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03



「今日のご衣装は、とても素敵な色合いね。何処の染め物かしら?」


「父が西国から取り寄せて下さった布で仕立てましたの。何でも、一流の染め師が…」



まぁ、おほほ…、と。


延々と続く興味の無い話題に表面上だけ合わせる様に、私は引きつる顔で笑った。



…何ですか、この苦行は。




…私がこんな精神的苦行をつまされているには、訳があります。


説明する為には、少しだけ時間を遡りましょう。






「先ずは敵を知る事が大事よね。」



アヤネ様は優美な仕草で足を組み換えながら、そう言った。



て、敵ではありませんよ。言いたい事は分かりますが。



一致団結した私達はその後、お茶をしつつアヤネ様に色んな事を教えてもらっておりました。



簡単に各国の情勢から、鴻国の現状など、


そして側室の方々のお話を聞いている時に、アヤネ様はそう切り出したのです。



「…知るって言っても、…どうやって、ですか?」



おずおずと訊ねたシャロン様に、アヤネ様はニッコリと笑んだ。



「実は私、お茶会に誘われているの。…いつもなら面倒だから、適当な理由をつけて断ってしまうのだけれど…」



つ、つまり



「…それに参加しよう、って事ですか?」


「そう。」



うわー…。

ついに来ました!お茶会!

小説などでは、後宮のお茶会=女の洗礼、戦いの場として書かれていますが、実際はどうなんでしょうか?



「…ドキドキしますねー!シャロン様………あれ?」


「………………。」



好奇心半分、怖いもの見たさ半分…あれ怯えはどうしたよ?な私が興奮気味にシャロン様を見ると、シャロン様は………ピルピル震えておりました。


か、顔が蒼白いです!



「シャロン様っ?どうなさいました?」


「……わ、わたくし…」



忘れておりました…小鳥さん……いえ、シャロン様は私と違って繊細な方。

女同士の戦いの場に、勇んで赴ける様な方ではありません。



「ごめんなさい、シャロン様を無理矢理参加なんてさせませんから、安心して下さい!」


「……サラサ、様…」



シャロン様は、私を上目遣いで見ながら、キュ、と服の裾を掴んだ。

ゴハァ、と血を吐いて萌え死にそうになった私は、そろそろ側室(仮)とすら名乗るのを止めた方がいい気がします…。



挙動不審になりながらもシャロン様を宥めていると、何故か思い詰めた様に俯いたシャロン様は、暫し間を置いてから、


決意した目で、私を見た。



「………………大丈夫、です。わたくし、やれます。」


「…シャロン様、ご無理は…」


「いいえ。………サラサ様が一緒にいてくださるなら…わたくし、頑張れます。」


「衛生兵!!!」


「……えっ?」



しまった叫びが口から洩れました!ですがもういい!!(潔い)


誰が私の鼻血と私を止めて下さい!



本当、なんて可愛いんでしょう…私の天使!マジ天使!!



「…きゃっ、…サ、サラサ様?」



遠慮無くぎゅっと抱き締めると、可愛らしい悲鳴が洩れた。顔を赤く染めてワタワタするシャロン様に頬擦りまでしてしまった…。



「…私も、シャロン様と一緒だと幸せです。頑張れます。」


「……ほ、本当、ですか?」


「勿論。」


「……………。」



ぎゅうぎゅう抱き締め合っていると、向かいの席に座るアヤネ様から、大層冷たい視線をいただきました。


呆れを隠しもしない半目で私達を見ながら、ため息をついたアヤネ様は、たっぷり間をあけてこう言った。



「…盛り上がっている所悪いけど、シャロン様はお連れ出来ないわよ。」


「「……………。」」



…………えっ?マジですか。



「人数が多くなるのも問題だけれど、それ以前に、シャロン様は目立ちすぎるわ。」


「……………わたくしが、王女だからでしょうか?」


「そう。…私が招待されたお茶会に同伴していくという事は、私の取り巻きと判断される可能性が高いわ。…シャロン様は、ご自身は控え目な方だけれど、肩書きがね。」


「………………。」



成る程。確かにアヤネ様の懸念は最もです。


…捨て犬の様な目で、しょぼんとしてしまったシャロン様を置いていくのは忍びないですが………うぅ…本当、辛いですが。



お土産持って帰りますからねー。



…………って、無いんですか?お土産。



.

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