20: 遥の誕生日
新章突入です
僕が副会長に指名されてから二週間がたった。
この二週間は特に問題もなく、僕も現状の生徒会に満足しているので、あの時のように昔の表情が出ることもない。
しかし新たな問題は目前に近づいてきていた。
ーー四月十九日、火曜日の朝。
僕はいつも通り弁当を作る為に早起きをしてキッチンに立っていた。
ーーちなみに遥と珠里はまだ寝ている。
ふと、手を洗っている時にカレンダーが目に入る。
そしてカレンダーの四月二十二日にハートマークが入っているのを僕は目にした。
「そっか、もうすぐなんだな」
ーー四月二十二日。
それは遥の誕生日である。
中学のときには生徒会室で盛大にパーティーを開いたのをよく覚えている。
「楽しかったなー、パーティー」
僕は昔のことを思い出し少し感傷にひたる。
ーーまたやりたいな。
しかし、感傷にひたっていたからだろうか、僕は珠里が隣にいるのに気づかなかった。
「ねぇお兄ちゃん、今年もやるの? 誕生日パーティー」
「珠里っ、いつからそこにっ⁉」
「『楽しかったなー、パーティー』から」
「そ、そうか」
珠里は珍しく早起きをしていた。
いつもなら一番最後にリビングにやって来るのに。
「お兄ちゃんさっき、ボーっとしてたけどなに考えてたの?」
「ああ、去年の遥の誕生日パーティーを思い出して、今年も何かやりたいなーって」
「そうなんだ、パーティーは私もしたいなっ」
「やっぱ、そうだよな。ーーよし、やるかパーティー‼」
「ホントっ⁉」
「もちろん」
ーーそうだ、またパーティーしよう。
珠里の賛同もあり僕はそう思った。
ーーやるならとことんこだわって楽しいのにしてやるっ。
そう思い僕は隣にいる珠里に意見を求める。
「なあ、珠里はどんなパーティーをしたら楽しいと思う?」
「え、急ににそんなこと聞かれても困るな……」
「やっぱりすぐには思いつかないか」
「うーん、そうだね……」
二人そろって頭を抱えてから十分程経った頃、珠里が何かを思いついたのか急に話しかけてくる。
「そういえばね、去年のパーティーの時にサプライズで、パーティーまで遥に秘密にしとけばもっと面白くなるんじゃないかなって思ったんだけど。
ーーお兄ちゃん、どうかなっ?」
「サプライズか……」
去年は事前に遥にパーティーやるって伝えてたからな。
去年と同じってゆうのもつまらないしいいかもしれない。
「うん、それ採用な」
「やたっ」
珠里が嬉しそうにその場で跳ねる。
しかしそうと決まればーー
「今日からパーティーまで遥には秘密な」
「うんっ」
「それと会長達にも手伝ってもらおう。パーティーは大人数の方が楽しいしな」
「分かったよ」
勝手なことを言っているが会長も舞花さんも頼めば了承してくれるだろう。
会長はパーティーとか好きそうだし。
「じゃあ今日の放課後から準備開始だ」
「放課後だね」
「そしてくれぐれも遥にはばれないように」
「分かってる」
「うん、私がどうかしたの?」
「「え?」」
珠里の声と同時に遥の声が聞こえて僕と珠里は思わず間抜けな声を出す。
しかも、もしかしてーー
「ーーもしかして僕達の話聞こえてた?」
「え、聞いてないけど。何の話してたの」
「そ、それは……。あっ、珠里が今日は遥より早く起きたから珍しいなーって、アハハ……」
「そうなんだ」
「そうなんだよ」
ーーあ、危ねえぇぇ‼
危うく遥にサプライズのことを聞かれれとこだった。
まあ、バレなかったからいいけど。
僕は珠里に目配せして話の終わりを伝える。
「ところで悠、今日のお弁当は?」
「え?」
「や、だからお弁当」
「あーーっ‼」
しまったっ‼
珠里と話していてすっかり忘れてたっ。
しかももうあまり料理する時間が残っていない。
「悪い、今日はちょっと手抜きになるけどいいか」
「いいけど急いでね」
「おう」
それから僕は全力で食材と戦い、時間ギリギリに間に合わせた。
ーーしかし誕生日パーティー、張り切って頑張るぞ‼
新章一話目、どうでしたか?
感想や誤字脱字があったら教えてもらえると嬉しいです。
ではまた




