28: 一年前
予定通り過去話です。
一年前の調度この時期、中学の生徒会員で遥の誕生日パーティーをしていた。
人数は五人で、僕と遥と珠里に加えて年齢が一つ下の玲と苺がいた。
これはその時の一部始終であるーー
「ーーケーキ食べようぜ‼ もちろん俺作だ」
「イイねお兄ちゃんっ」
「先輩の腕を確かめさせて貰いますよ‼」
「期待」
「楽しみだよ悠」
俺たち五人は遥の誕生日を祝うために生徒会室を一部改造してパーティーをしている。
みんなテンションが上がっているのかいつもより声のトーンが高い。
ーーまあ玲だけはいつも通りことば少なだけど。
「けど食べるまえに遥には火を消してもらわないとな」
「あ、そうだった。いやー、ケーキが楽しみですっかり忘れちゃってたな」
「忘れてたって珠里、それはないだろ。なあ皆ーー」
「「私も忘れてた‼」」
「ーーって、おい‼」
玲を除いて全員が忘れていたらしい。
いや、玲も声に出さないだけで忘れてたのかもしれないが。
まあこんなことで怒っていたって仕方ない。
「でもまあ、早くケーキを食べたいのならどっちにせよ火、消さないとな。ーー遥よろしく」
「うんっ、分かった」
返事をした遥は、すぅっと息を吸い込み。
ふぅー、と火の付いた蝋燭に息を吹きかけた。
するとーー
「おお‼ 全部消えましたね遥先輩‼」
「見事」
「さっすが遥」
火が全て消えて俺以外の三人に遥はもてはやされる。
そして一拍置いてから全員の目が極上の獲物を見つけた猛獣の様になる。
「「「「ケーキだあぁぁぁぁっ‼」」」」
「おいお前らーー」
待て、と言う前に苺を先頭に四人はすでに切り分けてあるケーキに手を伸ばして食べ始めていた。
ーーお前らそんなに食べたかったのか。
「なあお前ら、これは遥の誕生日パーティーであって別にケーキの試食会でもなんでもないんぞ」
「ふぁひほひっへふんでふかへんふぁい。ふぁんひょうひはへーひほばべふはへひはふんへふほ」
「同意」
「こら苺、口に物を入れたまましゃべるんじゃない。はしたないぞ、後同意するな玲」
苺がいつも通り口に物を含んだまましゃべる。
ちなみに訳すとーーなに言ってるんですか先輩。誕生日はケーキを食べるためにあるんですよーーとなる。
「ごめんな遥、お前の誕生日なのに」
「いいよ別に、それに悠のケーキは美味しいしね」
そう言って遥は見守るような、少し寂しげな目ではしゃぎながら食べる苺と玲、そして珠里を見る。
ったくこいつは、主役のくせに色々我慢しやがって。
俺は遥の頭を撫でてやる。
「な、なんで急になでるの悠?」
「どうでもいいだろ理由なんて。なんとなく撫でたくなったんだよ」
「そっか」
その後も少しの間遥はくすぐったそうにしながらも俺に頭を撫でられていた。
ーー時間は変わって現在。
「ーー大体こんな感じです。この後にもプレゼントとかやって楽しかったですよ」
「そうか、やはりいいものだな誕生日とゆうのは」
「ですね」
僕は生徒会室が近付いてきたので話を切り上げた。
僕が話している間会長は静かに笑いながら聞き耳を立てていたので、楽しんではもらえたのだと思う。
「今年はこれ以上に良いパーティーにしたいんですよ」
「なるほどね、それでやる気なわけだ」
「ええ、まあ」
「なら、可愛い後輩のためにも頑張らないといけないな。楽しませみせるよ、遥も大声を出してはしゃげるように」
会長はそう言ってから生徒会室に入って行った。
僕はそんな後輩思いの会長の背中を見ながらこう言った。
「ありがとうございます」
「うん? 何か言ったか?」
「いえ、なんでもないです」
以上悠の過去話でした。
やはり昔の悠は自分のことを俺と言っていたんですねー。
それが何故僕になったのか、そのあたりも今後書いていこうと思います。
ではまた。




