30: 遥の心情
今回は遥をメインにおいた、短い話です。
遥以外の生徒会役員が誕生日パーティーの計画を立てようとして騒いでいる頃。
遥は一人でトボトボと帰宅路を辿っていた。
(なんでだろ、最近珠里と悠が私のことを避けてるような気がするな。ーー私、何が悪いことしたのかな?)
そして遥は一人憂鬱な思いに浸っていた。
悠や珠里は気付いてはいないが、遥は二人の変化に敏感に反応していたのだ。
「はぁ、どうしたんだろ……」
ーー今日珠里にケーキは食べにいかないって言ったらにやけてたし。
と、遥は内心で言葉を付け足しながら溜息を再び吐く。
(悠も会長と書類を職員室に出しに行っただけのはずなのにまだ姿がみえない。それになんだか最近隠し事してるきもするし)
最近変わってしまった二人の様子が遥の心を沈めていく。
さらに遥は誕生日のことまで思ってしまう。
(そういえば私の誕生日もうすぐなのに二人共興味なさそうにしているし。パーティーもやらないのかな?)
その後も学校から離れていくに連れて強くなっていく喧騒に反比例して遥の気持ちは落ち込んでいく。
(もしかして私嫌われてるのかな……?)
遥の落ち込み具合がさらに悪化してゆく。
ーーと、そんな時、遥は不意に後ろから声をかけられる。
「あ、遥じゃないーーって、どうしたの⁉ 顔凄いことになってるよ」
「あ、明里……」
遥に話かけてきたのは昨日一緒に遊んでいた学級委員の明里だった。
明里は遥の顔を見て不安げな顔をする。
「私、そんなに酷い顔してる……?」
「う、うん。出来ればなんでそんな悲しそうな顔で泣いているのか聞かせてくれる?」
「え?」
明里に指摘され、頬を触ってみると確かにそこは濡れていた。
ーー遥自身の涙で。
「あ、私……泣いて……」
「もしかして泣いてるのに気付かない位に落ち込んでたの?」
「そう、かもしれない」
遥はその落ち込んでいる理由を思い出し今度は声をあげながら泣き始め、しまいには明里の胸に飛び込んだ。
「ふぇ、ひぐっ……。なんで、なんでっ……。うわああぁぁんっ‼」
「ちょっ、どうしたの遥⁉ 」
そして明里は急にその場で泣き始め、自分の胸に飛び込んできた遥を抱きしめながらなぐさめる。
「遥、何があったか知らないけど私に話して、ね?」
「ひぐっ……、うん」
そうして二人が向かった先は、奇しくも珠里が行くと言っていたケーキ屋ーーもとい『洋菓子屋 時雨』だった。
どうでしたか? もしかしたら少し矛盾を感じた人もいるかもしれませんね。
今回の話を書くに当たって21話の方も少し改稿したので、読んで頂けると幸いです。
ではまた




