日ということもあって少しワクワクしていた。
未だに珠里や悠は隠し事をしているけれど、もしかしたらその隠し事が誕生日パーティーかもしれないということに昨日の夜私は気付いた。
その考えに至ってからというものずっと私は寝れていないし、授業中は上の空で先生に怒られていたけど……。
ーーで、でもっ、誕生日パーティーの為ならしょうがないよねっ。
私は一人合点しながらガッツポーズをする。
「何してるんだ遥?」
「どうしたの? 何か嬉しいことでもあった?」
「え、ううんっ、何でもないよ」
私のガッツポーズを見た二人が若干引きぎみに私に話しかけて来た。
二人にパーティーの隠し事気づいてるよ、って言ったらどんな顔するのかな?
「ふふっ」
「おい、本当に大丈夫か遥?」
「何か悪いものでも食べたの?」
「大丈夫、大丈夫。私はいつも通り元気だよ」
「そうか、それならいいが」
悠は口ではそう言ったものの心配そうな顔をこちらに向けてくる。珠里も同様だ。
ーーああっ、もう。そんな顔されたら余計それを驚愕の色に染めたくなっちゃうよ。
「ま、遥が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろ。帰るぞ」
「そうだね、お兄ちゃん」
「あれ、悠? 生徒会室に行かないの?」
「ッ‼ ーーあ、ああ。今日は仕事がないらしい」
「ふーん、そうなんだ?」
またわざとらしい演技しちゃってー。
大方、会長と舞花先輩は先に会場に行って待機してるってとこかな?
ーーうーんもう我慢出来ないっ、バラしちゃえ‼
「そ、そうなんだ」
「ねえ悠、何か私に隠し事してない?」
「何を言ってるんだ遥?」
「そうだよ遥、私達が遥に隠し事なんてするわけないじゃん」
「えー、そうかなー」
「そうだよ」
悠達は否定してるけど私は見逃さなかったよ、二人の頬が引きつっていることを。
私はもっと意地悪したくなってさらに追い詰める。
「してると思ったんだけどなー」
「じゃあ、遥は僕達が何の隠し事をしていると思ってるんだよ?」
ーー待ってましたその質問っ‼
自然と私の口元がにやける。
「えー、私の誕生日パーティーとか?」
『え?』
すると二人の表情が困惑の表情に変わった。
うーん、私の欲しかったリアクションはこれじゃなかったんだけどなー。
がっかりする私の思いは次の悠の言葉によって絶望に変換される。
「何言ってんだ遥、僕達は誕生日パーティーの準備なんかしてないぞ」
「何まだとぼけちゃってるの? もうばれてるんだから正直に言っちゃいなよ」
「いや、だから何も隠し事なんてしてないって。第一に僕らもう高校生なんだからそんな幼稚ことしなくていいだろ」
「え? 悠?今なんて……」
何故だろうか、悠の言葉は私の中では理解できなかった。
ーーいや、したくなかった。
でも私の思いを悠は貫いてくる。
「お兄ちゃん言っちゃダーー」
「いやだから誕生日パーティーなんて必要ないだろって」
「ッ‼」
私はその瞬間頭が真っ白になった。
珠里が何か私に言ってくるけれど全く聞こえない。
今思えば悠の言葉は頭が真っ白になるまでショックを受けるような言葉じゃなかったかもしれない。
だけどずっとパーティーを楽しみにしてテンションが上がっていた私には、悠の言葉は重かった。
「ーー悠のバカッ‼」
「待ってはるーー」
だから私その場から逃げるようにして走り去った。
ーーそれからどの位経っただろうか?
私は暗い路地裏に迷い込んでいた。
頬を拭えば手には涙が付いている。
「私、何してるんだろ」
まるでバカみたいだ。一人で期待して一人で落ち込んで。
それでこんなわけのわからない場所まで走って来て。
「ハハッーー」
私はただ自嘲した。
そして少し冷静なる。
ーー家に帰らないと、悠達が心配しちゃうな。パーティーはしないけどケーキ位は食べたいなー。
そんなことを考えてる私のところに向かって二つの影が近づいてくる。
両方髪は金髪で耳にはピアスをしている。
そして二つの軽薄そうな笑みを浮かべた影は私に話しかけて来た。
「ねー、嬢ちゃんどうしてこんなとこにいんの?」
「あんた可愛いな、今から俺たちと遊びに行かない?」
「結構です」
「そんな硬いこと言わないでさー」
影の一つが私の手首をつかんでくる。
その瞬間、ーーゾゾッ、と私の背筋に寒気が走り、私はその手を無理矢理振りほどいた。
「やめてください。本当に人呼びますよ」
「つれねーな、ちょっと遊ぶだけだって。別に悪いよーにはしねーからさ」
影は性懲りも無く誘ってくる。
霧が無いと思った私は影の一つの顔をはたいた。
「行かないって言ってるの‼」
ーーパンッ。
細い路地裏に頬を叩いた音が響く。
そして一拍おいて二つの影が私の体を乱暴につかんでくる。
「ーーこの女っ‼ 優しく接してやればっ」
「糞がっ、ここで犯してやるっーー」
「キャアッ、やめて、誰かあぁぁぁ‼」
二つの影が私の着ている制服を脱がしてくる。
私も抵抗はするけれど所詮女の力じゃ男には叶わない。
だから私は最愛の人の名を心で叫んだ。
ーー悠っ、助けて‼
私の思いが届いたのだろうか、路地裏に一つの声が響く。
「てめえらうちの女に何してんだ?」
声のした方に私は振り向く。
そしてそこにいたのはーー昔の雰囲気を体に纏わせた悠だった。
楽しんで頂けましたか?次回は少しだけ悠が喧嘩をして学園ものにあるまじきチートスペックを発揮します。
ーーえ? 主人公がチートなのはテンプレだって? しょうがないだろっ、これは元々超テンプレな学園ものなんだからっ。
というわけで次回もよろしくお願いします。
ではまた




