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02



「不審者って…どなたか目撃したのかしら?」



お風呂から上がり、カンナに香油を塗られながら、私は聞いてみた。


詳しくはまだ教えてもらってはいないけれど、後宮に侵入した何者かがいたらしい。


私を含め側室の方々は、自室で大人しくしているように言い渡されております。


後宮の入り口には増員された衛兵の方々が厳重に警備し、中も女性の兵士さんが見回りをしていて、何やらとても物々しい雰囲気ですね。



「なんでも、エイリ家の侍女の方が目撃なさったそうですよ。不審な人影を目撃して衛兵を呼んだそうですが間に合わず逃げられてしまったそうです。」



カンナは手を止めずに、私の問いに答えてくれた。


エイリ家というと、ルリカ様のところですね。



「………………。」



肌や髪のケアを終え、カンナにお礼を言って私は立ち上がった。



「…何が、目的なんでしょうね。」



ポツリ、と呟く。


私のまわりはとても平和だったので、いまいち実感出来ておりませんでしたが、数年前まで戦争をしていた国です。敗戦国の残党…もしくは他国のスパイの可能性もあるのでしょうね。



ただ、危険を冒してまで侵入する程のメリットが、後宮にあるのでしょうか。


まだ現皇帝陛下には、正室…お后様がいらっしゃいません。

15人いる側室の中の一人二人攫ったところで、身代金がとれる程度ですかね。国家機密を一介の側室が知る筈もありませんし。



「……………。」



カンナが退室したので、寝室に行きベッドに仰向けになって、天井を眺めながら私はまだ悶々と考えていた。



…恨み、でしょうか。


皇帝陛下には手が出せないから、側室を攫って見せしめに殺す…とか?

…でもそれも、正室…もしくは寵妃くらいでなければ、インパクト的には薄いですね。



………本当に、何が目的なんでしょう。



こんな状況じゃ、ホノカ様達の問題を解決するどころか、シャロン様やアヤネ様に会えません。


……お二人は、大丈夫でしょうか。


シャロン様はとてもか弱いし、アヤネ様はしっかりしているけれど、武術の心得なんてないでしょうし…完全に頭脳労働タイプですから。



「……………心配です。」



後、陛下はご無事でしょうか。


きっと今頃お仕事に追われているのでしょうね。この問題を含め。


ただでさえ、戦争の爪痕の残る国を導き治めるのは、想像もつかない位、大変な事でしょう。それなのに、また問題が起こるなんて。


あの方のお体が心配です。



……ああ、でも、お仕事に追われている位でいいのかもしれません。

いつまた侵入者が来るか分からない後宮になんて、来ないで欲しい。



此処は貴方にとって、ゆっくり、安らげる場所であって欲しいのです。



「………早く、問題が解決してくれるといいのに。」



それまでは、寂しいですがペットはペットらしく、ご主人様の帰りを待っています。



…あんまり捕まらないようなら、大人しくもしてられないかもしれませんが。



不穏な事を考えつつも、私は寝台脇に置いた灯籠の灯を消そうとしました。



…その時です。



ガタンッ、

「…っ!?」



大きな物音がしました。


私は咄嗟に、武器になるものを探し、テーブルの上の盆を引っ掴んだ。



ガタ、バンッ


荒々しい音をたてて、踏み込んで来る誰か。…侵入者にしては堂々としすぎている。



頭の隅で疑問を感じつつも、お盆を構えていると、



バンッ、と荒々しく扉が開き、



「…サラサ!!」


「…へ、陛下っ?」



室内に入ってきたのは、私の大切な旦那様でした。



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