表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/120

側室(仮)の不安。



ドンッ、

「……っ、」



勢いよく突き飛ばされた私は、なんとか踏み止まり無様に転がる事を免れました。


転ばなかった私に、舌打ちをしたお嬢様は、盛大に顔を歪める。

……お顔が般若みたいになってますよー。



「あら、ごめんなさい。…目立たないからぶつかってしまったわ。」



ハン、と鼻で哂いながら見下した視線を下さるのは…やはりルリカ様でした。


…嫌がらせにひねりが無いなぁ、なんて事を考えながらも私はニッコリ笑む。



「大丈夫です。ルリカ様こそ、お怪我はありませんか?」


「…っ、……ありませんわっ!」



私が平然と返すと、ルリカ様は元々吊り上がり気味の(まなじり)を更に吊り上げる。

顔に、『ばっかじゃないの!!』の書いてありますが、是非声に出して言っていただきたい。



「…行きましょう!」



全く堪えた様子の無い私に、ルリカ様は苛立ちを募らせ、足音荒く立ち去って行った。



「…………ふぅ、」



小さくなっていく背中を見送って、私は長く息を吐いた。



あれから、小さな嫌がらせが多発しております。

…まぁ、本当に小さな嫌がらせなんですけどね。



こうやって出会い頭にぶつかられたり、聞こえよがしに悪口を言われたり、部屋の前にゴミが置いてあったりとか。中学生か。


こんな事くらいで私の何を挫こうというのですか。言っときますが私、相当図太いですよ。



「…あの、」


「?」



仁王立ちしていた私に、後ろから控え目な声がかけられました。


振り返ると其処にいたのは…



「…ホノカ様。」



フワフワの赤毛と、目尻が下がった柔らかな翠の瞳。癒し系美女、ホノカ様です。



「…ごめんなさい。私のせいで。」


「いいえ。」



申し訳なさそうなホノカ様は、多分今のやり取りを見ていたのだろう。

私は首を振って苦笑した。



「ホノカ様のせいではありませんよ。私が子供だったんです。」


「そんな事…貴方は私を庇って下さっただけではありませんか。」


「やり方がまずかったんです。…もう少し穏便な方法もあったんでしょうし。」



声高に正義を叫ぶだけで争いが無くなるなら、誰も苦労はしません。

私がするべきなのは、ルリカ様のプライドをへし折る事では無く、皆様の溝を埋める事です。



それが現段階では難しくとも、あの席では話をやんわり逸らすなり、何か方法があった筈。



…本当に、私はまだまだです。



「…そんな事ありませんっ!」


「っ?」



突然、声を荒げたホノカ様に、私はビクッと肩を竦めた。


ど、どうなさったんでしょう。



「サラサ様は、何も悪くなどありません!人を貶めるルリカ様が悪いのです…!!」


「…ほ、ホノカ様?」



激昂したホノカ様を、私は唖然と見ている事しか出来なかった。


きっと積もり積もったものがあるのでしょうが、それにしても…。



「あの方もあの方のお父上も、人を見下してばかり…!権力を振りかざすあの方々に、どれ程の方が涙を飲んだ事か!」


「ほ、ホノカ様!お声が大きいです!」



ヒートアップしてきたホノカ様の声が、だんだんと大きくなってきたので、私は慌てて止めた。

こんな、何処に目や耳があるか分からない場所で危うすぎます。



「…あ、……ごめんなさい。」



ホノカ様は、我に返ったのか、項垂れた。



そしてペコペコ頭を下げながら、ホノカ様は去っていったのですが…



なにやら多方面から恨まれている様子ですね…ルリカ様親子は。



不穏な何かを感じながら、暗雲が立ち込める空を私が仰いだ日から、数日後の話です。



後宮に、何者かが忍び込んだらしい、との情報が流れました。



.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ