そんなむかつく貴方のこと
最初はただの無関心だった。
クラスの中に、やけに無愛想な奴がいるなぁ、とか。そんな所だったと思う。
偽物の告白をした時は、気持ち悪い奴だって思った。だって、人が考えていることをすばすば当てて来るんだよ? 自分が見透かされているのって、凄く不快なんだ。
彼に助けられた時は、ただ、怖かった。彼に触れそうになった距離感で、やっと私は気付いたんだ。気付いてしまったんだ。君が纏う、とても恐ろしい『冬』のことを。それはとても、近寄りがたくて、どうしようもないぐらい忌避しなければならない、人として生まれたなら、それを許すことができないような、そんな途方も無い嫌悪感と恐怖。だから私は、彼の視界から逃げるように居なくなった。
冬花ちゃんの記憶がなくなった時は、やけに寂しかった。いけ好かなくて、怖いだけの人だと思っていたのに。
もう一度彼と向かい合ったとき、私はとても苛々した。あの『冬』の雪だって溶かしてしまうような、そんな苛立ちだった。
自分さえよければいい、みたいな、そんな自己満足の正義の塊が許せなかった。自分が呪いに掛かっているからって、全部を全部投げ出したのが、気に入らなかった。その呪いが全てで、自分を好きになる奴なんていない、って思っているのがむかついた。
そして、今は――――
冬治君に抱えられて辿り着いたのは、とある町外れの廃ビル郡だった。もう、老朽化が進み、立ち入り禁止のテープが張られている部分が多いのだが、冬治君はどんどん迷わず階層を登っていく。
「ここなら、しばらくは大丈夫です」
「ぎゃん!」
そして、とある部屋に辿り着くと、そのまま私を床に放り投げやがりました。
「い、いったぁ……このまま床が抜けたらどーするんだ!?」
「心配しないでください。この部屋だけには特別な処置を施していますので、爆撃でもされない限り壁にヒビすら入りません」
冬治君は淡々と私に説明すると、そのまま部屋の奥へ進み、設置されていたベッドに力なく倒れこんだ。
「ふぅ……さすがに、ちょっと休ませてください。少しばかり、怪我をしましたので」
「少しばかりって……」
明らかに冬治君が強がっているのが、分かる。
だって、左腕は肩口より少し下の部分からきり飛ばされて、制服ごと胸や腹に幾つも斬られた痕がある。傷口はなにやら、氷のようなもので止血されているので、これ以上血が流れる心配はないけど……斬られたときに付着した血液だけで、真っ白だったシートがべっとり赤に濡れている。床のフローリングだって、点々と赤い雫が。
「き、救急車を」
「無理ですよ。現代医学じゃ治せないレベルの傷ですから。だから、こうやって治療魔法に専念しているんじゃないですか。ああ、心配しなくても斬られた腕はその内生えますので」
「嘘つくな! トカゲの尻尾じゃあるまいし!」
「……まぁ、もう俺は全うな体じゃないので、そこら辺のツッコミは勘弁して欲しいですね」
無表情にそんなことを言っている冬治君だけど、息が荒い。普段は、本当に呼吸しているかどうか心配になるぐらいに静かなのに。
とりあえず、少しでも楽になれるように、何か無いかとこの部屋を見渡すのだが……ダメだ、冬治君が倒れているベッド以外、ほとんど何も無い。恐らく、着替えが入っているロッカー以外は、家具すら無く、ただ窓にカーテンがあるだけ。本当にただ、ベッドと着替えが置いてあるだけのワンルームだ。
「お気持ちはありがいですが、ここには本当になにもありませよ。緊急に身を隠す時にしか使いませんから。後、素人の貴方に手当てされるなんて、恐ろしくてとてもとても」
「……冬治君? 貴方はさ、どうしていつもいつも、人の好意を無碍にするかな?」
「はは、性分でして」
「そんな性分、瀕死の時ぐらい捨てとけ!」
まったく、こんな状況でも私をからかうんだな、こいつは。なんだか急に、心配している私が馬鹿馬鹿しくなってきたというか、このまま帰ってやろうか?
「すみません。謝罪しますので、それはやめてください」
「人の心を無断に読まないんじゃなかったの?」
「ケースバイケースなので。そして、本当に危ないのですよ。下手をすれば、真っ先に貴方を狙われる可能性がある」
「……むぅ」
確かに、よく分からないが、楓さんがいきなり豹変して切りかかってきたし。詳しい事情を知るまでは、冬治君の隣に居た方が安全だ……というよりも、このまま放っておくと、冬治君がさすがにやばい気がする。
「頼みますから、今は俺の側に居てください」
「ふん、しょーがないなぁ」
表情こそ無表情だったけど、冬治君の目つきは真剣そのもの。そこまで頼まれたらしかたない、三日ぐらいなら君の側に居てやってもいいと思う。ま、本当はこいつと同じ空間に居るなんて、腹立たしいんだけどね。
「でもさ、その代わり……色々話してもらうからね?」
「えっとですね、大森さん。どうして、そんな手つきを? やばいですって、さすがに傷口を鷲掴みとかは洒落になりませんので」
「さーて、それは冬治君の態度次第だよ」
「…………実は大森さんってSッ気ありますよね?」
「どこかの誰かさんに対抗するために実装されたんだよ、きっと」
にっこりと、最上級スマイルを浴びせかける私。こういった時には、睨みつけるより笑いかける方が効果的だと最近、学びました。
「はぁ、そりゃ貴方も当事者になってしまいましたがね。正直、聞いてて気分が良い話じゃありませんよ?」
「それでも、何も知らないでいるよりはマシだよ」
「あんまり世界の裏側に関わることはお勧めしませんね」
「裏側の果てまでとっぷり使っている人間に言われたくない」
「だからこそ、忠告していると考えてくれませんか?」
「忠告するぐらいだったら、表側に戻ってきて、私の側にいればいいのに」
「…………へ?」
一瞬、私も自分が何を言ったのか、さっぱりわからなかった。
言った本人が分からないんだから、当然、言われた冬治君なんか軽く呆けて口を半分開けている。これ以上無いくらいの、間抜け面だ。私も同じような顔をしていなければ、記念に一枚写真でも撮っておきたいぐらい。
「と、とにかく! 冬治君は今回のことについて、洗いざらい話しちゃえばいいの! わかったら返事!」
「あいあい、キャプテン」
冬治君は口角を僅かに吊り上げると、どこか嬉しそうに苦笑した。
●●●
ああ、失敗した、失敗した!
目の前に居たのに! 殺せたのに! 殺せたのに! あいつの体を分割して、無理やり生かして、死にたくなるような苦痛を味あわせてやれたのに!
「…………大丈夫、まだ、大丈夫」
落ち着くんだ、私。
怒りに飲まれると、肝心なときにヘマをする。怒りを溜めるんじゃなくて、静かに切れるんだ。心は灼熱でも、頭は絶対零度を保って、行動。
「あいつ相手に有効な切り札が一つ増えたし。致命傷とまでいかなくても、腕の一本は切断できた」
私は、あいつが落としていった左腕を、思い切り踏み潰す。すると、肉が潰れる感触よりも、ガラスが割れるような感触と音が響き、粉々に腕は砕け散った。もはや、原型は留めておらず、ただの赤い結晶が砕けた後だけが、私の足元にある。
「ん? なにこれ……やっぱり、あいつも【魔法使い】みたいに化物になったのか? ああ、多々良さんが言うには、もう半分ぐらいしか人間じゃないらしいしなー」
化物だろうがなんだろうが、どちらにせよ、私が斬り殺すことは確定だしね。
「ふぅー……っと、ててて」
軽く肩を回すと、ぎちぎちと筋肉の筋が嫌な音を立てる。
無理もない。あんな無理な動きをしたんだ。桐生冬治のような化物でなければ、筋肉が痙攣して、内臓が圧力でダメージを受けてしまう。私は【スクリブル】と『アキレウス』の力で、何とか平静を装っているだけで、恐らく、後一回の全力戦闘で体は完全に自壊するはずだ。
「でも、構わない」
復讐が果たせるのなら、この命くれてやる。
全ては、復讐のために。
きっと、あの弟はそんなこと望んじゃいないだろうけど。いや、むしろ――
『姉さん、だからさ。姉さんはきっと僕のこと――――』
「っつ!」
頭を振って、ノイズを払う。
くそ、最近なぜか弟のことを思い出そうとすると、頭の中にノイズが走る。意味が分からない。どうして、最愛の弟のことを思い出そうとして、頭を痛めなければならないのか?
「そうか、これもお前の所為か」
きっとそうだ。
桐生という親子から、私にかけられた呪いなんだ。あの男を殺せば、復讐さえ果たしさえすれば、きっと……また、あの時みたいに。
「まっててね、歩。姉さん、頑張るから」
●●●
「えっと、つまり大殺戮を起こした水面歩の姉が、貴方を親父さんの代わりに殺そうとしているの?」
「さくっと言えば、そうなりますね」
「逆恨みどころか、ただの八つ当たりじゃん」
「そういう復讐鬼にはそういう理屈は通じないんですよ。もう、一度復讐に囚われてしまったのなら、自分の気が済むまでか、自分が壊れるまで駆動するしかない。彼女は、そんな哀れな鬼なんですよ」
冬治君は淡々と語る。
自分のことだというのに、狙われているのは自分の命だというのに、まるで、今日の朝ごはんのレシピでも語るみたいに、なんでもないように話している。
「どうやら、死ぬ気で装備を固めてきたみたいで、厄介極まりないですよ、まったく。おまけに、どこかの誰かさんがいつも何か、復讐鬼に殺されかけているし」
「なっ! あれは仕方ないじゃん! 元々、私は冬治君が居なくなったから、必死で探していたのに!」
「頼んでもませんし、いい迷惑ですよ。何のために、俺が身を隠していたと思っているんですか? 出来る限り人間関係を復讐鬼に知られないためですよ。それを、貴方といったら」
「うぐ……」
悔しいけど、反論できない。
いや、色々言いたいこととかはたくさんあるんだよ? でも、実際に私を庇ってこんな有様になっているのは事実なわけで。
「ごめん、冬治君。言い過ぎた……ごめん、なさい」
あれ? やばいやばい、なにこれ? なんか、視界が歪むし、勝手に目から変な液体が出てくるんだけど。え? え?
「……ごめん、ね……ひっく」
「ちょ、大森さん!?」
あ、冬治君が無表情の仮面を崩した。
「すみません、俺の方こそ言い過ぎました! えっとその、ぶっちゃけ大森さんにそこまで探してもらえるのは嬉しい限りですし、今回のは本当に運の巡りが悪かっただけですって。個人的には大森さんが傷付かなかっただけでも、ラッキーだとか思っていたわけですが、そんなことを言ったら、「貴方はまた自分の事を無視して話す!」とか怒られてしまいそうだったので、その……ええい、とにかく悪いのは全部俺ですから!」
慌ててベッドから起き上がろうとして、左腕が無いことを忘れていたのか、そのまま床に転がり、体を強打。さすがにこれは痛かったのか、ふるふると体を痙攣させている。
「だ、大丈夫?」
「なんとか」
あ、冬治君の珍しく慌てる姿を見てたら、なんだか涙が止まりました。ということで、慌てて目元を拭って、なんでもなかったことにする私。ダメだって、女の子がそんなに簡単に泣いちゃ! 女の涙は必殺技なんだからさ!
「あ」
「あ?」
……涙で思い出したよ、この野郎。
「ていっ!」
「傷口を的確にビンタぁ!?」
あまりに苦痛に悶絶する冬治君。
ふん、私に女の涙を二回も流させた罰だ。
「冬花ちゃんがいきなり冬治君の記憶を失って、まるで、最初から冬治君が居なかったみたいになっているだけど、あれってどういうこと?」
「……さて、俺には何がなんだか」
「えいっ」
「いたたたたた、わかりました、わかりましたよ、もう」
ふふん、なんだか今日は私調子いいぞ、と勝ち誇ってみたいのだが、あいにく、怪我人苛めて愉快になれるほど私は残虐じゃない。
でも、いつも黙って消えて、私なんて関係ないって拒絶する冬治君が、ちゃんと理由を説明してくれるのが嬉しかった。ちゃんと、私を見てくれているんだって、思えた。
「実はですね、もうすぐ俺は死ぬんですよ。存在全てを無かったことにして」
そんなささやかな嬉しさは、非常な現実に潰された。
「え?」
理解できなかった。
「冬花の記憶が失われたのは、俺に取り憑いている幽霊と契約して、魂の欠片を与えることで、とある魔法を行使したからです。詳しい原理は省きますが、魂とは俺の存在を構成している根本です。それがなくなったのですから、俺の存在が削られたわけですね。つまり、俺が冬花の兄だった部分の存在が無くなったわけです」
冬治君の口から出る言葉が、わけ分からなかった。
「だからですね、これは遅かれ速かれ、起きた現象で――――」
「嫌だ!」
気付くと、私は冬治君の胸元に掴みかかっていた。
「やめてよ! そういうの、本当にやめてよ! 大事だったんじゃないの!? 自分の妹のこと、世界一の宝物だって思ってたんじゃないの!? それを、どうして貴方はそんな、そんな風に! よりにもよって、自分を一番傷つけて!」
「……俺のことなんて、どうでもいいじゃありませんか、大森さん」
「どうでもよかったら、こんなに探すわけないだろ、バカ!」
ぱぁん、と思いっきり冬治君の頬を叩く。
怪我人とか、そういうのは全然考えないで。とにかく、このバカが止まってくれればいい。残された人の気持ちに気付いて、止まってくれればいい。そう願ってぶってやった。
「痛い、ですね」
「当たり前だ、バカ! 痛くしたもん!」
必要だったら、もっと痛くしてやる! このバカが目を覚ますなら、自分の拳が潰れてもいいから、グーで殴ってやる!
「あははは、そんなに熱くならないでくださいよ。どうせ、俺が死んだら、覚えている人間なんて誰も居ないんです。大森さんも含めて」
だから、と言葉を繋いで冬治君は言う。
「もう俺なんかに関わらないでください。これ以上は、どちらの人生にとっても不利益になるだけですから」
絶対零度の、拒絶の言葉を。
今にも凍えてしまいそうな、『冬』の言葉を。
「あ……」
幻視するのは、真っ白な絨毯を敷き詰めたような雪原。
空から振る雪は私の体温(存在)を奪う。
この世界は決して、他者を許さない。
冬の王以外の物は全て、容赦ない存在を終わらせる。
人であるなら、忌避するしかできず、それを認めることはできない。だから、これを内包する冬治君を認められる人なんて居ない。
誰も側に居ることなんてできない。
「……っけんな」
そんな風に諭してくる『寒さ』が苛々する。
ごちゃごちゃうるさい理屈で、勝手に閉じこもろうとする冬治君がむかつく。
そしてなにより――
「ざっけんな! 乙女を舐めてんじゃねーよ!!」
私の気持ちをそんなわけわからない物に、捻じ伏せられてたまるか!
「いいか、よく聞けよ、この鈍感男!」
私は掴んだ胸元を引き寄せ、思いっきり冬治君の額と私の額をぶつけて、叫ぶ。
「世界の裏側とか! 不利益とか! 呪いとか! そんなこと知るか! 私は、私が貴方と一緒に居たいから、探しているんだ! その気持ちを勝手に否定するな!」
『冬』がなんだ。
そんなもの、私の炎で溶かしてやる。
女子高生のわけの分からない苛立ちとか、青春期の悩みだぞ。たかが、【魔法使い】程度の呪いが敵うと思うなよ。
掴んだ手から、額から、襲ってくる寒さを、胸の内から湧き出る灼熱で溶かす。いいや、燃やし尽くす。
「世界中の誰もが自分を嫌う? 好きにならない? はっ! どこのネガティブ男だよ!? 少なくとも、貴方の前の私は、こうやって貴方に触って、叫んで、ここに居る!」
この燃え上がる気持ちの正体は私にだって分からない。
けど、少なくとも、『冬』の寒さにへこたれてしまうほど、やわな感情じゃない。
「たとえ貴方が死んでも、私だけは絶対に覚えてやる! 私が思いっきり泣いてやる!」
「……やめてくださいよ、そんな」
か細い声で返されても、全然耳に入らない。
格好つけた敬語で誤魔化している内は、私の炎は逃がさない。
「いいか! 凄く泣くからな! 思いっきり引きずってやるからな! 冬治君が死んだ所為で、凄く落ち込んでやる! ずっと覚えて、悲しんでやる!」
「……やめろ」
「そんでもって、冬花ちゃんに愚痴ってやる! 冬花ちゃんが思い出すまで、私は絶対に諦めないし! へこたれないからな!」
「やめろって言ってんだろうが!」
無表情の仮面を投げ捨てて、冬治君が叫ぶ。
体中から『冬』を撒き散らしながら、慟哭する。
「どうしようもねーんだよ! 自業自得の末路なんだよ! 人殺しは幸せになっちゃいけないんだよ! そうじゃなきゃ、この世界はどれだけ醜いんだよ!」
だから、私も精一杯喚いて返してやるんだ。
「知るか! 世界なんて知るか! こちとら、平凡な一市民だ! 女子高生は世界なんかよりも、同級生が死ぬか死なないかの方が大切なんだよ!」
「分かれよ! んでもって、俺から離れろよ! 今更、なんだよ! 今更、俺に歩み寄る奴がいても、全部手遅れで終わりなんだよ! 最後まで、俺の流儀を貫かせてくれよ!」
涙を零しながら、冬治君は声を震わせいた。
彼の孤独はどれくらいだったんだろう?
彼の絶望はどこまでだったんだろう?
誰よりも自分に厳しい君は、きっと、痛みや苦しみはBGMでも口ずさみながら誤魔化すくせに、肝心なところは誤魔化しもせず、ずっと……誰にも頼れず。
でも、んなこと、私の知ったことじゃない。
「貴方の流儀なんて知るか! 私は私がやりたいようにやっているだけだ! 貴方の都合なんか知るか! 貴方の指図なんか受けるか! 勝手に自己満足で閉じこもろうとするバカが、乙女の気持ちを否定するんじゃねー!」
力任せに冬治君をベッドに押し倒す。
うん、やっと分かった。
冬治君、貴方はとてもむかつく。貴方のことを考えるだけで、胸の中からいろんな感情が燃え上がってしまうほどに。
でもさ、気付いちゃったんだ。
「……ここまで言ったんだから、察しろよ、バカ」
私は、大森杏奈は…………そんなむかつく貴方のことが、本当に嫌いで。
「どうでもいい男のために、こんなことしないってば」
わりと、好きなんだ。
少なくとも、三回目の涙を流して、冬治君に抱きついてやるぐらいには。
「……勘弁してくださいよ、大森さん。これじゃ、誤解しちゃいますって」
うっさい、人の気持ちがわかるくせに。
本当に往生際の悪い奴。
だからしょうがなく、私が止めの一言を言ってやるのだ。
「いいよ、誤解しても」
燃え上がる私の想いで、貴方の『冬』を溶かしてやるのだ。




