表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/120

02



「い、今は突然だから、ちょっと舌が回らなかっただけって言うか、」


「…はいはい。じゃあ深呼吸でもしましょうね。」



だから、落ち着いてからにしましょうって言っているのに。


私の呆れを含んだ視線を受け、ホノカ様は早口でそう捲し立てた。恥ずかしいのか、頬が薄紅色に染まっている。



憮然としつつも、しっかり深呼吸しているのが可愛い。…ツボるなぁ、ホノカ様の行動。


シャロン様のような、正統派の、誰もが同意する可愛さでは無い。

お馬鹿な子ほど可愛い…という心境に近いです。



すーはーすーはーと深呼吸を繰り返すホノカ様を、生暖かい目で見てから、私は物陰からルリカ様の様子を窺った。



「…………ん?」



何処行くんでしょうかね…と考えつつもルリカ様一行の動向を見守っていた私は、ふとある事に気付いた。

思わず小さな声が洩れる。



「…なに?どうしたの?」



ソレを拾ったホノカ様は、深呼吸をやめ、私の方ににじり寄った。ひょっこりと、私を真似る様にして、物陰から顔を出す。



好奇心旺盛なお子様にため息をつき、もう少し後ろに下がるよう指示しながらも、私は彼女の問いに答えた。



「…少し気になったのですが……確かルリカ様の護衛は二人ではありませんでしたっけ?」


「…そう…だったかしら?覚えていないわ。」



私の疑問に、ホノカ様は考え込む様に視線を彷徨わせた。そして暫く沈黙した後、困った様に眉を下げる。


…ホノカ様は、引きこもる前も、自分の事で精一杯でしたでしょうからね。

周りを見渡す余裕は無かったから、そんな事まで覚えていないのでしょう。


私は事件に注目していましたから、カンナやイオリから聞いた事がありました。


その時は、賊がルリカ様のお部屋の近くで目撃された為、彼女だけ護衛が二人、と聞いていたのですが…



「…何で三人いるの。」



今、ルリカ様を守る様に辺りを警戒している護衛は、三人いる。どゆこと。



「…二度目の事件を受けて、増員されたのかしら…?」


今回も、ルリカ様のお部屋近くで賊が目撃された。

ルリカ様の護衛が増えていても、何ら不思議な事では無いけれど…、


イオリもカンナも、そんな事言っていませんでした。



そこまで報告する義務は無いと思われるかもしれませんが、イオリは仕事に関して、とても真面目で細やかですし、カンナは私が事件の事を気にしていると知っている為、何か動きがあったらその都度教えてくれます。



「…しかも、何で鎧が違うのかしら。」



三人の護衛の内、一人だけ鎧が違う。

同じ任務についているにも関わらず、何故?



「………私兵じゃない?」


私の呟いた言葉を拾ったホノカ様が、ぽつり、と呟く。



「…私兵?」



聞き慣れない言葉に、問い返す私に、ホノカ様は小さく頷く。



「エイリ家で元々雇っていた兵士か、若しくはルリカ様の為に、吏部尚書が新たに雇ったんじゃないかな?」


「…………。」



成る程。


つまり、近衛軍の様な公の機関に属さず、個人的に雇った兵士の事ですね。



「それで鎧が違うのね………じゃなくて!…いいんですかソレ。」



許可が出るとは思えないんですが。


そんな事を一件許せば、他のお嬢様方のご家族も、『ならウチの子にも!』ってなるかもしれませんし。


そしてそれら全てを許可してしまえば、規則や取り締まりもだんだんと緩くなり、結果、賊を正面玄関から招き入れてしまう事態になりかねない。



…それとも、今回は特別措置として許可がおりた?



「…分からない、けれど……もしかしたら、吏部尚書が陛下の許可も得ずに勝手をしているのかもしれないわ。」


「…………。」



それがもし本当なら……なんて、頭の痛い話でしょう。



.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ